"日本を代表するコンテンツスタジオ"を目指す、BABEL LABELのグローバルを見据えたクリエイティブ制作
サイバーエージェントグループのコンテンツスタジオ「BABEL LABEL(バベルレーベル)」。映画『青春18×2 君へと続く道』『余命10年』などを手がける藤井道人監督、映画『帰ってきた あぶない刑事』で知られる原廣利監督など、気鋭のクリエイターを擁し、話題の作品を次々と世に送り出しています。
そんなBABEL LABELを束ねる代表の山田久人に、クリエイティブへのこだわりと今後の展望について話を聞きました。
目次
企画から宣伝まで一気通貫で担う
コンテンツスタジオへの転換
─ BABEL LABELは2022年に、制作のみならず企画から手掛けるコンテンツスタジオへと体制を変更しました。それにはどんな背景があったのでしょうか?
これまでは配給会社やテレビ局からの仕事を受けて制作するのが一般的でした。しかし、海外コンテンツの流入などにより、視聴者の嗜好も多様化しています。コンテンツスタジオという体制に変えることで、視聴者に届ける作品のバリエーションやクオリティについて、より柔軟に取り組めるようにしたいと考えました。
1986年生まれ。BABEL LABEL代表取締役社長。大手CM制作会社勤務後、BABEL LABELに入社。CMやMVのプロデュースから始めドラマでも『八月は夜のバッティングセンターで。』や『量産型リコ -プラモ女子の人生組み立て記-』などをプロデュースし、映画『最後まで行く』では製作を担当。
きっかけは、隣国の韓国が日本の半分ほどの人口なのにワールドワイドな予算規模で作品を作り、世界で活躍しているのを見て、日本の映像業界の壁を感じたことです。そこで詳しく調べてみると、Netflixで大ヒットしたドラマをいくつも制作しているスタジオドラゴンは、彼らが企画し制作した作品をプラットフォームに販売するコンテンツスタジオという体制を取っていたんです。我々も予算をかけながら品質にこだわった作品作りを目指していきたいと考え、サイバーエージェントへのグループ入りと同時にコンテンツスタジオへと体制を変えました。
創立した2010年頃は、会社を存続させていくために作品の数をこなす必要がありましたが、コンテンツスタジオになったことにより自社で企画から制作、宣伝までを一貫して手がけられるようになり、より1つひとつの作品のクオリティを意識した作品作りができるようになりました。
クリエイティブ面におけるBABEL LABELの強み
─ BABEL LABELらしいコンテンツとして、どんなことが挙げられるのでしょうか?
まず1つに物語を綿密に描く企画力が挙げられます。月1~2回ある企画会議ではプロデューサーが提出した企画書をクオリティ責任者である監督の藤井がジャッジしていますが、彼がよく言うのは「時代性」です。
たとえば藤井が脚本と監督を手掛けた、映画『ヤクザと家族 The Family』というヤクザの生き様を描いた作品があります。現代におけるヤクザは衰退していますが、これを昔のイメージである強い姿を描くと時代劇になってしまいます。今の時代の人たちがどう受け止めるか、リアリティに沿っているかというのはBABEL LABELらしいコンテンツとして大事にしているポイントで、その上でいま、この題材を描くべきなのかという観点で企画を見ています。
制作における強みとしては、脚本の段階から密に連携しながらチームで仕上げていくチームワークも挙げられます。日本のドラマ制作の現場は脚本家が一人で全話の脚本を担当することが多いですが、世界では共同脚本が一般的で、BABEL LABELもその手法を採用しています。その体制を可能にしているのが、脚本家11名が所属している「Writers' room(ライターズ・ルーム)」です。
日本の映像業界では、企画段階ではお金が支払われず、プロジェクトが通って初めてギャラがもらえるという業界慣習があります。BABEL LABELはミッションとして“日本のクリエイティブの可能性を最大限に発揮できる世の中に”というのを掲げており、「Writers’ room」はそんな慣習を変えようと発足したプロジェクトです。2023年からスタートし、約350人の応募から11名(平均年齢25歳)を選抜しました。すでにNetflixシリーズ『イクサガミ』やABEMAオリジナルドラマ『警視庁麻薬取締課 MOGURA』などで脚本を務めるなどの実績を上げており、引き続きクリエイターに還元できる良いサイクルをつくりたいと思っています。
─ 次世代のクリエイター育成のために、他にも行っている取り組みはありますか?
母校である日本大学芸術学部でBABEL LABELの監督やプロデューサーなどが講師として登壇する講座を実施しています。映像業界は依然として"やりがい搾取"のイメージが根強く、働き方や収入面への懸念から業界で仕事をすることをためらう若者も少なくありません。この状況が続けば、人材不足が深刻化し、日本におけるコンテンツの質の低下やクリエイターの負担増加という悪循環に陥る恐れがあります。
そのため、この講義では次世代を担う若手人材に映像業界の魅力を伝え、彼らが自信を持ってこの業界にチャレンジできるきっかけを提供することを目指しています。
─ BABEL LABELの作品からはクリエイティブへの徹底したこだわりを感じます。その源泉はどこにあるのでしょうか。
根幹にあるのは、監督陣の情熱と責任感です。BABEL LABELには14名の監督が在籍していますが、ヒットしなければ次がないくらいの気持ちで、自分たちの作品のヒットに対しては強い責任感を持って取り組んでいます。クリエイターが制作にコミットできるような環境は会社として重視しています。
─ 作品に関して、どの瞬間を切り取っても絵になるような丁寧な魅せ方が印象的です。
グローバルで通用するクリエイティブ表現の探究もBABEL LABELらしさと言えるかもしれません。登場人物のさまざまな感情を描くために、常に新しい撮影技法にチャレンジしています。
また、演じられる俳優さんたちの最高の演技を丁寧に引き出すための環境づくりにも力を入れています。
─ 映画『正体』でも、藤井組に参加したことに対するコメントが印象的でした。
基盤となっているのが創業時から行っている若手俳優向けの演技指導ワークショップです。藤井は、このワークショップに参加する俳優たちと共にインディーズ映画を制作するところからスタートしました。そこで培われた「俳優の演技を丁寧に引き出し、それを最適なアングルで撮影することが良い作品につながる」という信念が、現在もBABEL LABELの制作理念の根幹を成しています。時間や予算を言い訳にせず、本人も監督も納得するまで演技にこだわるというのが制作過程における特徴だと思います。
─ BABEL LABEL所属の監督は作品づくりだけでなく、宣伝まで力を入れていると聞きます。
どんなに良い作品を作っても、観る人がいなければ意味がありません。そのため、作品づくりと同じくらい宣伝にも力を入れており、作品ごとに最適な宣伝手法を監督やプロデューサーが中心となって考えています。最近ではサイバーエージェントにグループ入りしたことをきっかけにインターネット広告やSNS、「ABEMA」との連携など新しい挑戦も増え、企画立案から制作、宣伝に至るまで、一貫したビジョンのもとで作品を世に送り出す体制が強化されました。
BABEL LABELを日本を代表するコンテンツスタジオに
グローバルを見据えた挑戦
─ 日本の作品が世界で戦っていくためには何が必要でしょうか。
グローバル化が進む現代のエンターテインメント市場では、世界中のユーザーが膨大な量のコンテンツに簡単にアクセスできるようになりました。この環境下で、日本の作品が選ばれ続けるためには、届ける先の人が何を求めているのかを意識して作品づくりをしていく必要があると思います。日本のクリエイターだからこそ作れる企画を考え、世界中が興味を持ってくれるような礎になる作品を作っていきたいですね。
─ 今後の目標を教えてください。
国際プロジェクト「BABEL ASIA(バベルアジア)」の成功です。これは日本も含めたアジアからグローバルを目指して、ワールドワイドの視点で作品を作っていくプロジェクトで、映画『青春18×2 君へと続く道』はその第一弾の作品となりました。このプロジェクトを成功させることが、コンテンツスタジオとしての成功にも繋がると考えています。
BABEL LABELを日本を代表するコンテンツスタジオに成長させ、日本発のコンテンツで世界の人々を魅了していきたい。それが私たちの目標です。
■BABEL LABEL関連作品情報
ABEMAオリジナル連続ドラマ『透明なわたしたち』
番組URL:https://abema.tv/video/title/90-2002
公式サイト:https://abema.tv/lp/toumeinawatashitachi-onair
ABEMAオリジナルドラマ『警視庁麻薬取締課 MOGURA』
公式サイト:https://abema.tv/lp/mogura-onair
映画『正体』
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/shotai-movie
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【対談】ML/DSにおける問題設定術
~ 不確実な業界で生き抜くために ~
機械学習やデータサイエンスがビジネスの現場で当たり前になりつつある今、求められているのは、ビジネスの課題を実装に落とし込み、運用し、継続的な価値を生み出す視点となりつつあります。
サイバーエージェントでは、こうした実践的なスキルを持つ次世代のデータサイエンティストを育成すべく、2025年11月、新卒向け特別プログラム「DSOps研修2025」を実施しました。
「技術を社会実装する際の『問題設定』こそが重要である」 この研修のコンセプトに深く賛同いただき、特別講師としてお迎えしたのが、半熟仮想(株) 共同創業者であり、「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2022」にも選出された齋藤優太氏です。
第1部では、半熟仮想(株) 共同創業者であり、Forbes JAPAN「30 UNDER 30」に選出された齋藤優太氏をお招きし、「ML/DSにおける問題設定術」について講演いただきました。 続く第2部では、齋藤氏に加え、当社執行役員兼主席エンジニアの木村、AI Lab リサーチサイエンティストの暮石が登壇。「現場視点×経営視点」でパネルディスカッションを実施しました。
本記事では、白熱した第2部「パネルディスカッション」の模様をダイジェストでお届けします。