目指すのは“開発効率“と”品質の最適化“
10以上のゲーム開発子会社を支える「SGEコア技術本部」を新設

技術・デザイン

当社のゲーム事業はスマートフォンゲーム市場において業界最大規模のシェアを誇りますが、継続的にヒットコンテンツを生み出すためには、高度な技術力とそれを裏から支える基盤や運用力が必要不可欠となっています。

ゲーム事業に属する子会社群の総称、SGE(ゲーム・エンターテイメント)では、「開発効率と品質の最適化」をミッションとした「SGEコア技術本部」を新設。今回は同組織の中心メンバー2名に、設立背景やミッション、今後実現していきたいことについて話を聞きました。

Profile

  • 石黒 祐輔 (イシグロ ユウスケ)
    2014年入社。Amebaゲーム(現QualiArts)の基盤開発チームにUnityエンジニアとして配属。主に関わった基盤のサービスは、リアルタイム基盤、チャット基盤、AssetBundle管理基盤「Octo」、認証・課金基盤など。現在は、「SGEコア技術本部」にて基盤全般の開発をリードしつつ、ゲーム事業部全体の開発基盤の強化にも従事。

  • 矢野 春樹 (ヤノ ハルキ)
    2012年入社。企画職として入社後、エンジニアに転向しゲーム開発に携わる。その後退職し、2021年に再入社。現在は、「SGEコア技術本部」にて、開発効率と品質の向上を目指して共通ライブラリの開発などを行なっている。

開発効率や品質を大幅に向上できるものを
基盤化する

──「SGEコア技術本部」について教えてください。

石黒:ゲーム・エンターテイメント(SGE)事業部のゲーム開発で使う、ライブラリやサーバーなどの仕組みをつくり、各子会社に導入を促す部署になります。セキュリティ対策やAI技術の研究、開発タイトルのパフォーマンス確認、プロジェクト側で問題が発生した時の課題解決など、幅広く活動しています。

※ゲーム・エンターテイメント(SGE)事業部
ゲーム・エンターテイメント事業部は株式会社Cygames以外の10社以上の子会社で構成されており、その子会社群を総称してSGEと呼んでいます。


▼主な活動内容

──立ち上げた経緯を教えてください。

石黒:SGEのエンジニア版あした会議ともいえる「CROSS THE BORDER会議」で、私が組織設立を提案したことがきっかけですね。

──なぜそのような提案を?

石黒:車輪の再発明を防ぐためです。 SGEは現在10社以上の子会社が所属しているので、各子会社の中で技術的な解決を行う志向が強いですが、各社間での技術共有をしないと、極端な例で言えば、同じ基盤を10社がつくっていたということにもなりかねません。そのような課題を解決するために、横断的に動ける組織を設立しようと思いました。加えて、高い品質で基盤をつくって各社に展開できれば、プロダクト側はゲームのオリジナル部分の開発に集中でき生産性も向上すると考えました。会議で提案した時は、横断組織で基盤をつくっていても実際の開発現場できちんと使えるものになるのか?といった反応や懸念点があがりましたが、何とか決議に至りました。

矢野:最近では、スマートフォンの性能が向上し、ゲーム開発においても、幅広くかつ高度な技術を使うようになってきています。それに伴いSGEの開発も大規模化しているので、効率化を図るために、基盤の共通化を進めるべきなのではといった意識が社内でも強くなっているように思います。そのような流れが決議を後押しした一因になったのではないかと思います。

共通ライブラリ導入で、ストレスのない制作環境を実現させたい

──矢野さんは今までも共通基盤の開発に携わっていたのでしょうか。

矢野:私は、元々ビジネス職としてサイバーエージェントに2012年に新卒入社し、ソーシャルゲーム開発・運用に携わっていました。昔からものづくりが好きだったので、入社時からエンジニアになりたいという気持ちがあったのですが、魅力的なコンテンツを生み出す企画部分にも興味がありました。そのためビジネス職として入社した後は、業務と並行してプログラミングの勉強を行い、3年目でエンジニアに転向しました。その後は主にUnityを使ったプロダクトでの開発経験を経て、現在の部署にいます。

──「SGEコア技術本部」が新設されてから、どのような活動をしてきましたか?

矢野:全体の戦略を考えつつ、実働的な基盤開発も行っています。先日、エフェクト用Uberシェーダ「NOVA Shader」をオープンソースとしてリリースしました。
 

──「NOVA Shader」について教えてください。

矢野:Unityでビジュアルエフェクトをつくるためのシェーダです。よく使う機能をまとめることによって、品質の高いエフェクトを効率的に制作できる環境を整えることを目的としています。元々は社内向けにつくったものになりますが、今回はOSSとしても公開しました。Twitterやブログ、また昨年12月に開催の「CA.unity #3」でも紹介させていただいたのですが、「簡単にエフェクトがつくれるので苦労していた部分が解決できた」など、反応をいただけたので良かったです。

──今回、OSSとして公開した目的は?

矢野:ドキュメントを含めたプロダクト品質の向上や、業界への貢献、会社としてのプレゼンスの向上など、目的はいくつかありました。その中でも特に横断組織の戦略として狙っていたのは、導入実績をつくるということです。「SGEコア技術本部」が作成したライブラリを各プロジェクトに導入する際、プロジェクトのエンジニアとしては「実績がないから使いたくない」という気持ちが少なからずあると思っています。実際に私が逆の立場であればそう思います。そこで、OSSにしてある程度実績をつくることができれば、この懸念の解消にも繋がると考えました。

──今後チャレンジしたいことは。

矢野:「NOVA Shader」以外にも、横断の共通ライブラリをつくっていきたいと思っています。効果が高くて開発コストが少ないものから順番に開発して、開発効率を上げていきたいです。中長期的には開発のプロセスにも、何かしらの改善をしていきたいですね。ゲーム開発はどうしても手戻りが多いですが、開発プロセスを工夫して手戻りを一つ減らすだけでも開発効率は大きく向上すると思っています。

基盤開発から7年、現場の声を活かしさらなる負担軽減を

──石黒さんは、今までどのような業務を経験してきましたか?

石黒:新卒から今に至るまで主に基盤開発に携わり、QualiArts内の各プロジェクトに導入してもらうことを目的として、Unityのゲーム基盤をつくっていました。その後、徐々に役割が広がり「SGEコア技術本部」としてSGE全体も見ることになりました。

──今まで導入されてきた基盤でいうとどんなものがあるのでしょうか。

石黒:さまざまあるのですが、Unityアプリを開発する上で欠かすことのできない要素の1つであるAssetBundleを、管理・配信するための基盤「Octo」は、複数のタイトルで導入されています。2014年頃からUnityゲームを多くつくるために必要な基盤として開発がスタートし、初めて組み込まれたのは、2016年夏にリリースされた『オルタナティブガールズ』でした。それから、QualiArts以外の子会社でも導入されるようになり、現在も各子会社のプロダクトに導入されています。ただ、初期開発から7年が経過しており、現場から不満の声も徐々に出てきたので、アップデートを計画しています。

──現場からの声も拾っているのですね。

石黒:手段を目的化しないことはとても大切で、基盤を開発することがゴールではなく、現場がストレスなくゲーム開発の本質に集中できるように、積極的に意見を聞くようにしています。また導入して終わりではなく導入後も、Unity側の新しい機能追加などに合わせるなどアップデートを繰り返し、少しでも現場の負担が減らせるようにしたいと思っています。

──石黒さんの今後の目標について教えてください。

石黒:サイバーエージェントのSGEが、ゲーム業界において、「開発の一つ一つの技術のレベルが高い」と思われる組織にしていきたいです。Unity界隈では著名なCysharpの河合さんが、多数の技術をOSSで公開しているのですが、それがゲーム業界の多くの方々が導入している技術になっていて、「あの人が出すものは絶対に使った方がいい」という業界内の共通認識になっていると感じています。そういったレベルを私たちも目指せるといいなと思っています。矢野さんが話していたように、OSSなど技術をオープンにすることで還元されるメリットもあると思うので、うまく活用していきたいです。

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