サイバーエージェント、興行事業へ本格参入
サイバーエージェントは、エンターテインメント興行を専門に行う興行本部を新設し、興行事業に本格参入することを発表しました。
本部長には、今年7月に開催したコムドットプロデュースによる『Creator Dream Fes ~produced by Com.~』やeスポーツイベント「RAGE」の総合プロデューサーを務める大友 真吾が就任します。
興行本部を新設するにあたっての経緯と展望を大友からお話しします。
インターネット企業ならではの新しい興行モデルで勝負
── サイバーエージェントで興行本部を新たに設立する背景を教えてください。
初めて「ABEMA」で東京ドーム興行を行うことになったのが、今年7月に開催したコムドットプロデュースによる『Creator Dream Fes ~produced by Com.~』です。
このイベントが大きな成功を収め、そこで得られた手応えから全社を挙げて体制強化をしていくことが決まり、この度サイバーエージェントにおける興行専門組織を新設することになりました。
── インターネット企業のサイバーエージェントでなぜ興行事業なのでしょうか。
興行やイベントというと、インターネット企業にとって掛け離れている領域に感じるかもしれません。しかし、サイバーエージェントならではのデジタルの強みを活かし、新たな収益モデルやマーケティング手法を作れる可能性が大いにあると感じています。
サイバーエージェントグループのアセットを駆使して新しい興行モデルをつくることで、IPやコンテンツホルダーの皆さんに多くの収益を還元し、「サイバーエージェントと組むと新たな収益源が生まれる」と感じていただける状態を目指したいと思っています。
具体的な強みとして挙げられるのが、コロナ禍で発展した「ABEMA PPV(ペイパービュー) ONLINE LIVE」配信(以下、PPV配信)をセットでイベント興行として展開できることです。現地でイベントに参加できるリアルチケットに加え、PPV配信で視聴が可能な特典を含む新しいチケット販売が増えています。これまでは、会場のキャパシティがチケット収入のキャパシティでもありましたが、PPV配信が加わることで、会場キャパシティ以上の方に イベントを楽しんでもらうことができ、売上もプラスされることになります。場合によっては、会場チケットの倍以上の売上になっている実績も出てきました。
また、自社メディアの「ABEMA」を活用した新しい広告タイアップも強みの一つです。イベント会場内での広告露出だけでなく、興行をコンテンツ化することで、「ABEMA」でイベント前の特番や、事後の振り返りコンテンツを通じた広告の露出機会を増やし、広告露出や収益を増やしていくことができます。広告営業はサイバーエージェントグループの強みでもあり、これをさらに強化していきたいと考えています。
興行の実制作については、これまで国内最大級のeスポーツイベント「RAGE(レイジ)」の制作を担当してきたグループ子会社のCyberEと協力し、グッズの制作やEC販売も「ABEMA」で行います。
これにより、チケット販売以外の全てを自社のアセットで一貫して実現することが可能となり、高い利益率でIP・コンテンツホルダーへの還元もしやすくなると考えています。
これまでのイベントは部署を横断した混合チームでイベントを運営していましたが、今後は興行本部専任メンバーを増員する方針です。興行本部では、IP・アーティストと直接向き合って、興行全体を統括するプロデューサーやプロジェクトマネージャーを中心に、さらには我々の強みを活かせる広告分野における協賛セールス部門も設立します。
これにより、一層の興行事業の強化を図ります。
「ABEMA」初の東京ドーム興行が成功
── 『Creator Dream Fes ~produced by Com.~』が成功した要因は何だと考えていますか。
第一に挙げるとしたら、“クリエイターファースト”です。イベントを一緒に開催するクリエイター自身が、自分たちのファンのニーズを最も理解しています。そのニーズや要望を最大限に読み取ることが大事なことです。
そして、クリエイターが考案した企画やステージをどのように話題化するかという部分が、我々の専門性が活きるところです。
特に、コムドットのリーダーやまとさんと出演者のみなさまに密着した特番『プロデューサーやまと ROAD TO TOKYODOME』は非常に好評でした。普段はなかなか見ることができないクリエイターの一面に焦点を当て、プロデューサーとしてのやまとさんがこのイベントを成功に導くための奮闘を描いたこの特番は、マス視点をもったメディアの「ABEMA」だからこそ実現できた内容でした。ファンを巻き込み、コンテンツを軸に話題化するという我々の強みが発揮されました。
また、コムドットをはじめとする出演者のみなさまが初めての東京ドームでのイベントに不安を感じていた中、彼らがステージに立ち、自身の夢を実現するという舞台をTOPアーティストと遜色ないステージと演出を用意できたことにすごく満足していただきましたね。これらが、本イベントが成功を収めた主な要因だと考えています。
── イベントの終了後にも、PPV配信チケットが売れ続けたと聞きました。
これについては前例がなく、予想外のことでした。ファンのみなさまの満足度が高く、会場に来ていただいたお客様が後で見返したいとPPV配信チケットを購入してくださったことや、出演者のみなさまが自身のYouTubeチャンネルで「素晴らしかった。楽しかった」といった感想を投稿してくださったことが、SNS上で広がり、新たな視聴者を呼び込むきっかけになったと思います。本当にファンのみなさまには感謝しております。
新興ジャンルで満足度の高いイベント体験を創る
── 今後、どのようなジャンルの興行を手掛けていくのか教えてください。
現段階で注力したい領域としては、コムドットとのプロジェクトのような動画クリエイターや新たに世間を席巻しているVTuberなどの“新興ジャンル”を中心に考えています。私が長らく関わってきたeスポーツなどの市場もその一つです。
やはりサイバーエージェントの強みが活かせる領域で取り組んでいきたいと考えており、ネットから火がついて人気がでているIP・コンテンツホルダーのみなさんと組むことで、デジタルに強みを持つ我々との親和性も高いと考えています。“新興ジャンル”は、若い人と相性のいいカルチャーやコンテンツでもあるので、エンターテインメントが好きな若手社員が多い組織力も存分に活かせると思っています。
将来的には、今年6月にグループ入りを発表したネルケプランニングとも、我々の強みやアセットをうまく活用してもらいながら、グループシナジーで一緒に伸ばしていけると良いですよね。
── サイバーエージェントの興行本部として、今後の展望を教えてください。
興行専門の新組織を新設するにあたって、サイバーエージェントのエンタメ事業の中で存在感のある業績を残していきたいです。コロナ禍以降、オンラインライブ市場は伸び続けていて、今後も伸びる分野であるのと同時に、デジタルでのマネタイズやマーケティング、この辺りをさらに掛け算することで、より大きなビジネスにしていけるのではないかと考えています。
そして、参加していただく方々にとって満足度の高いイベントを提供していきたいです。
その日その場所でしか味わえない大きな感動はもちろんのこと、デジタルを活用することによってイベント後の余韻を楽しんで見返したり、マルチアングルを利用して「推し」を近くで観たり、そういった新しいイベントの参加体験を作り、より多くの人に感動を提供していくことを目指していきたいですね。
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