ネスレ日本 前代表高岡氏×CA藤田
「これからの時代に必要とされるDXとは」

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今年4月に当社顧問に就任した、ネスレ日本 前代表の高岡浩三氏と当社代表 藤田がそれぞれの経営論や日本企業が取り組むべきデジタルトランスフォーメーションを語る対談が実現ー。高岡氏の提案で実現したテレビ&ビデオエンターテインメント「ABEMA」での「かわいいちゃんねる」の取り組みについても語りました。

※本記事は、昨年アカデミーヒルズにて行われたイベントの内容を編集したものです。
写真:田山 達之氏

Profile

  • 高岡浩三氏

    1983年、ネスレ日本株式会社入社。
    各種ブランドマネジャー等を経て、ネスレコンフェクショナリー株式会社マーケティング本部長として「キットカット」受験キャンペーンを成功させる。
    2010年、ネスレ日本株式会社代表取締役副社長飲料事業本部長として新しいネスカフェ・ビジネスモデルを提案・構築。同年11月よりネスレ日本株式会社代表取締役社長兼CEO。2020年3月、同社 退社。

DXを成功させるカギはトップダウンとコミットメント

ーまずはお二人の経営論について迫っていきたいと思います。「21世紀型日本的経営モデル」についてどのようにお考えでしょう?
 

氏名

高岡氏
(以下、敬称略)

20世紀の日本はバブルを迎えて先進国に上り詰めましたが、そこから平成の30年は暗い時代だったと思っています。それはまさしく、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)がアメリカやヨーロッパに比べると遅れた時代だった

安くて品質が良いものをつくったら売れた、右肩上がりの時代といまは全く逆ですよね。人口が減ってモノが売れない現代において、20世紀モデルから脱却するためには、いかに顧客の問題を解決してバリューをあげるかが大切になってきます。

その原動力になるのが実はデジタルで、そういった経営を目指さないと日本の将来は暗い。ただ、デジタルを上手く活用する能力を日本人は持ち合わせているとも感じています。

氏名

藤田

僕は、日本的経営の良さをいまの時代に合わせて使っていくことが大切だと思っています。終身雇用や新卒社員の育成など、日本らしいところは社会の中で文化として根付いているので、一社では変えられない。それなら、その風習に合わせた方がより良い経営ができるなと。

我々の業界はずっと右肩上がりでここまできて、いまは成長市場といえるけど、やがて頭打ちが来ることも見越さないといけない。自ら成長市場をつくっていくという考え方もあるのかなと感じますね。

ー高岡さんがこれまで、デジタルの活用を実現させてきたカギはどんなところにありますか?
 
氏名

高岡

それは、トップダウンですね(笑)。DXに取り組むならば、現場の社員が動くだけでは埒が明かないんです。日本の企業によくある経営企画室みたいな部署、海外では聞いたことがないですよ。戦略を考えるのは社長の仕事。そういう意味でのトップダウンが、DXを実現させるためにはかなりキモだと思っています。

氏名

藤田

変化が激しい時代には、会社を適宜変えながら、組織や商品も進化させないといけない。それを決められるのはトップだと僕も思います。そして、トップのコミットも大事。

サイバーエージェントがスマホシフトした時は、ガラケーとPCの売上がほぼ100%だったので、「シフトするぞ」と言っても、やはり社員は目の前の売上を伸ばすことに終始してしまう。権力を持っている人がフルコミットして、例外を認めず、利益相反することを解決していかないといけないですね。トップダウンとフルコミットが必要だと思います。

経営は“勝つ戦略をつくる”ことがすべて

ー次に、お二人が経営において大切にしていることはなんでしょう?
 

氏名

高岡

経営は結果を出さないといけないので、勝つ戦略をつくることが大切。徹底して顧客の問題を解決することこそが、対価をいただく一番重要なことだと考えています。競合他社も気づいてないような本質的な問題を見つけることができれば、勝つ戦略に近づきます。社員の教育、コミュニケーションも全てそこに繋がっていくと思っています。

氏名

藤田

経営者は、結果を出せば何をやっても正しいと言われるし、そうじゃないと何をやっても批判される立場です。「勝てば官軍 負ければ賊軍」というか。

結果を出すには戦略が当然重要ですが、当社は変化の激しいネット業界ということもあって、今までは「とりあえずやってみよう」が正しかったんですね。事業をスタートするのにコストがかからないし、それよりも出遅れる代償があまりに大きいので、とりあえずやってみてダメだったら撤退だと。それでうまくいくことが多かったということもありました。

でも、多岐に渡る事業分野を各々に任せている中で、今までろくに戦略を聞いたことがなかったことに気づきました。僕はサイバーエージェントの社長として四半期に一度、決算説明会で業績や会社の状況を説明する責任があります。投資家に詰められ、メディアにも色々書かれるんです。そのプレッシャーを、ぜひ子会社社長にもシェアしてあげたいと思い(笑)、「決算戦略説明会」を四半期毎に実施することにしました。僕が株主として各社の決算を聞くのですが、正直、思ったよりもレベルが低かったんですよね。

たとえば、スタートアップ企業の社長は資本調達するために、戦略を見事に語っていたりするじゃないですか。うちの子会社社長にはそういう機会がなかったことを申し訳なく思い、この決算戦略説明会で鍛えたいなと思っています。あえて厳しいこと言って突き返したりしていますね(笑)。

「ABEMA」は10年がかりのチャレンジ

ーちなみに、二人の出会いのきっかけはなんだったのでしょう?
 

氏名

高岡

実はお目にかかったのはここ1-2年くらいですね。藤田さんのことは、若くして起業し成功された経営者という印象でしたが、数年前に「ABEMA」をリリースされた時から、この分野に目をつけた藤田さん、さすがだなと思っていました。

氏名

藤田

元々、堀江(貴文)さんが高岡さんのことを絶賛していたので、お会いする前からどんな方だろうと興味はありました。そして「ABEMA」が開局した頃、サービスに対して批判的なことを言う人も多かった中、「NewsPicks」で高岡さんが好意的なコメントを書いてくれたのを見て「高岡さん、好きだわ」と思っていました(笑)。

氏名

高岡

そうでしたか(笑)。僕からお誘いしてお食事をした時に、「ABEMA」での「かわいいちゃんねる※」の取り組みについてお話しさせてもらいましたね。

僕は個人会社で2-3社の相談やお手伝いをしているのですが、そのうちの一つが今回「かわいいちゃんねる」に出演協力したテアトルアカデミーさんで、DXの余地がある業界だとずっと感じていました。

そういえば「ABEMA」には赤ちゃんや子ども向けの番組がない、それを作れば新しいスポンサーを呼び込めるのではないかという話を藤田さんにしたんです。子どもの数は年々減っていて、子ども向け番組を視聴する人の数も減っていますが、いわゆる「ポケットの数」は倍に増えました。祖父母が圧倒的に孫にお金を使いますから。

氏名

藤田

僕の中では「ABEMA」に女性向けのコンテンツを増やしたいという思いがあって。小さい子どもは癒やしコンテンツになるので、特に女性にはぴったりじゃないかと。
ずっとそういった番組を作りたかったのですが、出演してくれるかわいい子どもがなかなか見つからないのが問題でした。でも、テアトルアカデミーに所属する子どもたちは、親も含めて最初から出演するつもりで来ています。これならば上手くいくと思い、すぐに話を進めさせていただきました。

※2020年2月「ABEMA」にて放送された、"癒されたい大人"に贈る新ドキュメンタリー番組。12 人のこども達が、人生初のステージで歌とダンスの発表会を披露。

 

ー「ABEMA」の今後の狙いはどのように考えていらっしゃいますか?
 

氏名

藤田

僕が思い描いていた、広告と課金のハイブリットでビジネスモデルを成立させるという土台はできてきました。地層を固めるように視聴数などの数字も伸びてきましたが、それを続けないといけない。マスメディアをつくるには、視聴習慣が大切。家に帰ったら自然とテレビをつけてニュースを見る、というように。

ただ、視聴習慣をつけるのは時間がかかるから、長い年月をかけて取り組むことが大切ですね。「ABEMA」は10年がかりでチャレンジしていきたいと思っています。

氏名

高岡

自分自身が思っていたことを藤田さんが実現してくれたので、「ABEMA」にはすごく期待しています。いま「習慣を変える」という話が出たけど、イノベーションとはそういうもの。それにチャレンジされているのはすごいし、10年後にはみんなが理解できるようになっているのではと確信しています。

登壇された高岡氏は、当社の独立社外取締役候補者として迎えることに伴い、2020 年 4 月1日付で当社顧問に就任いたしました。高岡氏の社外取締役選任議案は、2020 年 12 月開催予定の第 23 回定時株主総会でお諮りする予定です。

参考)4月1日付顧問就任のお知らせ



 

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