【対談】山内隆裕×岡田麻衣子 「クリエイティブファースト」で挑む、日本アニメのグローバルヒット

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サイバーエージェントは、グループ3社目となるアニメスタジオ「Studio Kurm(スタジオクーム)」を設立しました。代表を務めるのは、数々の有名アニメをプロデューサーとして手掛けた岡田麻衣子です。なぜ彼女は、新たな挑戦の場として当社を選んだのでしょうか。
当社代表取締役社長 山内隆裕と共に語るのは、徹底した「クリエイティブファースト」の精神と、日本のアニメを世界へ届けるための「持続可能な環境づくり」について。10年後の産業を見据え、2人が描く新たなアニメ制作の未来図に迫ります。

アニメを未来に繋ぐため 今、ここで挑戦する

― まずは経営的な視点から、グループ3社目となるアニメスタジオ「Studio Kurm」設立の意義を教えてください。

山内: アニメ業界は、一朝一夕で参入してすぐに結果が出せるような簡単な世界ではありません。長年にわたる信頼関係や実績の積み重ねが不可欠です。 だからこそ我々はこの10年間、ファンドや「ABEMA」での配信などを通じて業界の方々との関係性を丁寧に築き、土台を固めてきました。

その上で、2024年にアニメ&IP事業本部を設立し、いよいよグローバルヒットIPの創出へ本格的に舵を切りました。 「ABEMA」の発信力や、ゲーム、グッズ、イベントなどの展開力を生かす基盤は着実に整いつつあります。その中で、源流となるオリジナルIPを自社で生み出していくことは非常に重要です。

クリエイターの熱意を形にできる岡田さんたちが加わってくれたことは、私たちが目指す、一気通貫の体制を実現する上で、非常に大きな推進力になると確信しています。

  山内隆裕     /(株)サイバーエージェント 代表取締役社長 
山内隆裕 /(株)サイバーエージェント 代表取締役社長 

― 数ある選択肢の中で、岡田さんが当社グループ参画を決めた「決め手」は何だったのでしょうか?

岡田: 純粋に、「もっと新しい表現や、世界に通用するクオリティに挑戦したい」という思いが強くなっていたからです。 素晴らしいアニメ文化を今後も守り続けていくためには、制作体制や環境そのものを、進化させる必要があります。

そんな時、山内さんのインタビュー記事を拝見し、そこに書かれていた業界への姿勢にとても共感しました。 アニメ業界は歴史が長く、独自の商習慣や空気感があります。そこに対して、土足で踏み込むのではなく、時間をかけて関係性を築こうとする姿勢に、業界へのリスペクトを感じて「信頼できる」と思ったんです。

そこから実際にお会いして、IT業界ならではの熱気やスピード感も肌で感じ「ここなら新しい挑戦ができる」、そう直感して、飛び込むことを決めました。

― 具体的にどのような、新しい挑戦をしようと考えていますか?

岡田: 良い作品を作るのは前提ですが、より大きなタイトルに挑戦したり、既存の枠にとらわれない「表現力」を追求したいです。

具体的には、3Dや撮影処理などの技術をさらにブラッシュアップして、画面のクオリティを底上げすること。 今までの延長線上にあるものだけではなく、技術と手描きを融合させた「一段上の映像」を目指せる体制を作ることです。

山内: 岡田さんは、数々の名作を世に送り出してきた実績のある方ですが、決して多くを語るタイプではありません。 ですが、その静かな佇まいの内側には、ものすごく熱い想いを秘めている方です。 実は同年代で地元も近いという偶然もあって、最初から親近感を抱いていました。  

戦略の核は、徹底した「クリエイティブファースト」

― 様々な才能が集まる組織を統括する上で、どのようなマネジメント方針を持っていますか?

山内: 現在、当社のアニメ事業に関わるメンバーも増え、組織の規模も大きくなってきて、ネット企業とアニメ産業のカルチャーが融合する組織となっています。常々「今は立ち上げ期だ」と伝えていますが、その中で戦略の中心にあるのは、徹底した「クリエイティブファースト」という考え方です。

世界中で愛されるヒットIPは、クリエイターの情熱と創造性からしか生まれません。だからこそ、クリエイターが最高の力を発揮できる環境づくりを最優先にする。 そのために、我々のグループが持つリソースやノウハウを、全方位から投入してサポートしていきます。

岡田: バックオフィス周り、特に人事や組織づくりに関しては本当に手厚くサポートしていただいています。アニメ制作は「作る」だけでなく「組織運営」も重要なので、そこを知見と技術で支えてもらえるのは非常に助かります。
あと驚いたのが、スタジオ探しの時です。担当の社員さんが、ものすごいスピードで候補地を探してきてくれて。 私は「クリエイターがリフレッシュできる空間が欲しい」といった要望を伝えただけなのですが、それを皆さんがで完璧に形にしてくれました。
3月には新しいスタジオが完成予定ですが、こうした「場所作り」から同じ熱量で併走してくれるのは心強いですね。  

  岡田麻衣子     /(株)Studio Kurm 代表取締役社長 
岡田麻衣子 /(株)Studio Kurm 代表取締役社長 

山内: そうした物理的な環境だけでなく、テクノロジーやマーケティングといった当社の強みも、クリエイターを支える大きな武器になると考えています。

アニメ業界では長時間労働・低賃金の問題が長らく課題とされています。そこに対しては、当社が持つ技術力やノウハウを生かして、制作工程のDXを進めています。

例えば、制作現場で長年積み重なってきた煩雑な工程や非効率な作業を見直し、必要なクオリティを維持したまま制作負荷を軽減する取り組みを進めています。そこで生まれた余力は、クリエイターへの適正な対価の還元や、過度な長時間労働の是正につなげ、創作に集中できる環境づくりや、生活との両立を支えることを目的としています。

岡田: 実際に今、制作ワークフローの短縮化に向けて、制作工程のDXを社内のエンジニアの皆さんと連携し始めています。ツールで効率化できた分、制作スタッフが「クリエイターと向き合う時間」を増やせるようになるのが、何より良いことだと思います。また、エンジニアの皆さんの熱量とポテンシャルが物凄く高くて、本当に助かっています。このような技術のエキスパートがすぐ近くにいて相談できるのは、この環境ならではの強みですね。

― 技術で「時間」や「対価」を作り出すんですね。ではマーケティングについては?

山内: おかげさまで10年目を迎えた「ABEMA」は、WAUが3,000万を超える規模で推移しており、その中でアニメチャンネルは大きな存在感を持っています。「無料で見られる」という独自のサービス性に加え、CyberAgent Americaなどを通じたグローバル展開によって、作品の価値を最大化します。

今は、良いものを作れば世界に届く時代です。原作と一体になって制作する、という日本のアニメ制作のアドバンテージを生かし、クリエイターの力を最大限に引き出して、我々の強みであるマーケティングの力を掛け合わせて世界へ届ける。それが私たちの役割だと思っています。

― 岡田さんは「作るだけでなく、視聴者に届けるところまで責任を持ちたい」とおっしゃっていましたね。

岡田: はい。今は毎クール何百本ものアニメが作られていて、作品が溢れています。クリエイターが命を張って良いものを作っても、情報の海に埋もれてしまう。その「届けられないもどかしさ」をずっと抱えていました。
技術やマーケティングの力で、自分たちの作品がより遠くへ届き、対価として還元されるなら、それはまさに私が求めていたものです。 時代に合わせてチューニングしながら、新しいアニメ制作の形を作っていきたいです。  

クリエイターを守る想いと、アニメへの恩返し 2人の原点

― ここでお2人の「アニメの原点」について教えてください。

岡田: 子供のころ私は、声優さんになりたかったんです。冨永みーなさんに憧れていて。でも、自分は人前で喋るのが得意ではないと気づきまして……(笑)。結局、絵を描くことが好きだったからやっぱりそっちだなと。
特に衝撃的 だったのは、『もののけ姫』のメイキング映像を見たことでした。「アニメの絵ってこうやって作っているんだ!」と制作の裏側に衝撃を受けました。

― そこから、なぜ「描く側」ではなく「制作進行」を選ばれたのですか?

岡田: 専門学校を経て業界に入ったのですが、一緒にスタートした友人が、賃金の問題で辞めてしまうのを目の当たりにしたんです。 絵がすごく上手いのに、生活ができなくて去っていく。それが本当に悔しかった。
「どうしたらこの構造を変えられるんだろう」と悩み、制作進行からプロデューサーになれば、予算や環境を決められる立場になれると知りました。 「制作側になれば、クリエイターを守れるかもしれない」。それが、私がプロデューサーとしてここにいる原点です。

― 「作り手を守る」という岡田さんの覚悟が伝わってきます。山内さんにとっても、今の活動の原動力になっているような作品や原体験はありますか?

山内: 子どもの頃からたくさんのアニメを見ていましたが、一つ挙げるなら『ドラゴンボール』ですね。 母子家庭で育ち、幼少期は1人で過ごす時間が長かった。その孤独を埋め、感情を満たしてくれたのがアニメやゲームでした。ファミコンもカードダスも、気づけば家の中が『ドラゴンボール』だらけ(笑)。

一言で言えば、当時の私はエンターテインメントに救われたんです。 だからこそ、それを作ってくれた人たちに恩返しがしたい。私自身、この素晴らしい文化を日本の産業としてより大きくするとともに、世界へ届けていきたい。それが、今の自分の原動力になっています。  

日本のアニメを文化を守り、未来につなぐ

― 今、サイバーエージェントのアニメ事業で働く面白さは何でしょうか? また、どのような人材を求めていますか?

山内: 今はまさに立ち上げ期なので、決断スピードが圧倒的に早いです。年功序列もなく、実力があれば若手の方でも活躍できる。 そして、新しい技術や企画を果敢に試していける土壌があります。新しいアニメの作り方に挑戦したい人には面白い環境だと思います。

アニメ&IP事業本部のオフィス(他写真は最後に)
アニメ&IP事業本部のオフィス(他写真は最後に)

岡田: 山内さんたちのサポートのおかげで、採用活動でも相手に「安心感」と「本気度」を伝えられていると感じます。
最近はSNSなどを通じて、年齢に関係なく素晴らしい絵を描く「原石」のような若手がたくさん出てきています。デジタルネイティブで、iPadひとつでアニメーションを作れてしまうような世代です。そうした新しい才能をいち早く見つけ、育てていきたいですね。

― 最後に、今後の展望をお願いします。

山内: 「クリエイティブファースト」を貫き、良いものを作れば、それは日本だけでなく、世界中で受け入れられます。 グローバル市場でのチャンスは広がっており、ビジネス的にも今これほど面白いタイミングはありません。
クリエイターが働きやすくチャレンジしやすい環境をどれだけ整えられるか。それができれば、日本のアニメはもっと世界で戦えます。当社の資産をフル活用して、一緒に世界に届く作品を作りましょう。

岡田: はい、楽しみです。私は子供の頃からの夢を叶えてこの業界に入り、育ててもらいました。だからこそ、業界の文化をリスペクトしつつも、それを守り抜くためには変化も必要だと感じています。この新しい流れを取り入れながら、持続可能な創作の仕組みを築き、日本のアニメーション文化を次のステージへと引き上げる。 最高のチームでその挑戦を、一歩ずつ確実に進めていきたいと思います。  

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