デザイナーがプロダクトマネージャーに転向する決意

技術・デザイン

サイバーエージェントは、メディア、インターネット広告、ゲームに加え、AIやDXなど幅広い事業を展開しているため、クリエイターが担う範囲は多種多様です。
この本記事では、大学でプロダクトデザインを学んだ武田が入社後にデザイナーからプロダクトマネージャーへ転身したキャリアをご紹介します。ジョブチェンジの決断や学び、当社ならではのカルチャーなどを聞きました。

Profile

  • 武田 陸登 (マンガIP事業本部 / Amebaマンガ)
    芝浦工業大学 デザイン工学部 デザイン工学科 プロダクトデザイン専攻卒業後、2018年にサイバーエージェント新卒入社。入社後、競輪・オートレースのインターネット投票サービス「WINTICKET」の開発部門にデザイナーとして配属。2022年よりクリエイティブ責任者に昇格。2023年にマンガIP事業本部に異動。異動のタイミングでデザイナーからプロダクトマネージャーにジョブチェンジし、現在同事業本部 プラットフォーム事業の事業部長に就任 (現職) 。

左脳で考えるデザイナーの強みと、その先にある独自のキャリアへの眼差し

— デザインに興味が湧いたのはいつからですか?

高校生の時に、Webサイトを自主制作しようとコーディングしていたら、見た目のところまで考えてつくっていることに気が付いて、デザインしながらつくることが好きなんだと気付きました。
ただ、デザインを突き詰めようと世の中のリファレンスを見ていても、感性に響くデザインを自分の手でやり切れるイメージは湧きませんでした。

ですが、当時UXという言葉が出てきたばかりで、左脳で考える理系デザイナーを目指したら人と違う側面から生み出せるのではと思い立ち、大学はデザイン工学部に入学。椅子や家電などのプロダクトデザインを学びました。

— 左脳で考えるデザイナーとはどういうデザイナーでしょう?

当時は人と違うモノをつくれる人がデザイナーだと思っていたので、人と違うスキルや強みを持ちたいと思っていました。
実際にデザイン工学では、人の体のつくりや人間工学など、椅子に座る時の座面の体重の掛かり方のデータを分析し、ユーザーインタビューなど生のお客さんの声を取り入れたりと、裏付けしながらアウトプットを出す感覚が性に合っていました。

そして就活の時期には運良くUXデザイナーや理系デザイナーという言葉が流行り、ロジックからデザインを考える人も必要とされているんだと確信を得て、迷わずその職種に進むことを選びました。
 

— そこからプロダクトマネージャーにジョブチェンジするきっかけは?

入社後は「WINTICKET」の開発チームに配属されました。
3年目までプロダクトデザインを担当し、デザイン分野だけにこだわらず自分の担当領域以外も事業責任者や上長に提案していました。
4年目から自分がクリエイティブ責任者になり、プロダクトやアートワークを始め事業や組織を幅広く見る立場になったことで、よりビジネスとシンクロしながら、クリエイティブを活かせるポイントを探すことが多くなりました。

この頃、経営的に芯を食うようなアイデアを出すためにはビジネス戦闘力がまだまだだなと肌で感じて、一度ビジネスサイドに飛び込んでそういう力を身につけたいと思い始めました。

また、外部の市場トップクラスのクリエイターと一緒に仕事をする経験もして、改めて自分はアートワークの道に進むキャリアではないと決断したのもこの頃です。
 

「WINTICKET」は競輪業界売上No.1(2023年10~12月の勝者投票券売上実績 ※自社調べ)のインターネット競輪投票サービス。
「WINTICKET」は競輪業界売上No.1(2023年10~12月の勝者投票券売上実績 ※自社調べ)のインターネット競輪投票サービス。

すぐに戦力にならない挑戦を未来への投資として応援してくれるカルチャー

— プロダクトマネージャーに挑戦する時に考えていたことはどんなことですか?

立ち上げメンバーとして入った「WINTICKET」が、後発ながら競輪におけるインターネット投票市場において業界No.1に成長したこと、そして個人として身につけたい力が具体的になってきた中で、生成AIの登場や、UXデザイナーの再定義などから、クリエイターを取り巻く環境が大きく変わっていく感覚がありました。

昔から進化論的な考えが強くあるせいか、「世の中の変化に対応するためには、クリエイターという肩書きを一度捨ててでも、別の大きな何かを手に入れよう」と決めたんです。
これまでの経験を違う環境や立場で、どこまで活かせるのか試してみたいという気持ちが大きくなっていました。

— 市場が全く異なるIP領域で、プロダクトマネージャーになったのはなぜ?

マンガIP事業本部を選んだ理由は大きく2つあります。
1つ目は成長市場の中で縦読み漫画も始めるという事業的なチャレンジができ、挑戦者にはうってつけのタイミングだったこと。
2つ目は、自分は最初戦力にならないかもしれないと思いつつ、事業責任者に「ビジネスをかじりながらデザインは5年やってきたけれど、プロダクトマネージャーとしてのキャリアはまだないです。

でも「プロダクトマネージャーとして挑戦してみたい」と伝えたら、「いいよ」と受け入れてくれたことが大きかったですね。会社全体のカルチャーでもありますが、改めて挑戦が応援される環境だなと身に染みました。

— 「やりたいなら、やってみたらいい」と言ってもらって選んだプロダクトマネージャー。どんな存在になっていきたいですか?

クリエイター出身としてビジネスサイドでも活躍していくことで、キャリア事例を確立できたら嬉しいです。

私の場合、デザイナー時代にUI/UXもクリエイティブディレクションも経験してきたので、「つくる力」も「伝える力」も「説明する力」も鍛えられてきていると思います。
これまでも事業のメッセージや戦略コンセプトを浸透しやすくする動きはしてきましたが、プロダクトマネージャーになったからこそ実行から戦略へと比重を高めていきたいですね。

それから、プロダクトマネージャーになっても引き続き、熱狂的なモノづくりは続けていきたいです。
 

マンガIP事業本部が運営する『STUDIO ZOON』は、サイバーエージェントグループで新たに設立した縦読み漫画の制作スタジオ。
マンガIP事業本部が運営する『STUDIO ZOON』は、サイバーエージェントグループで新たに設立した縦読み漫画の制作スタジオ。

背負うものが変わる感覚。自分の仕事は決断と伝達

— プロダクトマネージャーになって感じたことを教えてください。

決断の質量とリスクへの感度の高さが桁違いだなと感じています。

事業やチームが左右されるような決断をすることや、リターンを長期的に鑑みて大きな決断をする必要があること。自分が決めたことで何十人もの数カ月間が無駄になることもあったり、その人の気持ちもあったり、数字的に経営に響く部分もあったりします。
プロジェクトや事業が頓挫する可能性も踏まえた決断を1日に何回もしていかないといけません。
しかもビジネスはやってみないと分からないことも多く、調査をしたら確たる証拠や裏打ちが得られる訳でもないため、自分達で考えられる限りの可能性を鑑みて決めないといけない厳しさもあります。

— デザイナーとプロダクトマネージャーの違いは何ですか?

デザイナーだった時も、デザインもプロダクトも組織も見て対話しながら動いていたつもりなので、自分の中ではデザイナーだった時とプロダクトマネージャーでやることをそんなにガラッと変えた感覚はないです。

ただ、背負っているものが変わり日々背中がゾクゾクするような緊張感を持つようにはなりました。

ユーザーと、会社とメンバーのメリットを、それぞれを成立させながら未来を創らないといけないのは面白いポイントではありますね。

— ジョブチェンジしたからこそ感じたことを教えてください。

戦略があっても、伝達で鮮度が落ちると実行強度が上がらないので、伝えるスキルが重要だと改めて感じています。

正解を判断しにくい「デザイン」を相手に理解してもらうことは、デザイナーの頃にとことんやってきました。
同様にプロダクトマネージャーも、数字をいくら叩いても仮説は仮説なので、チーム全体にその目標を浸透させて、最後は出力を上げることが組織運営において大事だと考えています。

数値目標だけでは人は動かない、かといって具体的にやるべきことを提示してしまうと、創意工夫の余白が消えて出力が弱まります。
どれだけ戦略を立てても、実行フェーズにも変数だらけなのが面白くて、ロジカルなだけでは人は動かないので、自分の仕事は決めることとチームの実行の出力をいかに上げるかだなと感じています。
 

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