サイバーエージェントならではのSREの働き方と活躍するエンジニアの仕事術
Cyber Legendイベントレポート
第2回全社横断ナレッジ共有イベント「Cyber Legend」では、昨年の技術者の表彰制度「CA BASE AWARD」で最優秀ベストグロース賞を受賞した タップルの野口と、昨年の最終ベストプロフェッショナルエンジニア賞を受賞したCyberZの藤井の2名が登壇。日々サービスを提供する上で意識していることやナレッジについて話を聞きました。(モデレーター:CAM 船ヶ山)
※本記事は、2022年2月に開催した全社横断ナレッジ共有イベント「Cyber Legend」での対談内容を編集したものです。
「Cyber Legend(通称:サイレジェ)」とは
社内で活躍する社員のナレッジを部署を超えて全社で共有し、活用していくことを目的としたサイバーエージェントグループ横断のナレッジ共有イベントです。2021年7月に開催した20代限定のあした会議「YMCAあした会議」で決議され、2021年11月に第1回目を、2022年2月に第2回目をオンライン形式にて開催しました。
SREが担っている職務
船ヶ山:SREはここ数年出てきた新しい職種ですが、担っている役割や仕事内容について教えてください。
藤井:SREの役割は「サービスの信頼性を担保する」という一言に尽きると思います。
ここでいう信頼性というのは、可用性であったりアプリケーション品質のことを指しており、それらの信頼性を損なわないように、ひいては向上させていくことがSREのチームの大きなミッションの一つです。
ミッションを達成するためにCyberZのSREが取り組んでいることは大きく三つです。
一つ目が、クラウドシステムの構築・運用・保守です。「OPENREC.tv」ではAWSを使っているので、EKSやEC2の構築や監視に加え、キャパシティプランニングなどを行っています。
二つ目が、アプリケーション開発・改善の業務。僕らの組織は完全な分業にならないような組織体制をとっているので、SREチームがサーバーチームと共同で技能開発を行ったり、場合によっては僕らが実装をすることもあります。
三つ目が、いわゆるDevOpsと呼ばれるソフトウェア開発品質を向上させるような施策です。最近だとFour Keysと呼ばれる、ソフトウェア開発品質を計測する基盤を、私が構築設計しています。
藤井:実際の機能開発で私が携わったときのフローについて紹介します。
まず最初にサーバーサイドのエンジニアが設計をして、SREがセキュリティやスケーラビリティの観点で正しい設計か、ということをレビューします。場合によってはSREのメンバーが開発に入ることもあり、今回は実際に使われるデータ操作が私が得意としているデータベースだったので開発にも携わりました。
具体的に行ったのは、クリーンアーキテクチャのデータ層部分の実装と、それと並行した負荷試験です。正しいレポートを誰が見ても分かりやすいように出すということを念頭にテンプレート化をして、誰でも簡単に負荷試験ができるように設計しています。これらの負荷試験のレポートをもとにリリース判定やキャパシティプランニングを行い、実際のリリースにこぎつけました。
僕たちが負荷試験や構築だけをするチームであれば、仕様の把握や開発チームとの連携にかなり時間がかかると思いますが、設計の段階から連携しているのでコンテキストスイッチや仕様の把握などスムーズにできます。そういったところが、SREチームが近い距離感で働いている良さだと感じます。
プロダクト開発で意識していること
船ヶ山:プロダクト開発においてエンジニアとして意識していることはなんですか?
野口:僕が所属しているタップルのあるPMからの受け売りでもあるのですが、「やることとセットでやらないことも決めておく」ということをいつも重視して開発を進めてます。
「タップル」内のwebの決済機能のリプレイスを例に挙げると、開発の過程で、ECサイトなどでよく見かける「クレジットカード情報の保存をしますか」といったチェックボックスを新しく作るかどうか議論したことがありました。そのときマストで要件として挙がってるのは「とにかくリプレイスを早くする」ということだったため、今回はやらないという意思決定をチームで行いました。
船ヶ山:僕もPayPalのところで関わっていましたが、開発の現場だと時間も決まっている中で、取捨選択が求められるケースって結構ありますよね。軸をブラさないことは大事だと思います。
野口:そうですよね。
サービスに貢献するため大切しているマインド
船ヶ山:サービスに貢献するためにどのようなマインドを大切にしていますか?
藤井:気を付けているのは「開発組織の一員として愚直に行動すること」です。僕は割といろんなことに不安を感じる性分なので、自分が直接関係なくても分からないことについて質問したり、このボタンが連打されそうだから別の方法にしませんか?と色んな提案をしたりして、積極的に人と関わって不安を解消するようにしています。
主要なSlackのチャンネルを定期的に周回し、自分たちが関わってない案件も把握するようにしたり、SREとして見ておいたほうがいい内容を見つけ、業務に役立てることも結構あります。いちユーザーとしての改善提案はもちろん、業界や技術の関心のシェア、不具合報告などもSlackで行うのですが、チームという枠を超えて気兼ねなく発言したことが、自分の存在感や信頼をつみあげることにつながったんじゃないかと思います。
船ヶ山:ありがとうございます。やっぱりシステムだけじゃなくサービス全体の細かいとこを見るっていうのはすごく大事ですね。
サイバーエージェントグループに蓄積された知見を活用
船ヶ山:情報共有など、サイバーエージェントグループ間で連携したり横のつながりを活用することもありますか?
野口:サイバーエージェントには本当に多くのサービスやプロダクトがあるので、そこで得られた運用実績やナレッジを上手く使う、つまりグループの強みを活かすことは意識的にやっています。
昨年「タップル」の新機能リリースにあたり導入実績のない技術の検証をする際には、上司や同期の人脈を上手く使って、他のサービスやプロダクトで導入したことがある社員とディスカッションしながら検証しました。こういった材料集めはとても大事で、サイバーエージェントグループ内に蓄積された知見を活用することは本当におすすめです。
また社内だけでなく、社外のクラウドベンダーのアカウントチームから意見をもらうことも行っています。こういう機能やこういうものを実現しようとしていると前提を伝えた上で、どういう作り方をしていくのが良いかディスカッションを繰り返していくというのがポイントだと思います。
船ヶ山:ありがとうございます。ディスカッションの際、事前に準備をしていますか?
野口:そうですね。社内外に関わらず、事前資料の用意や集められる情報を揃えた上でディスカッションに臨むようにしています。ラフに相談を持ち掛けるけど、準備は徹底するというところがポイントです。
船ヶ山:事前準備次第でディスカッションの質も変わってきますよね。そろそろ終了時間が近づいてきたようです。野口さん、藤井さん、今日はありがとうございました。
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2022年より導入した「主席認定制度」において、10年以上当社のセキュリティ強化に真摯に向き合い続けている野渡が、主席エンジニアの1人に選出されました。
経営層、各開発責任者が絶大な信頼を寄せる野渡ですが、主席エンジニア就任時の思いを「10年以上にわたるチームの取り組みを、改めて評価してもらえたようで嬉しい」と語ります。長年セキュリティ領域に携わってきて感じる最近のセキュリティインシデントの傾向や、サイバーエージェントならではのセキュリティ対策のあるべき姿について話を聞きました。
なお、野渡が統括するシステムセキュリティ推進グループについて、詳しくは「『免疫』のようなセキュリティチームを作りたい~主席エンジニアたちが向き合う情報セキュリティ対策~」をご覧ください。