サイバーエージェントが次に目指す、
スケールメリットを活かした技術組織とは

先日、20代のエンジニア・クリエイターが中心となって創り上げる技術カンファレンス「CA BASE NEXT」を開催しました。当日はセッション、LT、パネルディスカッション、インタビューセッションを含む約50のコンテンツをお届けし、多くの方にご参加いただきました。ここでは、若手社員が役員をゲストに迎えたインタビューセッションの様子をレポートします。第一弾は「技術担当役員 長瀬慶重に聞きたい!サイバーエージェントの技術の話」です。
Profile
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長瀬 慶重
通信業界での研究開発を経て、2005年サイバーエージェントに入社。「アメーバ」をはじめとするコミュニティサービスなどの開発に携わり「ABEMA」の開発本部長も務める。2014年執行役員に就任。エンジニアの採用や、技術組織の環境づくりにも注力している。 2020年10月よりサイバーエージェント常務執行役員に就任。 -
國師 誠也
2018年新卒入社。株式会社AbemaTV Native Team所属。 Androidエンジニアとして、ABEMAモバイルアプリ開発に従事。

國師
今日は私が若手社員を代表して、技術担当役員の長瀬慶重に「サイバーエージェントの技術の話」をテーマに話を聞いてみたいと思います。さまざまな質問を通して、サイバーエージェントの技術組織について知っていただく機会になることを願っています。

長瀬
まずは自己紹介から。2000年にIT業界でエンジニアとしてキャリアをスタートし、2005年にサイバーエージェントに中途入社。サイバーエージェントに入社後、15年間で100近くのサービスに携わってきました。今のミッションは「ABEMA」の開発本部長に加え、いくつかのサービスグロースに関わりながら、サイバーエージェントの技術組織の強化にも注力しています。

國師
技術組織の強化は、メディア、ゲーム、AI事業本部と、事業部を超えて統括されていますよね。

長瀬
2006年に「技術のサイバーエージェント」を創ると宣言し、その時に「自由と責任はセット」ということを決めました。エンジニアのクリエイティビティを最大限発揮するには、自由に発想したり、裁量することが大事だと思っているからです。
その思想がずっと根本にあるため、メディア、ゲーム、AI事業本部それぞれの管轄で、大きく裁量を持ちながら、自由闊達に組織開発や技術開発が行われています。
ただ、これだけ多くのプロダクトを抱える企業になった今、掛け算でやることでスケールメリットを出せる部分も多く存在するので、その部分を注力しているところです。


國師
ビジネス領域も技術領域も幅広い中で、サイバーエージェントのエンジニアはどんな特徴があるでしょう?

長瀬
オーナーシップがあるエンジニアが多いですよね。今日の「CA BASE NEXT」もそうですが、僕は正直ノータッチ。若手発案で決議され、決議された後もコンセプトから何から何まで自分たちで考え、オーナーシップを持って推進する力がある。
これは技術面でも言えることで、担当領域の技術に対して、知見を積極的に社内に共有してくれますよね。

國師
それは僕自身、まわりの仲間を見ていて同感です。事業にも組織にも技術に対しても全てにオーナーシップを持てる人が多いですよね。そのカルチャーは自然と作られていったのですか?

長瀬
「組織文化」は放っておいてもなかなか出来上がりません。だからこそ、経営層が狙っていかなければいけない分野です。サイバーエージェントでも、オーナーシップカルチャーを根付かせるための工夫は色々していて、経営層に対して提案の機会を設けたりするのもその1つ。
それに、サイバーエージェントは社長や役員、決済者と現場間の風通しが良いので、気軽に提案できる環境にあると思います。他社じゃ考えられないようですが、メッセンジャーで社長にアイデアを提出する若手もいますよね。
また、オーナーシップだけでなく、フォロワーシップにも優れている組織だと思います。そのような素養を持つ人を採用していることもありますが、チャレンジしようとする人を応援する風土、土壌が組織としてありますよね。


國師
話は変わりますが、今はソフトウェア時代と言われ、大企業がインハウスでプロダクトを作ることが当たり前な時代になりつつありますが、今後求められるエンジニア像はどう変化していくのでしょうか?

長瀬
日本のIT業界の構造上の問題ですよね。アメリカだとユーザー企業が7~8割で、残りがベンダーやSlerが占めているのに対して、日本の場合はユーザー企業が2割くらい。つまり、多くのエンジニアが受託開発として開発に携わり、要件通りに開発をする構造にあるのです。
ただ近年状況は変化してきています。一例を挙げるとトヨタ自動車がソフトウェアエンジニアの採用を強化しています。このように、ソフトウェアエンジニアが、自ら顧客のニーズや課題を解明し、開発するといったバリューの発揮の仕方が増えてくると思うのです。
これからは、プログラミングを書くだけでなく、設計や技術開発そのものが重視される時代になり、ソフトウェア時代の大きなポイントになると思います。


國師
そうなるとエンジニア採用はより激化しそうですね。優秀な人材をさらに囲うための戦略はあるのでしょうか?

長瀬
サイバーエージェントの採用戦略における作戦で、他社が絶対に真似できないことの1つが「現場のコミット」です。今年の新卒エンジニア採用を見ても、現場のエンジニア300人が携わり協力してくれています。
一緒に働きたい人は自分たちで探す、というのが会社のカルチャーとして根付いていることが大きい、揺るぎない武器として更に磨きをかけていきたいです。

國師
サイバーエージェントはメディア、広告、ゲームとジャンルが多岐にわたるサービスを展開していて、技術選定の裁量も、各プロダクトごとにありますよね。サービスクオリティを上げるためには、個別最適化はもちろんですが、スケールメリットを出せる部分もあると思うのですが、そのバランスはどうなっていくのでしょうか?

長瀬
サービスエンジニアには、担当サービス、ユーザーに向き合うことにもっと時間を使って欲しいという想いがあります。そのためにスケールメリットをいかす取り組みはより強化したいと思っています。例えば、ノンコアと呼ばれる、サービスに直接的的に関係しない機能。そのようなものは共通基盤化することで、サービスエンジニアがもっとサービスにコミットできる環境にしていくことを目指しています。
昨年は開発者の生産性を向上させることを目的とした「Developer Productivity室」を設立しています。CICD、PipeCD、フューチャーフラグなど、よりアジリティを高める取り組みを増やすことで、打席にたつ回数を増やし、サービスエンジニアがユーザーによりコミットできる環境作りをしている最中です。

國師
最後に、次世代のエンジニアに対してメッセージをお願いします。

長瀬
7歳になる息子は、5歳からプログラミングを始めました。つまり10年後には、プログラミング歴10年の学生がどんどん出てくるのです。
さらに、今後はノーコードが加速したり、あらゆる技術が更に抽象化し高度化する時代になるでしょう。そうなった場合、コードを書く行為自体にどこまで価値があるのか?という世界になるかもしれません。
そんな時代において求められるエンジニアは、オーナーシップを持って、価値が発揮できる領域にチャレンジできる人だと思います。
だからこそ「技術×〇〇」を持てるエンジニアになって欲しいし、それを保つためにオーナーシップというコンピテシーを持つ技術者になって欲しいですね。
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