藤田晋が語る
「インターネット時代に必要とされるリーダーシップ」

採用

朝日新聞社と共立女子大学が共催した、「朝日教育会議2019」にて代表の藤田が登壇し、「インターネット時代に必要とされるリーダーシップ」についてお話ししました。

このイベントでは「自分らしく生きる~新しいリーダーシップを求めて」が全体を通してのテーマとなりましたが、改めて、新しい時代のリーダー像を考える場をいただきました。

インターネットの出現が、リーダーシップ像を一変させた

今日はインターネット時代に必要とされるリーダーシップというテーマでお話しさせていただきたいと思います。

まず、インターネット産業が出現してきたのが1990年代、普及したのがちょうど私が会社を創業した1998年頃になります。同じ時期にインターネットでビジネスを始めた起業家に、堀江 貴文さんや、(ZOZO前社長の)前澤さんなどがいます。

自分自身の実感値としても、私たちと10歳前後上の世代では、社長像ががらっと変わったなと感じます。それは、インターネットの出現がリーダーシップ像を大きく変えているということにほかなりません。

私が起業した頃は、世の中の社長という存在は謎のベールに包まれていて、どんな仕事をしているか、社員からしたらよくわからなかった。それもあって、社長というだけで周りからすごい人とみなされて、偉い人っぽく振る舞うことでリーダーの存在を保っていられたように思います。

そういう時代から、ネット上に掲示板がでてきたりして、何かを発信するとき、社長が変なことを言っているとすぐに叩かれるし、頭が悪いとガラス張りのようにバレてしまうようになりました。「なんだ、社長というのは俺らと変わらないじゃないか」というのが世の中に気づかれてしまったんですね。

そういう時代にリーダーを務めるには、偉そうに振る舞うことが非常に難しい。そんなことをしていると裸の王様になってしまいます。

インターネットがない時代のリーダーシップはある意味で楽だったと思います。上層部で情報を独り占めして権力を握り、社員を従わせることができた。それに比べて、ネット上でさまざまな情報が漏れてしまっている現代社会においては、リーダーシップのとり方が大きく変わってきます。

私は会社を創業してすぐに、「ベンチャー企業の日記」というコーナーをコーポレートサイト上につくり、今でいうブログを書き始めました。サイバーエージェントが何を目指しているのか、どういう方針で事業を始めたのか、ということを毎日のように掲載しました。そうすることで、社員をひとところに集めて、声を張り上げて引っ張っていかなくても、社員や取引先、株主など社内外に経営メッセージを伝えることができました。文章さえきちんと書くことができれば、一つの方向に組織を向かわせることが可能になったのです。

社員の興味・関心に合わせて、事業を選択

続いて、ガラス張りのインターネット時代に、どのようにリーダーシップをとってきたのか具体例をお話ししたいと思います。

サイバーエージェントには、大きく3つの事業の柱がありますが、社員にやる気を持って働いてもらうことが我々の経営戦略であり、様々な手を打っています。会社の事業内容を選択するにあたって重視していることは、サイバーエージェントに集まってくる人材に合っているかどうかということ。うちの社員はエンタメ系が好きな傾向にありまして(笑)、そうすると金融事業やインフラ事業などは、あまりテンションが上がらないんですね。でも、「放送局やろうよ」「ゲームやろうよ」と言うと、みんな面白がって取り組みます。人材を生かすことを最優先にしていると、事業の成功確率が高いし、持続性もありますね。

また、サイバーエージェントのビジョン「21世紀を代表する会社を創る」は、新しい時代に世界に誇れる日本企業をつくろうというところから生まれています。素晴らしい会社というのはみんなでつくる芸術作品のようなもので、会社をつくるために、良い人材を採用し生かしていく。サイバーエージェントでは、社員の能力を引き出すために様々なバックアップをしています。

創業当初は、ほとんどの社員が僕より年下で、独身ばかりの組織でした。それから20年が経ち、凄まじい結婚ラッシュ・出産ラッシュがありまして、今もなお続いています。
手前味噌ですが、サイバーエージェントには優秀な女性社員が多いですから、子供を産んで辞められてしまうと、たちまち会社が立ち行かなくなる。ですから、安心して長く働ける環境づくりに力を入れています。たとえば、女性活躍促進制度 「macalon」では、ママのコミュニティをつくってランチの補助をしたり、ママ報という社内報を配布しています。ママ社員に限らず、女性特有の体調不良の際に取得できるエフ休という休暇制度も存在します。このように様々な施策を重ねた結果、産休・育休後の復帰率がほぼ100パーセントになっています。

基本的な考え方は、サーバント・リーダーシップ

ミッションステートメントと呼ばれる、会社の行動規範の中に「採用には全力を尽くす」というものがあります。サイバーエージェントでは人事だけではなく、活躍する現場の社員が総出で採用活動にあたります。良い人材を採用し、きちんと育成し、モチベーション高く働き続けられるように社内を活性化できれば、会社は伸ばせるという仮説を持っているのです。それ自体が同業他社に対する競争力になるので、多くの経営リソースを割いています。

これらの基本的な考え方はサーバント・リーダーシップに基づいています。奉仕型リーダーシップとも呼ばれていますが、一人ひとりの社員にセルフリーダーシップを求め、決断経験を積んで自分自身で能力を引き出してもらいます。社員が挑戦できる環境は会社が提供しますが、本人たちの活力によって、全体のトップラインを伸ばすという戦略です。

逆に、社員の能力を活かせない職場というのはすごくシンプルで、たとえば、会社の価値観がベースとして合わないというのも一つですね。経営者仲間と話していても、リーダーシップのとり方は、会社や人によって根本から異なるので、話が全く噛み合わないほどです。社員の能力を引き出そうという考えが毛頭ない人と、それをベースに会社を伸ばそうと思っているリーダーでは、風土やカルチャーも変わってきます。

さらに、上司と合わない職場でも能力を発揮するのはなかなか難しいと思います。上司が生理的に合わないとか、何かをきっかけにすごく苦手になったとか。そんな会社に毎日いくと想像すると、僕だったら絶対に嫌だなと。

そういう状況を少しでも緩和すべく、会社独自の取り組みとして、半年に一度、人事異動の希望が出せる制度(キャリチャレ)や、社内キャリアエージェントという部署を設けています。この部署では、社員が仕事に飽きている、上司と合ってなさそうという場合に今後のキャリア相談にのり、別の部署にアサインすることもあります。また、「GEPPO」という制度で、月に1度、全社員からヒアリングを行なっています。社内のパワハラ・セクハラの芽を摘んだり、優秀な人材なのにモチベーションが落ちているということを把握する。これが非常にワークしていて、「あなたの身の回りで問題だと感じていることはありますか?」といった質問を投げかけると、ちょっとした言葉の中にSOSが入ってくることもあります。それを見逃さずに人事で洗い出し、役員会にあげていく。人を生かすということは、適材適所も重視することでもありますね。
 

最後になりますが、このインターネット時代にどうリーダーとして振る舞っていくのか。全てガラス張りの時代になっていることは前提の上で、社会でリーダーになるとしたら、ネットを上手く乗りこなさないといけなくなっています。先ほどもお伝えしましたが、僕自身、ブログを長年書いてきて、これが社内外の意思統一に役立っています。

ネットが出てきて本が読まれなくなっていると言われますが、文字に接する機会、読む機会は上がっていると思います。これからのリーダーは、いかに良い文章がかけるか、発信できるかというのが重要な素養だと感じています。そういう意味では、上手に演説できなくても、文章で人の心をつかむことができる。どちらかというと話すより書く方が得意な僕にとっては、良い時代になったなと(笑)

ネットによってガラス張りになった世の中では、自分の言葉で率直に発信するリーダーが求められているように感じています。
 

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