
プレスリリース
AI Lab、機械学習分野のトップカンファレンス「NeurIPS 2025」にて7本の論文採択
株式会社サイバーエージェント(本社:東京都渋谷区、代表取締役:藤田晋、プライム市場:証券コード4751)は、人工知能技術の研究開発組織「AI Lab」に所属する研究員らによる7本の論文が、機械学習分野の国際会議「NeurIPS 2025」(Neural Information Processing Systems )に採択されたことをお知らせいたします。
「NeurIPS」は世界中の研究者によって毎年開催される国際会議で、「ICML」「ICLR」と並び、機械学習の分野で権威あるトップカンファレンスの一つです。本年度は約21,575件の投稿の中から24.52%の論文が採択されました。また、このたび当社から採択された論文のうち「Any-stepsize Gradient Descent for Separable Data under Fenchel–Young Losses」が、Spotlight発表に選出されました。Spotlightは学会に採択された論文の中でも限られた研究のみに与えられ、2025年では全投稿の3.2%程度と難易度の高いものです。
このたび「AI Lab」から採択された論文は、2025年12月にサンディエゴで開催される「NeurIPS 2025」で発表を行います。
■背景
近年、機械学習の発展に伴い、AIを活用した最適な意思決定や効果的な広告配信に注目が集まっています。AI Labでは、大学や学術機関との産学連携を強化しながら、幅広いAI技術の研究・開発に取り組んでおり、インターネット広告においてユーザーに合わせた広告テキストを提示する技術の開発や、より精緻な効果検証を可能にする技術の開発など、実際のサービスにおける意思決定戦略を対象とした研究を積極的に進めてきました。
このたびNeurIPS 2025で採択された7本の論文では、これらの意思決定戦略をさらに効率的かつ高精度に評価・学習するための新たな手法を提案しており、今後のサービスへの応用や新しいマーケティング手法の発展につながることが期待されます。
「NeurIPS」は世界中の研究者によって毎年開催される国際会議で、「ICML」「ICLR」と並び、機械学習の分野で権威あるトップカンファレンスの一つです。本年度は約21,575件の投稿の中から24.52%の論文が採択されました。また、このたび当社から採択された論文のうち「Any-stepsize Gradient Descent for Separable Data under Fenchel–Young Losses」が、Spotlight発表に選出されました。Spotlightは学会に採択された論文の中でも限られた研究のみに与えられ、2025年では全投稿の3.2%程度と難易度の高いものです。
このたび「AI Lab」から採択された論文は、2025年12月にサンディエゴで開催される「NeurIPS 2025」で発表を行います。
■背景
近年、機械学習の発展に伴い、AIを活用した最適な意思決定や効果的な広告配信に注目が集まっています。AI Labでは、大学や学術機関との産学連携を強化しながら、幅広いAI技術の研究・開発に取り組んでおり、インターネット広告においてユーザーに合わせた広告テキストを提示する技術の開発や、より精緻な効果検証を可能にする技術の開発など、実際のサービスにおける意思決定戦略を対象とした研究を積極的に進めてきました。
このたびNeurIPS 2025で採択された7本の論文では、これらの意思決定戦略をさらに効率的かつ高精度に評価・学習するための新たな手法を提案しており、今後のサービスへの応用や新しいマーケティング手法の発展につながることが期待されます。
論文の概要
「Online Inverse Linear Optimization: Efficient Logarithmic-Regret Algorithm, Robustness to Suboptimality, and Lower Bound」
著者:坂上 晋作(サイバーエージェント※1)・土屋 平(東京大学 / 理化学研究所)・包 含(統計数理研究所)・大城 泰平(北海道大学)
「Any-stepsize Gradient Descent for Separable Data under Fenchel–Young Losses」
著者:包 含(統計数理研究所)・坂上 晋作(サイバーエージェント※1)・竹澤 祐貴(京都大学 / 沖縄科学技術大学院大学)
「Bandit and Delayed Feedback in Online Structured Prediction」
著者:渋川 裕生(東京大学)・土屋 平(東京大学 / 理化学研究所)・坂上 晋作(サイバーエージェント※1)・山西 健司(東京大学)
「Block Coordinate Descent for Neural Networks Provably Finds Global Minima」
著者:秋山 俊太(サイバーエージェント)
「Learning from Delayed Feedback in Games via Extra Prediction」
著者:藤本 悠雅(サイバーエージェント)・阿部 拳之(サイバーエージェント)・蟻生 開人(サイバーエージェント)
「Last Iterate Convergence in Monotone Mean Field Games」
著者:磯部 伸(東京大学※2)・阿部 拳之(サイバーエージェント)・蟻生 開人(サイバーエージェント)
「Beyond the Average: Distributional Causal Inference under Imperfect Compliance」
著者:Undral Byambadalai (サイバーエージェント)・岡達志 (慶應義塾大学)・平田東夢・安井翔太 (サイバーエージェント)
■今後
本研究の成果は、インターネット広告における広告オークションや価格エージェントなど幅広い事業への活用が期待されます。
「AI Lab」は今後もビジネス・社会課題の解決に向けたAI技術をプロダクトに取り入れるとともに、技術発展と学術発展に貢献するべく、研究・開発に努めてまいります。
※1 研究開始時は東京大学・理化学研究所に所属。投稿時はサイバーエージェントに所属。
※2 リサーチインターンシップ参加者としての研究成果。現在は理化学研究所に所属。
著者:坂上 晋作(サイバーエージェント※1)・土屋 平(東京大学 / 理化学研究所)・包 含(統計数理研究所)・大城 泰平(北海道大学)
| 観測された行動から背後の評価基準を推定する問題を「逆最適化」と呼びます。本研究は、複数ラウンドにわたって行動を観測し学習する「オンライン逆最適化」において、従来法が抱える計算コスト増大の課題を解決しました。提案手法は、学習が進んでも各ラウンドでの計算量が増えない効率的な設計でありながら、現状最良の従来法と同等の理論保証を達成します。加えて、観測される行動が最適とは限らない現実的な環境下でも、性能が安定的に保たれる手法も提案しました。本成果は、行動原理の理解を目指す幅広い分野への応用が期待されます。 |
「Any-stepsize Gradient Descent for Separable Data under Fenchel–Young Losses」
著者:包 含(統計数理研究所)・坂上 晋作(サイバーエージェント※1)・竹澤 祐貴(京都大学 / 沖縄科学技術大学院大学)
| 機械学習で広く使われる「勾配降下法」は、学習の安定性が「ステップサイズ」の選び方に大きく左右されます。近年は、大きなステップサイズを使うと一時的に不安定になりつつも、その後安定して学習が進む「Edge of Stability(EoS)」という現象が注目されています。本研究では、特定の条件下(データが線形分離可能で、Fenchel–Young 損失を用いる場合)において、任意のステップサイズで勾配降下法が収束することを明らかにしました。特に「分離マージン」を持つ損失関数の場合、標準的な平滑凸関数の最小化よりも速い収束レートで学習が進み得ることを示しました。この成果は、EoS 現象を含む大きなステップサイズを用いた学習の理解を進展させ、大規模学習の効率化に貢献することが期待されます。 |
「Bandit and Delayed Feedback in Online Structured Prediction」
著者:渋川 裕生(東京大学)・土屋 平(東京大学 / 理化学研究所)・坂上 晋作(サイバーエージェント※1)・山西 健司(東京大学)
| オンライン構造化予測は、ランキングやマッチングといった複雑な構造を逐次的に予測する問題で、オンライン分類問題を一般化した設定にあたります。従来の予測手法は「正解」を完全に観測できることを前提にしていましたが、現実には正解について限られた情報しか得られない、あるいは遅延した観測しか得られない場合が多くあります。本研究では、そのような状況に適用可能な新しい手法を提案し、理論と実験の両面でその有効性を示しました。この成果は、限定的な観測しか得られない環境での予測技術を大きく前進させるもので、検索や推薦システムなどの幅広い領域への応用が期待されます。 |
「Block Coordinate Descent for Neural Networks Provably Finds Global Minima」
著者:秋山 俊太(サイバーエージェント)
| ブロック勾配降下法とは、変数をいくつかのブロックに分けてそれらを逐次的に更新することで最適化を行う手法です。特にニューラルネットワークに対しては、各層のパラメータを1つのブロックとして切り分け、それらを逐次的に更新する手法が知られています。本研究では、ブロック勾配降下法がニューラルネットワークにおける最適なパラメータを求められることを理論的に保証した上で、それに基づく新しいアルゴリズムを設計しました。本結果は勾配降下法では未知であった任意の深さの多層ニューラルネットワークに対する理論保証を与えるものであり、特に実運用での安全性が要求される局面などにおけるブロック勾配降下法の有効性を示す結果となっています |
「Learning from Delayed Feedback in Games via Extra Prediction」
著者:藤本 悠雅(サイバーエージェント)・阿部 拳之(サイバーエージェント)・蟻生 開人(サイバーエージェント)
| 広告オークションでは自社のみならず他社も独立にモデルを学習させる状況が見られます。本研究は、このようなマルチエージェント環境での学習において、報酬の観測に遅れが生じる状況を考慮しました。この遅れによって既存のアルゴリズムの性能が悪化し、より長く将来を予測するようアルゴリズムを修正することで性能が回復することを理論と実験の両面から明らかにしました。本研究の結果は実システム上起こりうるフィードバック遅延への対策につながることが期待されます。 |
「Last Iterate Convergence in Monotone Mean Field Games」
著者:磯部 伸(東京大学※2)・阿部 拳之(サイバーエージェント)・蟻生 開人(サイバーエージェント)
| 広告オークションなどの意思決定問題では、多数の意思決定者が相互に影響し合う中で最適な戦略を学習する必要があります。近年、このような大規模なマルチエージェント環境を平均場ゲームと呼ばれるモデルで近似し、そこでの最適な戦略を近似計算するアプローチが注目を集めています。本研究では、平均場ゲームにおける従来の学習手法を改良し、より安定して最適な戦略を学習することが可能なアルゴリズムを提案しました。これにより、多様な状況下でも信頼性の高い戦略を学習できるようになることが期待されます。 |
「Beyond the Average: Distributional Causal Inference under Imperfect Compliance」
著者:Undral Byambadalai (サイバーエージェント)・岡達志 (慶應義塾大学)・平田東夢・安井翔太 (サイバーエージェント)
| 本研究は、機械学習の手法を用いて「施策の効果をより正確に検証する仕組み」を提案しています。ビジネスにおいては、クーポンやマーケティング施策の効果を測るために、「ランダム化比較実験(RCT)」という手法がよく用いられます。これは、対象者をランダムに複数のグループに分け、それぞれのグループに異なる施策(トリートメント)を適用し、その効果を比較するものです。しかし、実際にはクーポンが配布されてもそれを利用しないユーザーが存在するため、クーポンを配られてもその効果を受けないユーザーがいることになります。 このような複雑な状況において、クーポンを使った効果の分布を表すDistributional Treatment Effectを推定する手法を提案しました。これによりクーポンの効果を正確に把握し、誰にクーポンを渡すべきかをより精緻に決定することが可能となります。 |
■今後
本研究の成果は、インターネット広告における広告オークションや価格エージェントなど幅広い事業への活用が期待されます。
「AI Lab」は今後もビジネス・社会課題の解決に向けたAI技術をプロダクトに取り入れるとともに、技術発展と学術発展に貢献するべく、研究・開発に努めてまいります。
※1 研究開始時は東京大学・理化学研究所に所属。投稿時はサイバーエージェントに所属。
※2 リサーチインターンシップ参加者としての研究成果。現在は理化学研究所に所属。