プレスリリース

AI Lab、ユビキタスコンピューティング分野の最難関国際論文誌「IMWUT」にて論文採択

― 慣性センサーと大規模言語モデルを組み合わせた店内商品地図の自動生成システムを提案し、2件の特許を取得 ―

AI

株式会社サイバーエージェント(本社:東京都渋谷区、代表取締役:藤田晋、東証プライム市場:証券コード4751)は、人工知能技術の研究開発組織「AI Lab」に所属する研究員の米谷竜とシンガポールマネジメント大学の原航太郎氏による論文がユビキタスコンピューティング分野の最難関国際論文誌「IMWUT(The Proceedings of the ACM on Interactive, Mobile, Wearable and Ubiquitous Technologies)」※1に採択されたことをお知らせいたします。なお、本成果の要素技術となる人物動線の補正技術についてすでに2件の特許を取得済です。


Ryo Yonetani, Kotaro Hara,
"Map as a By-product: Collective Landmark Mapping from IMU Data and User-provided Texts in Situated Tasks",
The Proceedings of the ACM on Interactive, Mobile, Wearable and Ubiquitous Technologies, 9, 3, Article 146 (September 2025).
https://arxiv.org/abs/2509.03792



特許番号:特許7713607
発明者: 米谷 竜、岡本 大和
名称: 情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7713607/15/ja


特許番号:特許7556098
発明者: 米谷 竜
名称: 動線推定方法、動線推定システム
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-7556098/15/ja


「IMWUT」はユビキタスコンピューティングやウェアラブル・モバイルコンピューティング、およびインタラクティブ技術に関連する国際論文誌です。IMWUTに採択された論文は、同分野のトップカンファレンスである「UbiComp」※2に招待され、本論文も2025年10月にフィンランドのエスポーで開催される同会議にて発表予定です。

■背景

昨今、日本国内では働き手人口の不足が深刻化しており、特に小売業では人材確保が大きな課題となっています。このような状況の中、品出しや商品案内といった店舗業務を限られた人員で円滑に行うための仕組みが求められています。

一部の大手小売企業では店内で所望の商品を探せるアプリの開発が進められており、このようなシステムは従業員の業務効率化に加えて来店客にとって購買体験の向上につながることが期待されますが、その導入にはコストが課題となります。一方で、店内における商品位置を人手で正確に把握するためには、多大な労力が必要となります。

AI Labでは、実店舗運営の効率化や店内リテールメディアの効果向上を目指し、実世界における人物行動の計測技術やロボットの自律移動技術の研究開発※3に取り組んでいます。

■論文の概要

このような背景のもと、この度採択された「Map as a By-product: Collective Landmark Mapping from IMU Data and User-provided Texts in Situated Tasks」では従業員が店内を巡回する際の行動をスマートフォンで自動的に記録し、複数の行動記録を分析・統合することで店内の商品地図を自動生成するシステム「Collective Landmark Mapper」を開発しました。本システムはスマートフォンに搭載された慣性センサーを用いて従業員の動きを計測し、ニューラル慣性航法と呼ばれるAI技術によって店内位置を推定します。

さらに、従業員が店内巡回の際に商品の残数をテキストや音声で自由に入力すると、その内容を大規模言語モデル(LLM)が分析し、入力された位置の商品棚カテゴリーを識別します。これらの分析結果を多数統合することで、それぞれの棚に残っている商品数と位置を示す商品地図を構築します。
本システムは、一般的なスマートフォン以外に特別な機器を必要とせず、日常業務や既存システムへの介入もわずかであることから、一店舗から手軽に導入することができます。論文では、行動記録数を十分に増やすことで、70平米程度の店舗において0.6m程度の誤差で商品位置を推定できることを確認しました。また、構築した地図に基づいて商品案内をするチャットボットへの応用事例も紹介しています。詳細は以下の動画をご覧ください。
本成果と関連して、特許7713607ではテキスト情報を手掛かりに人物動線の推定誤差を補正する技術を発明しています。また特許7556098では、人物の動きデータとともに得られる来棚情報に基づいて、店内地図中における同人物の位置を推定する技術を提案しています。

■今後

今回採択された論文および取得した2件の特許では、従業員の行動計測に基づく店内商品地図の自動生成システムを提案しました。本研究成果を当社の小売DX事業に応用することで、品出し時に商品位置を素早く把握し店舗業務の効率化したり来店客へアプリで商品の場所を案内し顧客体験の向上を図るなど、小売企業の収益向上に貢献します。

「AI Lab」 は今後も、当社事業部門や小売企業をはじめとするパートナーと連携し、行動計測技術の社会実装に向けた研究・開発を推進してまいります。



※1 IMWUT(The Proceedings of the ACM on Interactive, Mobile, Wearable and Ubiquitous Technologies)
※2 UbiComp (The ACM International Joint Conference on Pervasive and Ubiquitous Computing)
※3 
https://www.cyberagent.co.jp/techinfo/news/detail/id=30518
https://www.cyberagent.co.jp/techinfo/news/detail/id=30789
https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=31464