プレスリリース

AI Lab、機械学習分野のトップカンファレンス「ICML 2025」にて3本の論文採択

AI

株式会社サイバーエージェント(本社:東京都渋谷区、代表取締役:藤田晋、東証プライム市場:証券コード4751)は、人工知能技術の研究開発組織「AI Lab」研究員の柳澤弘揮、蟻生開人、Undral Byambadalaiらによる論文3本が、機械学習分野の国際会議「ICML 2025」※1 の本会議に採択されたことをお知らせいたします。

「ICML」は世界中の研究者によって毎年開催される国際会議で、「NeurIPS」※2 と並び、機械学習・深層学習・最適化等の分野において権威のある会議の1つです。
AI Labからの論文採択は今年で6年連続※3となります。

このたび採択された論文は、2025年7月にカナダのバンクーバーで開催される「ICML 2025」にて発表を行います。

■採択された3本の論文について

「AI Lab」では、様々な技術課題に対して、大学・学術機関との産学連携を強化しながら幅広いAI技術の研究・開発に注力しています。
特に、インターネット広告でユーザーに合わせた広告テキストを提示する技術の開発や、最適な意思決定を可能にするために効果検証の精度を向上させる技術の開発など、実際のサービスでの意思決定戦略を対象とした研究に積極的に取り組んでまいりました。
今回採択された3本の論文では、これらの意思決定戦略をさらに効率よく評価・学習するための技術を確立しました。



Survival Analysis via Density Estimation
著者:柳澤弘揮・秋山俊太(サイバーエージェント AI Lab)
生存時間分析とは、あるイベント(出来事)が発生するまでの「期間」を分析する統計手法です。例えば「広告を見たユーザーがどれくらいの時間で購入に至るか」や「顧客がサービスを離脱するまでの期間」を予測するために使われます。

従来の生存時間分析では特別な統計手法やモデルが必要でしたが、本論文では「一般的な確率分布(密度)を予測するモデルの出力を活用して生存時間を推計する」という考え方を提案しました。このことにより、ニューラルネットワークや勾配ブースティングなど様々な既存の機械学習の手法と組み合わせることができ、より柔軟な分析を可能にしています。


Revisiting Instance-Optimal Cluster Recovery in the Labeled Stochastic Block Model
著者:蟻生開人 (サイバーエージェント AI Lab)・Alexandre Proutiere (KTH Royal Institute of Technology)・Se-Young Yun (Korea Advanced Institute of Science and Technology)
ラベル付きStochastic Block Model(確率的ブロックモデル)は、ネットワークデータにおける「隠れたグループ分け(コミュニティ構造)」を表現する代表的な統計モデルです。本研究では、このモデルにおける隠れたコミュニティを高精度で復元(クラスタリング)する課題に取り組み、特に大規模かつ関係性の希薄なネットワークにも対応できる新しいアルゴリズムを開発しました。提案手法は、モデルのパラメータやクラスター数について事前の知識を必要とせず、計算コストも低いため、大規模データへの応用が可能です。さらに、誤分類ノード数に関して理論的限界に達する最適な性能を持つことを証明しています。このアルゴリズムは、SNSのユーザー分析、推薦システム、A/Bテストなど、さまざまな分野への応用が期待されます。


On Efficient Estimation of Distributional Treatment Effects under Covariate-Adaptive Randomization
著者:Undral Byambadalai (サイバーエージェント AI Lab)・岡達志 (慶應義塾大学)・安井翔太 (サイバーエージェント AI Lab)・平田東夢
本研究は、機械学習の手法を用いて「施策の効果をより正確に検証する仕組み」を提案しています。

ビジネスにおいては、新しい製品やサービス、あるいはマーケティング戦略の効果を測るために、「ランダム化比較実験(RCT)」という手法がよく用いられます。これは、対象者をランダムに複数のグループに分け、それぞれのグループに異なる施策(トリートメント)を適用し、その効果を比較するものです。
一方で特定のグループに似たような特性を持つ人が集中してしまい、正確な効果測定が難しくなることを避けるために共変量に基づいてグループを分ける共変量適応ランダム化(Covariate-Adaptive Randomization)も行われます。

このような複雑な実験が行われている状況において、効果の分布を表すDistributional Treatment Effectを推定する手法を提案しました。提案手法は従来の手法に対して約50%まで精度が改善したことを確認しました。

これにより施策や商品の効果を正確に把握し、戦略決定の根拠をより強められることが期待されます。

■今後

これらの研究の成果は、施策効果の検証やビジネスにおける意思決定の改善に活用され、当社が運営する「極予測AI」やリテールメディアにおける広告商品、動画ストリーミングプラットフォーム等への導入を目指しております。
「AI Lab」は今後もビジネス・社会課題の解決に向けたAI技術をプロダクトに取り入れるとともに、技術発展と学術発展に貢献するべく、研究・開発に努めてまいります。



※1:「ICML」International Conference on Machine Learning
※2:「NeurIPS」Neural Information Processing Systems
※3:
ICML 2024(プレスリリース)
ICML 2023(プレスリリース
ICML 2022(プレスリリース
ICML 2021(プレスリリース
ICML 2020(プレスリリース