プレスリリース

AI Lab、人工知能分野のトップカンファレンス「IJCAI」にて2本の共著論文採択ーマッチング問題および推薦システムにおける性能向上に繋がる手法を提案ー

広告

株式会社サイバーエージェント(本社:東京都渋谷区、代表取締役:藤田晋、東証プライム市場:証券コード4751)は、人工知能技術の研究開発組織「AI Lab」研究員の阿部拳之、野村将寛らによる論文2本が「IJCAI(International Joint Conference on Artificial Intelligence)2022」※1に採択されたことをお知らせいたします。

「IJCAI」は、人工知能分野における世界最高峰の国際会議のひとつで、「NeurIPS」「ICML」「KDD」※2などと並んで、人工知能分野で権威ある国際会議の1つです。
本年度は4,535件の投稿の中から15%の論文が採択されました。このたび「AI Lab」から採択された2本の論文は、2022年7月に開催される「IJCAI2022」にて、発表を行います。なお、そのうち1本の論文「Towards Resolving Propensity Contradiction in Offline Recommender Learning」は、全投稿の上位3.5%という非常に難易度の高いLong Talkに採択されています。
 

■採択された2本の共著論文について

「AI Lab」ではマーケティング全般に関わる幅広いAI技術を研究・開発しており、大学・学術機関との産学連携を強化しながら様々な技術課題に取り組んでいます。


Anytime Capacity Expansion in Medical Residency Match by Monte Carlo Tree Search」
Kenshi Abe, Junpei Komiyama, Atsushi Iwasaki


著者: 阿部拳之(サイバーエージェント AI Lab)・小宮山純平(ニューヨーク大学)・岩崎敦(電気通信大学)

本研究は、研修医の病院配属や児童の保育所への割り当てを始めとする「1対多マッチング問題」を対象としています。

従来の1対多マッチング問題では、各病院や保育所の受け入れ枠の数が予め決まっており、その中でなるべく多くの人を希望順位が高い病院・保育所に割り当てられることを目的としています。
しかし、各病院・保育所の受け入れ枠を少しずつ増加させることで、より多くの人を希望通りの病院・保育所とマッチングさせることが可能となります。この際、「どこがどのくらい受け入れ枠を増加させることが最も良いのか」ということを現実的な計算時間で求めることは困難であることが知られています。

このような課題に対し、本論文では「モンテカルロ木探索」と呼ばれる探索アルゴリズムを用いることで、適度に優れた解を高速に求める手法を提案しました。

本論文で提案した手法は、「GovTech開発センター」で保育所の利用調整をはじめとするマッチング問題におけるアルゴリズム開発への貢献が期待されます。

<論文リンク>
Anytime Capacity Expansion in Medical Residency Match by Monte Carlo Tree Search



「Towards Resolving Propensity Contradiction in Offline Recommender Learning」
Yuta Saito, Masahiro Nomura


著者:齋藤優太(コーネル大学/半熟仮想株式会社)・野村将寛(サイバーエージェント AI Lab)

本研究は、推薦システムにおける学習データのバイアス除去(※)を目的としています。

近年、インターネット広告を含め様々なウェブサービスにおいて、ユーザー毎に好まれる配信コンテンツや広告を高精度に予測/推薦する技術は、ユーザーの満足度を左右する重要な役割を果たしています。

高精度な推薦システムを学習するためには、真のデータの性質を適切に反映したデータから学習を行うことが望ましいとされています。一方、現実に得られているデータは過去の推薦システムやユーザー行動の影響を受けており、本来学習を行いたいデータとは異なる性質を有している場合があります。そのようなバイアスの影響を無視して学習を行うことは、推薦システムにおける予測精度の予期せぬ低下に繋がります。

このような課題のもと、本論文では「現在得られているデータのみからバイアスを除去した学習を行う」手法を提案しました。

本研究により、従来の手法よりも高い精度でユーザーの嗜好を予測することが可能になります。これにより、効果予測を伴う推薦システムにおける性能向上が見込まれます。

※現在得られているデータと本来学習を行いたいデータが異なることにより生まれる学習の偏り

<論文リンク>
Towards Resolving Propensity Contradiction in Offline Recommender Learning

<Research Blog>
【IJCAI'22】推薦システムにおけるバイアス除去手法




■今後
今回2本の論文で提案した手法は、人工知能分野における研究開発の基礎技術になるとともに、実サービスへの活用等が期待されます。「AI Lab」は今後もAI技術を取り入れたより品質の高い広告配信技術の実現を目指し、研究・開発に努めてまいります。


※1
「IJCAI」International Joint Conference on Artificial Intelligence

※2
「NeurIPS」 Neural Information Processing Systems
「ICML」International Conference on Machine Learning
「KDD」International Conference on Knowledge Discovery and Data Mining