経済学を活用した価格戦略に関するイベントを主催「AI・経済学 プライシングセミナー」レポート公開

技術・デザイン

2024年8月6日(火)に開催した「AI・経済学プライシングセミナー」において、ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネス 准教授の石原昌和氏、株式会社エコノミクスデザイン 共同創業者・代表取締役の今井誠氏、サイバーエージェント 主席データサイエンティストの安井翔太が登壇し、経済学を活用した価格戦略についてお話ししました。終了後は登壇者と参加者で活発に意見交換が行われるなど、終始盛り上がりを見せました。本記事では当日の一部の様子をご紹介します。

近年注目を集める経済学の社会実装とサイバーエージェントの取り組み

GoogleやAmazonなどの世界的な企業では、20年以上前からビジネスにおける意思決定などに経済学を活用し大きな成長を遂げています。日本国内においても、小売やサービス業界における需要予測や価格設定、企業における人材配置や経営戦略など実際のビジネスに経済学を取り入れる動きが急速に進んでいます。
当社では、2016年より研究開発組織「AI Lab」において経済学チームを立ち上げるなど、国内最大規模となる20名以上の経済学分析者・研究者が、社会実装に取り組んでいます。

最近では、販売価格の決定やクーポン配信における経済学の活用に関する相談などが増えてきていることもあり、AIと経済学の社会実装をさらに促進させるべく、まずは「価格や割引における経済学の活用」というテーマで、経済学活用を検討している企業の担当者の皆様を対象に本セミナーを開催しました。

学術的な内容から社会実装事例までご紹介

ニューヨーク大学 スターン・スクール・オブ・ビジネス 准教授でMBAのプライシング講義を担当されている石原昌和氏、株式会社エコノミクスデザイン 共同創業者・代表取締役で『あの会社はなぜ、経済学を使うのか?先進企業5社の事例でわかる「ビジネスの確実性と再現性を上げる」方法 』著者の今井誠氏、サイバーエージェント AI Lab 主席データサイエンティストで『効果検証入門~正しい比較のための因果推論/計量経済学の基礎』著者の安井翔太の3名がそれぞれ登壇しました。

石原氏は「マーケティングサイエンスで考えるプライシング」をテーマに、学術的な視点で「マーケティングサイエンスとは何か」という基礎的な内容から、価格決定の手順、主にバリューベースドプライシング(商品・サービスの価値を元に価格を設定する手法)について海外事例の紹介なども交えながら解説されました。
また、支払意思額(Willingness to Pay:消費者が商品やサービスに対して支払う意思がある最大金額)の推定方法としてコンジョイント分析についてもお話しいただきました。

今井氏による「既存/新商品における経済学を活用した価格戦略事例」では、
価格に関する企業を取り巻く環境の変化に言及した上で、価格戦略における現状とあるべき姿についてお話しいただきました。
具体的なアプローチ方法や事例、支払意思額を把握するための手法やアウトプット例などが紹介されました。

最後は「経済学を活用した店頭価格/クーポンの最適化」をテーマに、当社の安井が登壇しました。小売店・メーカーとの共同実験による価格最適化の取り組みについて紹介するとともに、値上げをしても売上が増加するような商品が発見できたことを解説しました。
また、クーポンにおける割引方法のデザインに関して、小売店で行ったポイントクーポンと値引きクーポンの比較検証の分析アプローチと結果を紹介しました。

企業のプライシング担当者などが参加、活発な意見交換も

消費財メーカーや小売・流通業界、金融業界などで、価格戦略を担当する企業の方々にご参加いただき、登壇者との活発な意見交換も行われました。

本セミナーはハイブリッドでの開催でしたが、会場とオンラインで計150名以上の方にご参加いただき、会場は満員となりました。

Q&Aのコーナーでは
・どのようにして予測精度の高いモデルを構築しているのか
・支払意思額について、実際に商品を触って回答する場合とそうでない場合で差があるのか、差がある場合の対応方法について
・分析に用いている手法はCausal Impactか?
・同じ割引でも~%割引と~円割引で効果の差はあるのか?
・検証期間の根拠や検証期間を短くするための工夫は?
など、専門的な内容から実用に向けた内容まで、幅広い質問が寄せられました。

また、参加者の方々からは「もっとこのようなイベントを開いてほしい」といった声も多く寄せられ、改めて経済学活用に対する市場からの期待の高まりを感じることができました。
 

経済学のさらなる社会実装に向けて

今回のセミナーを通して、経済学に関する学術的な知見や具体的な事例を共有することで、企業の枠を超えた活発な意見交換が生まれ、経済学の社会実装を一歩前へ進めるきっかけになったのではないかと感じております。

登壇者の皆様からは以下のようなコメントをいただいております。

石原氏「普段お話しすることの少ない、日本で企業にお勤めの方々向けのプライシングセミナーでしたので、とても貴重な機会でした。特に、セミナー後にプライシングに関する日本独自の問題など様々な意見を伺えて、私自身も非常に勉強になりました。いただいたご意見から、まだまだお伝えできる内容があると感じましたので、今後もこのような機会をつくっていただけることを期待しています。」

今井氏「今まさに、ビジネスの最前線では様々な分野で経済学を実装する流れが広がってきています。今回のテーマであるプライシングに限らず、企業内外のデータを活用した多様な分析から、企業がさらなる成長を目指しています。今回のセミナーを通して経済学活用の可能性を感じた方は、ぜひ今後、経済学に触れる機会を増やしていただければ幸いです。」

安井「事例を中心にお話しさせていただきましたが、経済学活用の具体的なイメージを持っていただけたようであれば、大変嬉しく思います。バックグラウンドの異なる企業の方々と議論できたことも有意義でした。今後もプライシングを含め経済学とビジネスの接点創出をテーマにイベントを開催していく予定ですので、ぜひご参加いただきたいです。」


今回盛況に終わった「AI・経済学プライシングセミナー」ですが、サイバーエージェントでは今後も継続的にセミナーを開催し、企業の枠を超えて「経済学の社会実装」について議論することができる場を提供してまいります。


本記事を読み、AI経済学を活用した価格設定や、経済学の社会実装に関するセミナーの共催等にご興味をお持ちいただけましたら、ぜひこちらからお問い合わせください。
問い合わせフォーム
https://forms.gle/dddaUEtpFibGNtFR8
 

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