機械学習が示す「ABEMA」の
番組キャスティングの新しい地図

技術・デザイン

Profile

  • 本間 悠也 (株式会社AbemaTV 総合編成本部 編成戦略部)

    2016年新卒入社。インターネット広告事業本部にて、Webマーケティングの営業・コンサルタントに従事。2019年より株式会社AbemaTVに異動し、2019年8月より現職。
    ABEMAの全体戦略やサービス回遊、キャンペーンなどの設計業務を担当。

  • 作花 健也 (株式会社AbemaTV データテクノロジーズ)

    大学院ではバイオインフォマティクスを専攻し、水族館でのクロマグロの行動解析や医療画像解析の研究を行った。その後、2019年にサイバーエージェント新卒入社。現在は、ABEMAデータテクノロジーズにてデータ処理基盤の設計や運用、機械学習モデルの開発などを行っている。

機械学習と編成スタッフが補完しあうキャスティングシステム

― 機械学習を用いた「キャスティング支援システム」について教えて下さい。

作花:「ABEMA」の開発局では「ユーザーとコンテンツの距離を短くする」をコンセプトに、コンテンツ制作におけるデータの利活用に取り組んでいます

その一環で、本間が所属する総合編成本部と、私が所属するABEMAデータテクノロジーズが連携し、コンテンツ制作をする際の考え方にデータドリブンな手法を導入しようとしています。「キャスティング支援システム」はその最初の一歩となります。

本システムの特徴は「機械学習を用いて、番組のキャスティング案を提案できる」点です。

番組のキャスティングを考える際は、例えば「この作品の主演にはこの役者さんが合うのではないか」といった作品性やコンセプトに沿ったうえでのプロデューサーの長年の経験に基づく仮説に沿って決定されているかと思います。一方、本システムでは、キャストのデータベースをもとに機械学習によって候補者を抽出し、作品の企画にあったキャスティングを提案することが可能です。

ー 何がきっかけで「キャスティング支援システム」を開発する事になりましたか?

本間:地上波テレビ局で番組制作に携わっている方々のキャスティングのセンスは、まさに職人芸です。

一方「ABEMA」はまだ歴史が浅いので、地上波テレビ局に比べるとキャスティング決断の経験値が多くありません。

この課題に対して「ABEMA」らしく、データとテクノロジーで解決策を提案できないかと考えたのがきっかけです。

― 人ではなく「キャスティング支援システム」が提案するメリットはなんですか?

本間:経験値があるスタッフの考えるキャスティングを、本システムで100%再現することを目的にはしていません。100%予想通りの人選が提案されるだけでは、「ABEMA」にとって本システムを導入するメリットになりません。

それよりも大事にしているのは、「思い浮かばなかったけれど、確かにありかも!」と気づきがあるような配役を本システムが提案する事です。

作花:AIや機械学習と言うと「人間の仕事をコンピューターに置き換える」みたいなイメージを抱かれがちです。本システムでは、機械学習で導き出す予測結果と、編成スタッフの仕事の相互補完を重視しています。

機械学習で導き出される答えはあくまで統計的な分析結果です。そこに「ABEMA」の世界観であったり「ABEMA」的なエッセンスを加えて、キャスティングの最終判断をするには、数値化できないような感性や長年の経験が欠かせません。

キャストとキャストが化学反応を起こしてどんな人間ドラマが生まれるかを考えるのは、撮影現場の最前線で番組をつくっているスタッフだからこそできる仕事です。

本システムの役割は、仮説に基づいて候補群を絞りこみ、新しい切り口のキャスティングを提案する所までです。それぞれの得意な部分を担いつつ、共存する形で使っていけたらと思います。

ー どのようなアプローチでキャスティングの精度を高めているのですか?

作花:「ABEMA」オリジナルドラマが大事にしていることは“若者が熱狂する”をつくることです。これを軸に、何千人という俳優・女優のデータベースから一部をピックアップし、キャスティングに精通したスタッフに「キャスティングするなら誰にするか?」を定性的な判断で選んでもらいました。その後、我々で「どういう評価をもとにキャスティングしたのか」を定量的に分析します。例えば、SNS上での露出の頻度、ドラマや映画の出演履歴などの「変数」をもとに定量的なデータ分析をします。

その結果「こういう企画の作品なら、こういう役者さんが良いのではないか?」という仮説を提案します。

データの利活用が加速させる、新しい「ABEMA」の可能性

― 「キャスティング支援システム」を導入した制作現場からはどんな反応がありましたか?

本間:まず、すごく驚かれます(笑)。その上で「この条件で見るとこういう人が上がってくるんですね」という気づきや、「もっとこういう機能があったほうがいい」といった率直なフィードバックをもらっています。

作花:提案したキャスティングが実現するには、スケジュールや予算の都合など実現までには多くのハードルがあります。ただ、「この組み合わせはおもしろいかもね」という声ももらっているので、「新しい切り口での提案」や「キャスティングが化学反応を起こすきっかけ」を提供し、制作現場に新しい風を送り込めればと思っています。

― キャスティング支援以外にも、データ連携することでどんな可能性が考えられますか?

本間:先日「ABEMA」がコンテンツのメタタグに関してソケッツ社と連携することを発表しました。これにより、本システムのキャスティング精度が飛躍的に向上するだけでなく、制作現場の様々なシーンで精度の高いデータ連携が期待できます。

作花:データテクノロジーズの他のチームでは、番組内で視聴数が増えたりコメントが盛り上がったシーンを抽出し、訴求するサムネイル画像制作や、番組宣伝に活用する取り組みも進んでいます。

本システムに関しても、ソケッツ社と連携することで、俳優/女優しか対応できていなかったキャスティングをミュージシャン等にも広げ「ABEMA PayPerView ONLINE LIVE(アベマペイパービューオンラインライブ)」で活用する事も考えられます。

本間:理想を言えば、全ての番組のキャスティングで本システムのデータを活用してもらえればと思っています。

例えば、恋愛リアリティーショーでは、オリジナルドラマとは違ったキャスティングの難しさがあります。出演作品がまだ少ない次世代の出演者の方も多いため、判断基準となる情報が少ないからです。少ない変数値であっても「気づき」や「発見」を促すキャスティングを提案することができれば、本システムを使ってもらえる機会は大幅に増えると思います。

作花:また、先日「CA BASE CAMP」という全社の技術カンファレンスで本システムについて発表したところ「ABEMA」以外の他部署からも「連携したい」という問い合わせがきました。サイバーエージェントの様々なプロダクトに応用できたら、おもしろいと思ってます。

正解も前例もない「ABEMA」ならではの課題。
だからこそ面白い。

― 「ABEMA」のデータテクノロジーズで一緒に働くなら、どういう人に来てもらいたいですか?

作花:データ分析の経験をベースに、課題設定や仮説を考えるのが好きな人が楽しめる組織だと思います。なにしろ「ABEMA」というプロダクト自体が前例がないので「これをやれば正解」という仕事が、上から決まった形で下りてくることがない組織です。ユーザーや制作現場のニーズにアンテナを張り、自分で課題を発見し、解決策を模索するのがおもしろいところです。

例えば今回のプロジェクトも、最初の数ヵ月間は「どう解けばいいのか」「どういう情報が必要なのか」といった正解がない中で、ひたすら突き詰めていく日々でした。個人的にはこういうことがやりたいと思って入社したので楽しかったです。

機械学習という分野もだいぶ知見が貯まってきていて、解き方の型のようなものができ上がりつつあります。私はその型が決まっていない領域で“どう解くか”、ということをやりたくて「ABEMA」に配属先を決めました。

「ABEMA」が抱えているデータは非常に特殊だと思います。なにしろ、約20チャンネルで24時間放送し続ける“テレビ”とオンデマンドの“ビデオ”の、両方のログデータを持っている会社は、世界を見渡しても他にないのではないでしょうか。

それ故に「目の前の課題に対して、正解は自分が作っていくしかない」という状況は、サイバーエージェントグループならではの難易度です。そこを解き明かすのはとてもやりがいがある仕事だと思っています。

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