2021年度、サイバーエージェントの技術組織が目指す姿

技術・デザイン

先日、社内で開催したエンジニア・クリエイター向けカンファレンス「CA BASE CAMP」にて、2021年度の技術政策とメディア事業・ゲーム事業・AI事業の3つの部門の代表エンジニアから、事業戦略に即したビジョンと戦略「TECH VISION」について、発表を行いました。今日はその一部をご紹介します。

※本記事は、9月に行われた社内カンファレンス「CA BASE CAMP 2020」の発表内容を編集したものです。

「技術のサイバーエージェント」を加速するための、5つの取り組み

長瀬慶重  取締役(技術管轄):通信業界での研究開発を経て、2005年サイバーエージェントに入社。アメーバブログやコミュニティサービスなどの開発を経て、現在はビデオ&エンターテインメント「ABEMA」の開発本部長を務めるほか、エンジニアの採用や評価制度に、技術者の環境づくりにも注力している。
長瀬慶重 取締役(技術管轄):通信業界での研究開発を経て、2005年サイバーエージェントに入社。アメーバブログやコミュニティサービスなどの開発を経て、現在はビデオ&エンターテインメント「ABEMA」の開発本部長を務めるほか、エンジニアの採用や評価制度に、技術者の環境づくりにも注力している。

2018年に「技術のサイバーエージェントを加速させる」を掲げて以降の、これまでの振り返りと2021年度に向けた新たな技術政策についてお話をしたいと思います。

■これまでの振り返り

まずは、これまでの取り組みを振り返ります。2018年に「技術のサイバーエージェントを加速させる」という技術政策を掲げ、まず最初に取り組んだことはグループの技術組織の土台を整備することでした。一丁目一番地に技術者の評価制度のアップデートを実現すべく、新評価制度「JBキャリアプログラム」を2019年10月にスタートさせました。

2019年~2020年にかけては「CONNECT」をテーマに掲げ、誰もがスケールメリットを享受できる技術組織を目指して様々な施策を進めてきました。今回はその中でも5つの取組みについて紹介します。

1つ目は「Developer Connect」の設立です。エンジニア3名から構成されるこのチームでは、人と人を繋ぐことをミッションとし、この1年で計42回の社内イベントを支援、のべ1,780人がイベントを通じてつながることができました。

2つ目は「Slack Enterprise Grid」の導入です。現時点で80部署 計4,162人の方が利用を開始し、管轄や部署をまたいだ技術者同士のコミュニケーションが加速しています。

3つ目はソースコードの共有を社内で推進する全社横断プロジェクト
「Development Inner Sourcing」です。この1年間、プロジェクトメンバーの頑張りのおかげで、導入している部署は現在45まで拡大しました。ソースコードは技術者のアウトプットそのものですから、社内のソースコードの共有を推進することで、グループ全体の技術の流通を加速させたいと考えています。

4つ目は「Technology Map」です。今年からグループ全体でスタートし、現在88のプロジェクトの「Technology Map」が完成しています。今後はデータベース化・オンライン化に取り組み、日々の業務で活用できる世界を実現したいと考えています。

5つ目は「Developer Experts制度」です。これは、特定の分野に抜きん出た知識とスキルを持ち、その領域の第一人者として実績を上げているエンジニアに、新たな活躍の場を提供するとともに、各専門分野の発展貢献および、サイバーエージェントグループへの還元を目的とした活動支援制度で、今年は5名のDeveloper Expertsの活動を支援してきました。

■これからの取り組み

紹介した5つの取り組みによって、当グループの資産を「CONNECT」する仕組みが随分と整備されました。2021年度はこれらの仕組みを活用するフェーズに持っていくために「is Real 誰もがグループの資産を活用できる技術組織へ」を技術政策として掲げます。そして、それを実現するための5つの取り組みを発表します。

1つ目は、昨年10月にスタートした新評価制度「JBキャリアプログラム」のアップデートです。1年間運用してきて見えた課題をクリアにし、よりキャリアのステップアップを後押しできる制度にするため「全社共通のキャリアラダーの新設」「JBCI(JB Continuous Improvement)プロジェクトの発足」を行うことを決めました。

「全社共通のキャリアラダーの新設」についてですが、これまでは事業部単位でキャリアラダーが存在していました。しかし運用する中で、評価基準の曖昧さに関する意見をたくさんもらいました。そこで「エンジニア」「マネジメント」「スペシャリスト」の3つの職務から構成する全社共通のキャリアラダーを新設します。

「JBCI(JB Continuous Improvement)プロジェクトの発足」についてですが、これは「JBキャリアプログラム」を継続的に改善していくための一連の施策を指します。背景には、運用から1年が経ち、評価基準の曖昧さ、評価者の育成機会がない、など多くの課題が浮き彫りになったことが挙げられます。これらの課題に適切に手を打ち「JBキャリアプログラム」を継続的に改善していくことを目指します。既に、現場の声を拾い上げるための目安箱の設置、目標設定のワークショップ開催など取り組みはスタートしています。

2つ目は「Developer Experts」のアップデートです。今年は新しく4人をDeveloper Expertsに任命し、合計9名で活動を進めていきます。また、当社が注力する技術領域に対して積極的にDeveloper Expertsを増やしていきたいと考えており、今回公募を行うことも決定しました。

3つ目は技術資産の活用に関する取り組みについてです。昨今のIT業界は技術の高度化・抽象化が進んでおり、技術者の裾野が広がりました。結果この10年でサービス開発の敷居は劇的に下がり、誰でも簡単にサービスを提供できる時代となり、この流れは今後ますます加速していくと考えられます。

そのような未来予測の中で、チーム・サイバーエージェントがどのような競争優位性をもつべきか?と考えたときに、「最速」「最高」この2つを追求することが当社の競争力に繋がると考えました。そして、これを実現するために「技術基盤の開発」「Developer Relations」この2つをより一層強化していきます。

また「Technology Map」のデータベース化・オンライン化についても取り組んでいきます。10月には、社内で「Technology Map」のウェブサイトを公開します。技術キーワードから実際に利用されているプロジェクトを探すことができ、Githubにアクセスしプロジェクトのソースコードを参照することができる仕組みです。これまで分断されてきた社内の技術を一気に流通させることができる、非常に楽しみなプロジェクトです。

4つ目は若手のつながりを加速させる「会社を楽しもうプロジェクト」です。これは、新卒1~3年目までが14チームにわかれて、様々な活動を行いう施策です。コロナ禍において新しい人間関係を構築することが難しくなり、特に新卒・若手の孤立が進みやすい状態でいることに強い危機感を感じています。本プロジェクトを通して、良き仲間と助け合い、切磋琢磨することで、成長が加速することを願っています。

5つ目は第2期 次世代マネジメント室についてです。「技術者の声を経営に活かす」ことを目的に、昨年発足した次世代マネジメント室は四半期に1度、社長に組織課題やそれに対する解決策を提案、実行を進めてきました。

第2期については、技術者の声をより一層経営に活かすため、クリエイターも含め、組織を更に拡大して運営したいと思います、マネジメントに興味のある技術者を積極的に登用することで、将来の経営人材の育成機会としても機能させたいと考えています。

以上が2021年度の技術政策になります。新たな施策を加えて、さらに技術のサイバーエージェントを加速させていきたいと思います。

またこの日は、メディア事業・ゲーム事業・AI事業の3つの部門の代表エンジニアから、事業戦略に即したビジョンと戦略「TECH VISION」について、発表が行われました。
 

メディア部門は「つくる技術から つくり育てる技術へ」

佐藤歩 メディア部門 技術横断室長 / 技術人事室長:2012年中途入社。Webディベロッパーとしてコミュニティサービスやライブ配信プラットフォームの開発などを経て、現在はさまざまな新規事業の立ち上げや、メディア部門のエンジニア組織開発に携わっている。
佐藤歩 メディア部門 技術横断室長 / 技術人事室長:2012年中途入社。Webディベロッパーとしてコミュニティサービスやライブ配信プラットフォームの開発などを経て、現在はさまざまな新規事業の立ち上げや、メディア部門のエンジニア組織開発に携わっている。

メディア部門の「TECH VISION」は「つくる技術から つくり育てる技術へ」になりました。これは技術戦略というより"メディアの開発組織の3年後を見据えたときに我々がどのように変化すべきか" の方向性を示しています。

プロダクト開発に携わる我々は「つくる」ことを出発点としていますが、これからはサービスをつくるだけでなく、事業を育てる、人材を育てる、と同じように技術を育てることをより一層、改めて重視していくというメッセージです。

ここで挙げる技術とは、デザイン、エンジニアリング、マネジメントなどジャンルは問わず、体系化されていて再現性のある方法論すべてを指します。

この「TECH VISION」がみなさんに求めることは、それぞれが持つ優れたスキルを、組織で共有できる技術に昇華すること。そして、それによって有力な技術を共有できる組織を実現するということです。

「つくる技術から つくり育てる技術へ」を実現していく中で「仮説と検証」「データ活用」「Developer Productivity」この3つを特に重要なテーマとして掲げます。

1つ目の「仮説と検証」ですが、開発プロセスの中に「仮説と検証」を根付かせることで、グロースの精度を高めることを目的としています。ビジネス戦略的にも市場環境的にも常に時間的な制約があります。限られた時間の中で事業をグロースさせて成功を得るためには「賢く速く失敗すること」が重要です。

たとえば何らかの施策を試して数字が上がった下がったで一喜一憂するのではなく、失敗や成功から正しく学びを得て次のチャレンジにつなげる。これを開発現場の標準にすることで、グロースの精度を上げることを目的とします。

実際には、すでに色々なプロジェクトで試行錯誤や新しい取り組みが行われているので、組織全体としては、それらのノウハウを集約し、社内で展開できるようにしていきます。
また皆がチャレンジしやすいように、育成や評価の体制を整えることで、個人のキャリアアップに繋がるものにしていきます。

定量的なグロースハックはもちろんですが、ユーザーインサイトを伴う定性的なリサーチなどにも力を入れることで、数字の上下だけに一喜一憂しない、本当の意味で「賢い」開発をして、グロースの最短距離をとれる組織を目指します。

2つ目の「データ活用」について。ここで指す「データ活用」とは、開発チームがデータ戦略を持つことで潜在的な事業インパクトを引き出すことを狙っています。

「データ活用」は大きな事業インパクトを生み出せるだけの伸びしろが、まだまだあります。人間の頭だけでは気づけない可能性の発見、予測、最適化によって、効率的に事業を成長させることが期待できますが、現状メディアでデータを戦略的に活かせるチームは限られています。

今のメディア部門に必要なのは、チームごと・事業ごとで有効なデータ戦略を立て、自分たちで成功できるようになることです。そのためにまずは、戦略の立案力を重視します。チームごとのデータ戦略を強化するために、専門チームが事業メンバーと一緒に戦略立案に入り、チームが自分たちで戦略から実行までデータを活かせるようにします。そしてデータ戦略の実行を支えるかたちで、データリテラシーを高めるための教育、データ活用の標準的なプロセスの整備なども同時に行います。これらを実現することで、データ戦略立案力をメディア部門の競争力に押し上げることを目指します。

3つ目の「Developer Productivity」ですが、これは開発者の生産性を高めて、開発全体を加速させることを狙ったテーマです。もともと様々な部署で「 Developer Productivity」 の取り組みは進められていましたが、これをより推し進める目的で6月に「 Developer Productivity室」が設立されました。

この「Developer Productivity室」では、生産性を測る上で「短いリードタイム」「頻繁なデプロイ」「リリース安定性」という3つの観点に着目します。これらを高い水準に持ち上げることで、例えばリリースに2週間かかっているものを、2時間にまで圧縮することを目標としています。過激な数字に見えるかもしれませんが、これが実現できれば開発者はチャレンジの量を圧倒的に増やせますし、実際にそれだけのポテンシャルを秘めています。

具体的な施策としては「Developer Productivity室」が中心となって、社内外のさまざまなソリューションを「DP Express」という、1つのパッケージとしてまとめあげ、「Developer Productivity」分野の劇的な向上を社内標準にすることを目指します。。ほかにも生産性向上の可視化を通してチームが自分たちの生産性に目を向ける機会づくりや、生産性のために必要とされるソリューションを見つけるマーケティング活動も行います。

改めて「つくる技術から つくり育てる技術へ」というテーマを掲げるに至った流れをお話しさせてください。

不確実性の高い市場環境において、我々のミッション「21世紀を代表するサービスを作りあげる」というのは、圧倒的な試行錯誤によって、成立するカタチを何とか見つけ出すといった、非常に難易度の高い挑戦になります。

このような状況下において、モノづくりに携わる我々が「つくる」だけでは個人としても事業としても立ちゆかないのが実状です。

メディア部門はこれまで、プロダクトごとに現場の裁量で自由度の高い開発、品質の高いプロダクトを生み出せる人材力を強みとしてきました。一方で共有すべきを共有して、全員で勝つための技術を育てる動きに乏しく、組織のスケールメリットを活かせていないのが弱点です。今まで培ってきた強みと、大きい組織の良いところ取りを、あらためて目指していく必要があります。

今回掲げた「仮説と検証」「データ活用」「Developer Productivity」この3つのテーマを達成することができれば、3年後の開発全体の水準は大きく上がり、向こう数年また勝負し続けられる開発組織に進化できるでしょう。そのためにも、「つくる技術から つくり育てる技術へ」をしっかり実行していければと思います。
 

SGEが見据える3年後の開発現場とは

山田元基 株式会社QualiArts 取締役 / エンジニアリングマネージャー:2008年サイバーエージェント新卒入社。Amebaゲームやゲーム技術基盤組織の設立などに携わる。現在はゲーム事業部SGEの技術組織作り、新規ゲーム開発に注力している
山田元基 株式会社QualiArts 取締役 / エンジニアリングマネージャー:2008年サイバーエージェント新卒入社。Amebaゲームやゲーム技術基盤組織の設立などに携わる。現在はゲーム事業部SGEの技術組織作り、新規ゲーム開発に注力している

SGE(Smartphone Games & Entertainment By CyberAgent)の「TECH VISION」について発表を行う前に、SGEがどのような組織か少し紹介させてください。

SGEは、ゲーム&エンタメ事業を提供するサイバーエージェントの子会社12社の集合体で
「SGEから大ヒットを生み出す」という事業ミッションを掲げています。メディアミックスIPや、女性向け、カジュアルゲーム、2Dや 3Dなど、それぞれの会社が得意分野を持ち多種多様なプロダクトサービスを展開し、各社が大きな裁量・意思決定を持ちつつ、12社を繋ぐ横断組織や施策が活発に行われています。「自分達の組織は自分達で創る」という考えが浸透しており、人と人とのつながりや技術のスキルアップ、ノウハウ共有や、その他多くの取り組みが自発的に行われています。

今回「SGEから大ヒットを生み出す」ことを実現するために掲げる「TECH VISION」が「世界に誇れるSGE(すげー)開発力の追求」です。

近年のゲーム市場は要求されるプロダクトクオリティの高度化が進み、グローバル化の波も押し寄せています。この厳しい状況下において、大ヒットを生み出すためには、開発力の底上げは避けて通れない課題です。

我々が目指す「世界に誇れるSGE開発力の追求」のゴールイメージは「安定性が高く、とにかく品質が良い」「SGEのエンジニアなら何でも作れる」「ゲームの面白さをエンジニアが支えている」「エンジニアがゲームに向き合っている」「日本を代表するゲーム会社として世界の市場をリードしている」という状態を実現することです。

そして、そのために大事なのは1社ではなく12社の力を合わせた厚みで戦う事です。
3年先に「世界に誇れるSGE開発力の追求」を実現するために、これまで各社で培ってきたノウハウや知見をよりSGE内で有効に活かすことを目指し、我々はこれから3年間「Cross the Border 戦略」を掲げて推進していきます。

この「Cross the Border戦略」では、「開発基盤」「開発プロセス」「成長機会」の3つの注力ポイントを掲げます。

1つ目の「開発基盤」の狙いはプロダクトのPDCAサイクルの高速化です。3年後にはSGE内でゲーム開発に必要な基盤やライブラリが組織に一通り揃い、ライブラリや技術知見が展開されてるという状態を作るために、既に各社の資産となっている基盤をSGE内で横展開し、新しい共通基盤開発を行うことで開発期間の短縮を目指します。

2つ目の「開発プロセス」の狙いは、適切な計画を策定し実行できる状態を作る事です。ゲームプロダクトにおいては求められるクオリティーの高さ故に、開発期間に2年を費やすことは珍しくなく、長いものだと、3~4年を要することもあります。

だからこそ、開発計画の精度上げが重要であり、各社のノウハウを集約しベストな開発プロセスを確立し、職種をまたいで浸透させていきたいと考えています。

3つ目の「成長機会」ですが ”SGEを優秀なエンジニアが育ち集まる組織"にするために、多様な成長機会を用意し、成長機会を通じて人も組織も技術も進化するという状態を作っていきます。

3つの「Cross the Border戦略」をお話しましたが、これを実現するために、既に様々な取り組みをスタートさせています。12社の技術を繋ぐハブ組織「Tech Hub」の始動、アプリの品質向上のためにパフォーマンスに強いメンバーが他の会社のアプリ開発に入ってパフォーマンスチューニングをする「Tech Force」という取り組み、開発プロセスをスムーズに進めるための「Smoogie」、各社の技術戦略を議論する「Tech Next会議」の開始などです。

3年後には「世界に誇れるSGE開発力」を実現し、「SGEから大ヒットを生み出す」を実現するため、SGEのチーム力を活かし邁進していきます。
 

変革期を迎えているAI事業本部の組織戦略

木村衆平 AI事業本部 データ・ワン事業部 プロダクトマネージャー:2011年新卒入社。広告効果測定、配信事業などを経て、2020/09までdynalystのプロダクト開発に注力。現在は購買データを活用したマーケティングプラットフォームの事業立ち上げを行なっている。
木村衆平 AI事業本部 データ・ワン事業部 プロダクトマネージャー:2011年新卒入社。広告効果測定、配信事業などを経て、2020/09までdynalystのプロダクト開発に注力。現在は購買データを活用したマーケティングプラットフォームの事業立ち上げを行なっている。

AI事業本部はAIを活用した新たな事業機会の創出のため、2019年9月に発足しました。AI事業本部の前身は「アドテクスタジオ」でしたが、広告業界におけるAIの進化を背景に組織体制の強化と名称を変更。発足から1年が経ち、手がける事業領域が広がる今、我々の事業領域と、事業成果をあげるための取り組みについてお話します。

もともと、私たちは広告配信事業をメインに取り組みを続けてきましたが、現在オンライン広告業界では、広告配信の最適化・自動化という部分がある程度成熟し、競争ポイントが広告の表現・クリエイティブ領域でのAIの活用・自動化に移りつつあります。つまり、広告取引の世界で培ったAI技術の適応領域を拡大しているのがこの1年の動きです。

では、事業領域が実際にどう広がっているか?という部分です。
メインで取組んできたアドテク分野に関しては、広告配信技術はもちろんのこと、広告の取引からクリエイティブの領域へと細分化して追求しています。AIクリエイティブの分野では、AIを活用したこれまでにない制作プロセスで既存よりも広告効果が高いと予測される広告クリエイティブを制作する「極予測AI(キワミヨソクエーアイ)」や「極予測TD(キワミヨソクティーディー)」の提供を開始し、実際に導入アカウントにおいて改善実績を出すなど、AI×クリエイティブの面においても、成果があがってきています。

デジタルマーケティング全般に取組んでいるので、アドテク分野の広告の配信・広告クリエイティブ・ディスプレイ広告だけでなく、接客コミュニケーションを拡張させるチャットボットやロボット対話の研究開発などもを進めています。実際にプロダクトに導入するコアなAI技術は、AI Labの研究員が事業貢献と学術貢献の両方を目指しながら研究活動に取組んでおり、この数年は特にCVPRAAAI、NeurIPSといった様々な国際学会で論文が採択されるなど、技術レベルの高さが証明できています。

さらに直近では、広告事業管轄において4月に官公庁・地方自治体向けにDX推進を行う専門部署「デジタル・ガバメント推進室」の発足、5月には薬局・ドラッグストアのデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を専門に行う新子会社として株式会社MG-DXを設立、そして9月には小売事業者の購買データを活用したデジタル広告配信事業を行なう株式会社データ・ワンの共同設立について発表するなど、政府・医療・小売・エンタメ周りのDXに関連する事業への挑戦が加速しています。

このように事業領域の拡大が進む中、扱うデータにも変化が起こっています。
私たちは、これまでは広告の配信ログを見ることがメインでしたが、マルチメディアのデータ、サードパーティのデータ、位置情報のデータ、小売に関してはPOSの購買データ、そこに設置するデジタルサイネージでの画像認識されたデータを扱うなど、データの種類が一気に増えてきています。

これに伴い、技術にも変化がありました。これまではいわゆるソフトウェア開発中心だったものから、ハードウェアを使うケースが増えたり、マルチメディアのデータを扱う都合上、GPUの使用等も増えてきています。

このような状況下において、私たちが事業を成長させていくための組織戦略について発表します。AI事業本部では、1年前に組織変革が行われて以降、様々な領域で新しい事業に挑戦を続けています。この環境下で成果をあげるために共通して大切なのは「AI技術を育て、その価値を事業領域を超えたところで発揮する」という部分です。

我々は、デジタルの世界においては比較的長く開発を続けていますが、いま挑戦している医療や小売分野などにおいては、まだまだ歴が浅く、その領域で長く取組んでいるプレイヤーが沢山いる中で戦わなければいけません。だからこそ、知らないことが沢山あることを自覚して、その領域のエキスパートになることを意識しなければいけないでしょう。極論ではありますが、潰しがきかなくてもいいから、深く掘る「DeepDive」の姿勢を貫きたいと考えています。

また、これまでオンラインで完結していたものから、様々な企業と協業するケースも増えてきました。これは、事業のフェーズを捉えた開発がより重要であることを意味します。

また、昨今、各領域においてデジタルトランスフォメーション(DX)という言葉がよく聞かれます。AI事業本部におけるDXの考え方ですが、我々にとっては、DXそのものが重要なのではなく、あくまでも”事業の土台作り”である認識を持っています。

我々が経験を積み重ねてきたアドテク領域を紐解くと、広告主・代理店・アドネットワーク・メディア・エンドユーザーまで、サプライチェーンは複雑なネットワーク構造になっています。これは小売や医療であっても同様で、小売であれば、ものを作るメーカー、流通を担うロジスティクス、店舗と、登場するプレイヤーは多数存在します。

AI事業本部がDXと掲げて目指しているところは、それらを計測可能な世界にすること。
これを実現することが、我々の強みであり最も価値を生み出せるAIの力を発揮する土台になるので、まずは環境を整えることが最優先です。このDXにおける事業の土台作りですが、少し長期スパンになるかもしれません。どれくらいの時間を要するかは、領域によって異なりますが、焦らずじっくり取り組むつもりでいます。

チャレンジの連続で、思い通りに進まないことも多いですが、この先数年、非常に楽しめる機会であることは間違い無いので、組織全体で楽しみながらモノづくりを進めていきたいと思います。
 

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