データ駆動開発がもたらす「ABEMA」開発現場の姿

技術・デザイン

潜在的ニーズを開拓する新しい形のレコメンド

「ABEMA」では、ユーザーとコンテンツの距離をより近づけるべく、データ活用の強化を進めてきました。快適な視聴体験を届けるために「ABEMA」の開発チームはいかにデータを駆使しているのか、またどんな構想を描いているのか、聞いてみました。

Profile

  • 長瀬慶重
    通信業界での研究開発を経て、2005年サイバーエージェントに入社。アメーバブログやコミュニティサービスなどの開発を経て、現在はビデオ&エンターテインメント「ABEMA」の開発本部長を務める。2018年に取締役に就任し、エンジニアの採用や評価制度に加え、技術者の環境づくりにも注力している。

  • 前田英行
    ヤフー株式会社を経て、2018年サイバーエージェント入社。秋葉原ラボで「ABEMA」の推薦システムの開発、運用を担当。現在は「ABEMAデータテクノロジーズ」「秋葉原ラボ」の2拠点で機械学習、データサイエンスを扱う組織のエンジニアリングマネージャーを務める。

データ活用強化でユーザーとコンテンツの距離がもっと近付く

― 8月に「『ABEMA』が機械学習を用いたデータ活用を強化」とプレスリリースしました。ユーザーにとってどんなメリットがあるのでしょうか。

長瀬:我々が目指しているのは「ユーザーとコンテンツの距離を短くする」というコンセプトです。そのために重視しているのが、レコメンドと検索の精度向上です。

「ABEMA」には他の動画サービスと異なる特徴が2つあると考えています。1つはテレビ朝日の番組制作チームと共同制作しているオリジナルドラマを始めとして、配信される番組は全て「プロコンテンツ」であること。2つ目は「映画, ドラマ」だけでなく「ニュース, アニメ, 将棋, 麻雀, アベマショッピング」と幅広いコンテンツが並んでいることです。

20以上のジャンルにわたり、クオリティの高いプロコンテンツが並んでいる「ABEMA」の視聴データを正しく利活用することで、レコメンドと検索機能を強化し、ユーザー体験を更に向上させられると考えています。

ー これまでも視聴データの利活用をしてきたと思いますが、何が変わったのですか?

前田:これまでの「ABEMA」におけるデータ利活用は「ユーザーの顕在化したニーズ」に対して、どれだけ満足できる体験を提供できるかに取り組んできました。今「ABEMA」で目指しているのは「ユーザーの潜在的なニーズ」を発見し、ユーザーにコンテンツを届けるという試みです。

例えば視聴履歴をベースに、アニメが好きな人にもっとアニメを楽しめるようなコンテンツをレコメンドするのが「顕在化しているニーズ」への対応です。ただ、視聴履歴をベースにすると、ユーザーの目に映るのは人気コンテンツに偏ってしまうので「いつ見ても同じレコメンドだよね」となりがちです。

レコメンドの結果、トップページは個人個人でパーソナライズされてはいるけど、好みのジャンルの新着&人気コンテンツが並んでいるという現象は、動画コンテンツでよく見る光景ではないでしょうか。

「潜在的なニーズ」の発見は、幅広いジャンルの番組を展開する「ABEMA」のラインナップと、視聴データの利活用によって実現したいと思っています。

例えば藤井聡太さんの将棋対局をよく観る人に「今なら将棋アニメ『3月のライオン』もABEMAで観られますよ」というレコメンドをしたり。アニメを観ている人に「出演している声優さんが参加している音楽プロジェクト『ヒプノシスマイク』のライブが配信されます」と知らせたりなども考えられます。

他には、番組視聴中に、ABEMA NEWSで配信している緊急性が高い記者会見を提案をするなど。ユーザーの好みにあわせつつ「なるほど、こんなものもあったんだ」という潜在的なニーズをレコメンドすることで「ユーザーとコンテンツの距離を短くする」につなげられると考えています。
 

ー なぜ「ユーザーの潜在化したニーズ」を重視するのですか?

長瀬:顕在化したニーズに加え潜在的なニーズにも応えることができれば、多ジャンルな「ABEMA」をより満足度高く楽しんでもらえます。それが「ユーザーとコンテンツの距離を短くする」という目標につながるからです。

今回、株式会社ソケッツのデータ提供を受けることで、より詳細にコンテンツを解析できるようになりました。視聴履歴とコンテンツ解析を掛け合わせることで、顕在・潜在どちらのニーズに対してもレコメンドの精度を高め、「ユーザーとコンテンツの距離を短くする」ためのデータ活用が推進できます。

前田:機械学習では「アノテーション」と呼ばれる、動画や画像などのデータに様々な情報をタグ付けをする作業が欠かせません。アノテーションを行なうことでコンピュータがコンテンツを正しく理解できるようになります。

これまで音楽分野や様々な動画サービスにコンテンツのメタデータを提供してきたソケッツさんの実績は素晴らしく、これを「ABEMA」に導入することで大きな効果が期待できます。

ソケッツさんとの協業で実現可能になることは他にもあり、例えば映像のシーン解析等にも取り組んでいます。動画をシーンごとに解析し、レコメンドで使えるような意味のある特徴を検出していけば、より精度が高いレコメンドも実現可能です。

映像シーンの解析と合わせて、コメントのデータ分析も進んでいます。「このシーンがすごく盛り上がっている」「20代の女性にはこのシーンが好まれている」といったデータをもとに視聴者の目にとまるシーンを抽出し、サムネイル画像に選定するというような取り組みも行なっています。

データ駆動の開発文化が、番組制作の場にも浸透してきた

― データ活用強化に向けた「ABEMA」の開発体制について教えて下さい。

前田:「ABEMA」の開発局は現在約100名のエンジニアが在籍しています。その内20~30名はデータサイエンスやマシンラーニング等のデータ分析業務に関わっています。

データ分析に関しては2019年6月に設立した「ABEMAデータテクノロジーズ」と、大規模データ処理や機械学習を取り扱う「秋葉原ラボ」という研究開発組織の2拠点で連携してます。

秋葉原は研究開発の横断組織として「データを使って事業をドライブさせる」ということをミッションに掲げて技術開発に取り組んできました。我々はデータ活用に関して多くの知見と技術資産があり、データ活用の正しいあり方についても明確なビジョンを持っています。

長瀬:事業側はどうしても短期的な指標達成にとらわれがちですが、時には長期的な視点で技術投資や研究開発を見据えていく目が必要です。「ABEMAデータテクノロジーズ」が事業的に担うべき部分と、秋葉原ラボの経験や知見。両者がひざを突き合わせるように協力する体制ができたことで、お互いの良さをうまく出せる環境になってきています。

ー「 ABEMA」の組織内においてデータの利活用はどこまで浸透していますか?

長瀬:組織内には「データ駆動の開発文化」と我々が呼んでいるカルチャーが浸透しています。「データ駆動、データドリブン」という考え方は広くソフトウェア開発で重視されています。実際「ABEMA」の開発局でもデータ分析を前提とした新機能開発が常に行われています。

むしろ今の「ABEMA」では「データ駆動の開発文化」が番組制作や番組編成の現場にも浸透しているのがおもしろいところです。

例えば、今勢いのあるタレントさんであったり世の中で流行っているものを参考までに知りたい、というニーズは企画制作の現場にあります。

そこで、「ABEMAデータテクノロジーズ」では「キャスティングシステムへのデータ活用」を実用化を目指しています。SNSのトレンドデータから、タレントの認知度・関心度を推定し、これらをもとに、過去のABEMAの番組/視聴データを使い、効果があるのか検証を進め、番組のキャスティングへの実用化を目指しています。

また、アニメやドラマなどコンテンツの調達/仕入れに関してもデータを活用しています。例えば、頻繁に検索されるキーワードをもとに、より「ABEMA」のラインナップを充実させるために調達チームが仕入れに動いたりします。

前田:他にも、「ABEMA」にはユーザーから寄せられる膨大なコメントがあるので、コメントの感情分析をしたりコンテンツがどう受け止められているのかを分析したりと様々なケースが考えられます。

また一般的にコンテンツの好みはデモグラフィック属性では括れないとされていますが、「ABEMA」の多様なコンテンツをうまく活用すれば、ユーザーの分類やコンテンツの開発に役立てられる可能性もあります。

更に、データを活用した番組編成にも取り組んでいます。「ABEMA」は24時間365日完全編成ですが、編成は人間の感覚でやっている部分も大きく、ドメイン知識が高い個人の経験則や価値観に基づいて編成を埋めています。

そこにデータ分析から最適なアルゴリズムを考えて番組編成の中でルーチン化された作業を自動化したり、熟練の番組編成担当者をデータでサポートするようなあり方を模索中です。

長瀬:ABEMA NEWS等の生配信においては、リアルタイムで同時接続数を見ながら進行を変えるといった「ABEMA」ならではの番組制作もしています。テレビ朝日さんとの制作ミーティングの場でも、「ABEMAデータテクノロジーズ」の分析レポートが役立っていたりもします。

もともと地上波テレビ局の方々は、視聴率というデータのもとで戦っているので、データに対するPDCAやノウハウも持っていますし、数字に対してすごく真摯に向き合っています。

これらはほんの一例ですが、ユーザーの体験や事業をドライブするためにデータ活用でやれそうなことは、探していけばそれこそ無尽蔵にあるのではないかと思っています。

開発局だけでなく番組制作の現場においても「データ駆動の文化」が浸透してきました。

「ユーザーとコンテンツの距離を近くする」という目的と並行して、コンテンツの制作や調達にもデータを活かしていく。こういったアプローチは当然あると思いますし、それに類する研究や取り組みも大小さまざまに動き始めています。
 

ニューノーマルな時代における「ABEMA」が向き合う社会の課題

― 開局してからの4年間、世の中では様々な出来事やトレンドが起こり「ABEMA」はそれを伝え続けてきました。直近では、新型新型コロナウイルスの影響でユーザーの試聴習慣等にも大きな変化があったと思います。今後の「ABEMA」の立ち位置やビジョン等について考えをお聞かせください。

長瀬:開局以降、WAU(Weekly Access User)は確実に増え2020年7月には1400万WAUに達しました。この4年間の視聴傾向を見ていると、それこそ最近では新型コロナウイルス関連のニュースであったり、藤井聡太さんの将棋での大活躍など、時流や話題に並行しつつ、「ABEMA」でしか観られないコンテンツを提供してきました。その積み重ねが、今のWAUに反映されていると考えています。

今、新型コロナウイルスによって、ニュースやエンターテインメントのあり方が変わるという時期に、我々はどういう社会貢献ができるのかを議論してきました。その答えの1つが「PayPerView」機能です。このような状況で「世の中に今求められていることは何か」を考え、やると決めたら最速で作り、コンテンツとセットで提供していけるのが我々の強みです。
ユーザーのニーズに対して「ABEMA」は常にアップデートし続けてきました。そして今、エンターテイメントやライブなどコンテンツを提供する側が直面する大きな課題に対して「ABEMA」がどう解決策を提案できるか。世の中のダイナミックな流れに対して、機敏にアップデートしていくことが重要なポイントであり、我々のあるべきポジションでもあるのかと思います。

―求めるエンジニア像であったり、こういう人と一緒に働きたい等はありますか?

前田:私は秋葉原ラボで、レコメンドや検索を中心にアルゴリズムの改善やKPIを考えてきました。レコメンドも検索も、ユーザーが「ABEMA」で何かを探すための手段の1つです。

これからはレコメンド・検索を含めた「ABEMA」全体で、もっと広い意味でコンテンツとユーザーを近づける橋渡しができたらと考えています。

これまで主に視聴履歴をベースにしてきましたが、ユーザーの行動データは視聴履歴以外にもたくさんあります。どこのページにいって何秒そこに滞在したとか、どんな情報を見て帰ったとか、ユーザーの足跡はたくさん残っている。

レコメンド改善によって、ユーザーにすすめる情報も新しい出会いになるとおもいます。朝はニュースを見て、夜はアニメを観るといった視聴周期というものもあります。そういったパターンや足跡から得られる情報をしっかり理解して、ニュースに触れたり、新しいエンターテイメントにふれることを役立てたい。

「このデータとこのデータを組み合わせたらこんなことができそう」という、想像力やセンスが豊かな人にもぜひ来てほしいと思います。「ABEMA」には本当に多様なデータがあるので、そういう人なら面白いことができそうでワクワクします。

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エンジニア内定者が語る
「サキドリ選考」体験談

技術・デザイン

エンジニア新卒採用の早期選考として実施している「サキドリ選考」を昨年受けた内定者3名に、当時の思いや、事前準備事項、参加してよかった点など伺いました。
9月よりエントリー開始する選考をサキドリしてお伝えします。

「サキドリ選考」とは?
サイバーエージェントの新卒エンジニア採用の早期選考です。
募集条件を満たしていれば、どんな理由でも選考を受けることができます。

面接では、ひとりひとりの成長を願って、エンジニアや人事がフィードバックを行います。
また、「サキドリ選考」でお見送りになった場合でも、本選考で再チャレンジが可能です。

エントリー期間
9月1日(水)~9月30日(水) ※順次選考を実施予定です。

ご応募の方は、インタビュー最後のエントリーリンクよりご応募ください。

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