壁を乗り越えてくる若手クリエイターの育て方
~自分を信じ続ける子に「大丈夫、これからだよ」と伝えたい~

技術・デザイン

技術者が選ぶ、技術者のための社内表彰「CA BASE AWARD」にて「最優秀ベストリーダー」を受賞した鷲山。いつも周りのメンバーに慕われる彼が、若手を育成をする際に心掛けていることなどについてインタビューしました。

Profile

  • 鷲山 優作 (ワシヤマ ユウサク)
    2011年、ゲーム子会社株式会社グレンジに中途入社。コミュニケーションアプリから始まりブラウザゲーム、ネイティブゲームなどのアプリ開発に従事。2016年にスマートフォン向けゲームに最適なUI/UXを研究する専門組織「UIUX Lab」を立ち上げ、代表へ就任。同年グレンジ取締役CCOに就任。現在はゲーム・エンターテイメント事業部のデザイン統括として、採用や育成の推進を行っている。

壁を乗り越えられる若手になってもらうために、リーダーができること

―― 株式会社グレンジの取締役としてCCOを務める一方、研究組織「UIUX Lab」を立ち上げたり、プロダクトの開発に携わりながら、一貫して若手クリエイターの育成に注力しています。若手に仕事を任せる上でどんなことを心掛けていますか?

普段から心掛けていることは「任せられることは可能な限り任せつつ、最終的な責任は自分がとる覚悟をもつ」でしょうか。

任せた上でトラブルが発生した場合、基本的には本人に乗り越えて欲しいと思っているので、それが可能かどうか見極めるためにも日常のコミュニケーションを欠かさないように意識しています。

経験則ですが、最初の「ヤバいかもしれないです」アラートは大抵そんなにヤバくはないんです(笑)。自分で気づいている限りは、自力で乗り越えてくれたらいいなと思っています。

ただちょっとしたことで不安になる人もいれば、ギリギリまで我慢してしまう人もいます。時には1回目の「ヤバいです」が本当に大ピンチということもあるので、そこは性格や状況を見て判断しています。

若手のコンディション把握のためにしているのは、日常的にランチや飲みに行くことです。逆に「月一回、会議室で1on1ミーティングや面談」といったことはしていません。私が若手だったら「一対一」って身構えちゃう気がするんです。私みたいなオジサンに会議室に呼び出されて話をするってことですからね(笑)。

むしろ食事をしながら雑談して「調子良さそうだな」「こんなことで悩んでいそうだな」と把握できている状態を大切にしています。

―― 若手が行き詰ったり不安を感じるポイントに気づき、対処するにはどうしたら良いでしょうか。

プロジェクトやチームに新しく参加したばかりの時期は、特に気をつけて見ています。例えば、入社してくる新卒クリエイターたちはとても優秀ですが、社会に出ると全然通用しない現実に直面します。野球でいう高卒ルーキーがプロの壁にぶつかるのに似ていますね。

つまずき方は人によって違います。シンプルにスキル不足というケースもあれば、マインドだったり、あるいはコミュニケーションの問題ということもあります。それ以上に彼らの上長やチームの環境に問題があるケースもある。つまずく原因は1つではなく、複数であることが多い。

リーダーの仕事は、まずそこを切り分けてあげることからです。

中には本人にできることもあるので「そこは自分でやってみよう。代わりにここはこっちでやっておくよ」といったように。そうやって問題解決を手助けして、まず目の前の壁を一つ乗り越えてもらう。

最近の若手クリエイターは本当に優秀ですが、どうも「本番の試合では1球もミスれない」と委縮してしまいがちです。実はミスっても大したことはないんですよね。そのミスでプロジェクトが傾いたり、会社が傾いたりなんてほぼないですから。みんな真面目で真剣に向き合ってくれているからこそ、些細なミスも怖くなってしまうのだと思います。

中には「全然できますよ!」という感じで、意気揚々としてあまりこちらの言うことに耳を傾けない若手もいたりして「このやろ~」って思ったりもしますが(笑)。

そんな若手も、壁にぶつかったり乗り越えたりしながら、3年経てば頼もしい戦力になってくれます。

社内表彰で「最優秀ベストリーダー賞」を受賞したときの様子
社内表彰で「最優秀ベストリーダー賞」を受賞したときの様子

つまずく理由が人それぞれなら、目標設定も人によって違ってくる

―― 若手の目標設定についてどのようにアドバイスをしていますか?

つまずき方は人それぞれだと言いましたが、同時に、目標設定も人それぞれであるべきだと思います。入社1年目の目標として「1人前になる」「実装できるようになる」みたいな目標を掲げる人が多いのですが・・・

自分が新人の立場で考えた時、ものすごい成長を実感できる目標の方が楽しいと思うんです。「大きな岩を動かしたりミルクを運ぶ修行をしていたら、いつの間にか『かめはめ波』を撃てるようになっていた」とか、ちょっとワクワクするし頑張れるじゃないですか。

―― クリエイターのアウトプットは数字であらわしづらいです。定量的な目標設定をどう設定したら良いでしょうか。

職務の性質上、どうしても定性的な部分は多くなってしまいますが、定性的な中にも何かベンチマークを設定したり、分かりやすいゴールを見つけてあげることはできます。

「このクリエイティブをこの納期で作れたらすごいよね」とか「あのツールの習得を何日でできたら良いね」とか。やや強引でも定量に落とし込んだ上で、細かな目標を箇条書きにして、例えば7割クリアできたら達成とするなど。

またこうすることで、本人も我々と話し合う前にどの程度達成できたのか把握できます。大切なのは、あくまで納得した上での目標達成を実感させてあげることです。

例えば「製品レベルのクオリティのものを作ろう」と言うならば、その製品のクオリティとはどのぐらいなのかはベンチマークできちんと提示すべきですよね。

そこが曖昧だと、本人的には良いものを作ったと思っているのに、上司から「全然ダメでしょ」と言われるということが起こります。これでは納得感がありません。達成できてもできなくても、納得感があることが重要だと思うんです。

納得感があれば仮に達成できなかった場合も「ここが良くなかったな」「この辺でもたついてしまったから次は頑張ろう」と、本人も前向きに進んでいくことができます。
 

伸び悩んでいる若手には「大丈夫、これからだよ」と伝えたい

―― 採用活動にも積極的に関わっていますが、自分が学生の時と比べて今の学生をどう思っていますか?

インターンに参加する学生たちは、誰を見ても私より優秀で良いやつだなと思います。クリエイターの採用に関してはCCC(Cyberagent Creative Center)という組織があり、ゲーム事業部とメディア事業部、部署横断で採用から育成を現場のクリエイターである我々に任されています。

またUIDA(UI DESIGN ACADEMY)というデザイナー志望の学生を対象としたインターンシップがあるのですが、メンターとして参加すること自体が楽しいです。常に新しい価値観に触れ続けられるので、自分にとっても刺激になりますし、学生と交流してみると本当に色々なタイプの人間がいて面白いなと思います。

UIDAの様子
UIDAの様子

―― 鷲山さんは学生との接し方もフランクで、若手に対して無理に威厳を保とうとされていないという印象を受けます。

そうですね、割と自分をさらけ出してしまいます。無理に威厳を保つ必要はないと思うんです。若手にいじられたりするのもちょっと嬉しかったりします(笑)。

私はプレイヤーとしてずっと現役でありたいと思っています。そして自分のこれまでの社会人生活で言うと、リーダーを務めていた人の大半がプレイングマネージャーだったんですね。

ベテランのプレイングマネージャーから怒られると、正直ムッとすることもあるじゃないですか(笑)。でも確かにすごいなと思うんですよね。その人のスキルが圧倒的で、実力で凌駕していれば認めざるを得ない。若手からすると「悔しいけどなんとしてもこの人からスキルを盗んでやる!」という風にポジティブに思われますよね。そうありたいです。

―― これまで多くの若手の成長を見てきたと思いますが、突き抜けて活躍する人に共通する特徴などはありますか?

前述した「最初の壁」みたいなものを乗り越えた人は、元気に働いてくれて活躍しやすいかなと思います。クリエイターや技術職の場合、数年で世界一になったりはしないと思うんです。もしそれが可能なら、我々ベテランは引退してますよ。

我々も何十年もやってきてまだここです。全然世界は獲ってないですし、日本ランキングだってトップかと言えばちょっとまだ分からない。そういうものじゃないですか、クリエイターというものは。

新卒で入って1年で、とんでもない存在になるというのはあまりイメージが湧かないんですね。その人なりのすごい成果を上げ続けて、3年後や5年後にはすごい存在になっていてくれたら、という感じだと思います。

センスだけでは難しい。何千何万と素振りをしてきて、ようやく自分の色や型ができてきて、その上で色々な仕事が来た時にはこの引き出しを開けてここから持ち出そう、ということができるようになっていくのだと思っています。

―― 様々なツールが高度化し制作物のクオリティは飛躍的に向上しました。また、制作に関わる煩雑な作業も自動化できるようになってきています。それでも何十年もかかるものなのでしょうか。

何十年はちょっと言い過ぎたかな(笑)。でも10年ぐらいはかかるのではないでしょうか。ツールは確かに便利ですが、あくまで手段の1つです。生産性も上がるしメリットは大きいと思いますが、本質的なところはそこじゃないと思っています。

ツールを含め、新しいインプットやスキルをずっと学び続けることはもちろん大事です。ただ究極的にはクリエイティブも手段の1つであり、自分で何かを作る必要すらないかもしれない。自分が所属する組織やプロジェクトの目的を成立させるためなら、外からすごい人を連れてきて絵を描いてもらってもいいわけです。

成功の確度を上げるためであれば、連れてきた人にこういう表現をしてもらうためにはどう伝えたらいいのか、その伝え方のスキルを伸ばしておいてもいい。

我々はアーティストではありません。求められている要件や成し遂げたいものがある程度決まっている中で、どうやってそれを最大化していくのか。どうやって成功確度を1%でも上げていくのか。こういったことを一生懸命考えている状態が、いい状態だと思います。

そしてその部分が、本質的なところかなと思っています。そこから逆算して「じゃあこういうクリエイティブにしよう」「こういうUIにしよう」みたいなものができ上がってくる。そうなれるまでは時間がかかると思っているんですね。

なのでもし今伸び悩んでいる若者がいたら、「大丈夫だよ」と伝えたいですね。自分を信じ続けることが大事ですから。
 

2019年12月頃撮影
2019年12月頃撮影

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