ビジネス課題の深堀りから始めるメディアと
研究開発の橋渡し

技術・デザイン

秋葉原ラボ コーディネーターというキャリアパス

サイバーエージェントのメディア事業における研究開発組織「秋葉原ラボ」には、研究開発組織とビジネスを連携させることをミッションに掲げる”コーディネーター”という職種が存在します。今日は「秋葉原ラボ」のコーディネーターとして働く松井に、研究開発組織とサービスを繋ぎ、知識・知見を循環させるために心掛けていることについて話を聞いてみました。

Profile

  • 松井 美帆 (マツイ ミホ)
    株式会社サイバーエージェント 2007年入社。新規開発局でインフラエンジニアを経験後、CSでラボとの共同プロジェクトである統合監視システムOrionのPMを経て、現在秋葉原ラボコーディネーターとして勤務。

秋葉原ラボとメディアの橋渡しを担う
コーディネーター

― 秋葉原ラボと「コーディネーター」が担っている役割や業務についてについて教えてください。

私が在籍する「秋葉原ラボ」は2011年4月に設立されました。大規模データ解析基盤「Patriot」の構築・運用や、自然言語処理、情報推薦、マルチメディア解析、データ分析などを専門とするエンジニアが「ABEMA」や「Ameba」等の自社メディアから得たデータを活用し、各サービスの課題解決に繋がるソリューションの研究・開発を行なう部署です。

私はそこでコーディネーターという仕事をしています。

秋葉原ラボは、サイバーエージェントのメディア事業における研究開発組織ですが、この種の横断組織が抱えがちな課題の1つに「どんな技術領域を得意としていて、どんなソリューションをもっているのか、他の部署から見えにくい」という点があります。

そんな背景がある中、サービスのビジネス課題をヒアリングし「この課題を解決するには、秋葉原ラボが開発したこのソリューションが使えるかもしれない」とあたりをつけ、適切な担当者をアサインし、必要であれば秋葉原ラボのソリューションの導入を支援するという役割を担っています。

単に秋葉原ラボのプロダクトをサービス側に提案するだけでなく、多様なサービスに導入されている秋葉原ラボのソリューションとユースケースを可能な限り把握することが大切なので、組織内の情報のキャッチアップも日々の大切な業務です。

― 提案をする際、コーディネーターとして心がけていることは何ですか?

サービスが抱える課題の本質をきちんと見極めることです。これはコーディネーターに関わらず、秋葉原ラボのメンバー全員が意識していることだと思います。その上で、最適なソリューションやアサインする人の提案ができるように心がけています。

秋葉原ラボにはサービスの健全化に関わる施策についてよく相談がきます。例えば「プロフィール画像を使って、不適切な利用をするユーザーを検知したい」というサービス側からの要望などです。

秋葉原ラボが所属する技術本部にはサイバーエージェントのメディアサービスに投稿される様々なコンテンツの監視を担う「Orion(オライオン)」という総合監視基盤システムがあります。

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秋葉原ラボはこの「Orion」において不適切な投稿を検知するための様々な機械学習技術を使用したフィルタを提供していて、一連のフィルタ群をOrion Filterと呼んでいます。基本的に不適切投稿の検知には、このOrion Filterから適切なフィルタを選択したり、Orion Filterに新規でフィルタを搭載することで対応します。

ユーザーからの投稿を利用して不適切ユーザーを検知したいという要望に対しては基本的には「Orion Filterの機能を使い、検知しましょう」という提案になります。

ただ、「プロフィール画像をつかって、不適切な利用をするユーザーを検知する」という施策が、本質的な課題をとらえているか検討される必要があると思います。

ー 施策の背後にある本質的な課題とはなんですか?

例えば、「なぜプロフィール画像を使うのか」という点と「不適切なユーザーとはなにか」という点に注目してみて、施策と課題の関係を深堀りします。

具体的にサービスの課題をヒアリングしてみると「ユーザーからの通報や監視担当者の肌感から、同じプロフィール画像を利用している複数のアカウントがサービス内に散見され、これがビジネス目的の業者アカウントではないか。プロフィール画像投稿時に同一画像を検知し、ユーザーを特定して対処すればいいのではないか」という仮説がサービス側にあることがわかりました。

サービス内で複数アカウントを取得して活動し、他のユーザーへ声をかけサービス外へ誘導して何かしらのビジネス勧誘をしているようなユーザーへの対策です。

ー そういった利用はサービスの利用規約上禁止されているので、検知して対処したいという要望はありえそうな課題に見えますね。

そう思いますよね。サービス側でも色々な観点で分析を実施していましたが、秋葉原ラボのエンジニアが「一度シンプルに画像をハッシュ化して比較し、同一画像を使っているユーザーを並べてみましょう」と提案してくれました。

検証していくなかで、そもそも同一画像が表示されている大きな要因として「サービスのシステム設計上の不具合」の可能性がでてきました。

同時に同一画像を利用している複数のユーザーのリストを眺めてみると、想像と少し違う現実が見えてきました。同じハッシュ値を持つプロフィール画像に紐づくアカウントの数は、2, 3アカウントくらいがわりと多い。スマホやタブレットを2,3台もちしているユーザーも世の中には多くいますから、実は一般ユーザーが悪意なく複数アカウントを利用している可能性もあります。

何アカウント作っていたら業者と判断できるのかの定義なく「複数アカウントで同一プロフィール画像を利用しているのは不適切なので対処」としてしまうことで、一般ユーザーを規約違反として扱ってしまう可能性もあり、それは場合によってはサービスの対応としてマイナスになる可能性もあります。
「ビジネス目的の業者という不適切ユーザーをあぶり出したい」という目的に対して検証していたのですが、そもそも「サービスとしてビジネス目的の業者アカウントをどういうユーザーとして定義するのか」という課題が出てきたんです。

この例が「本質的な課題」と言っていいのかは判断が難しいところではありますが、施策実行の判断に関わる、より根本的な課題とは言えそうです。

このようにサービスが抱えている課題に対して、秋葉原ラボのメンバーと一緒にサービス側の課題の本質を探るところから、サービスとともに考えていくのがコーディネーターの仕事の一つだと考えています。そのプロセスの中で、先に手を付けるべき別の課題が現れることもあります。

課題をより明確にした上で、秋葉原ラボのソリューション導入に向けてエンジニアも巻き込みながら進めていく。コーディネーターの仕事は、家を建てる前の「整地」みたいな側面が大きいかもしれないですね。

事業会社における研究開発組織のありかた

ー 開発組織にコーディネーターがいることでどんなメリットが期待できますか?

コミュニケーションの円滑化と、情報の往来と可視化を促進することが一番のメリットだと思います。

事業・サービス側と研究開発組織の間に入り、両者から発生する様々な情報や案件の整理、提供するソリューションの提案、課題に合わせたメンバーのセッティングなどが具体的な業務です。

それ以上に踏み込んで、時にはプロジェクトのマネジメント的な立ち位置で動くこともありますが、なによりも「組織間のコミュニケーションを促進・円滑化し、情報を可視化すること」を意識して動くようにしています。

― 中長期的なスパンの中で取り組んでこそ意義のある研究開発というのも多く存在するようにおもいます。その一方、短期的なスパンで成果を求めるサービスやビジネスの流れの中で、どのように研究開発組織の価値を示していますか?

秋葉原ラボは企業内の研究開発組織なので、サービスの成長に寄与するソリューションを生み出し、その導入によって会社の成長に貢献することは大前提です。

その一方、短期的な成果を求めて「Amebaブログ」や「ABEMA」などそれぞれのサービス固有の課題にだけフォーカスし、そのためだけのシステムを開発・提供し続ける事は、いわゆる「車輪の再開発」のように重複する機能を持ったシステムを不必要に増やしてしまう結果になります。それは結果的に個人に依存してしまうシステムの増加や、後々の管理運用コストの増大につながることもあります。

もちろん、進化の速いメディアサービス事業の特性上、2,3ヶ月など短期スパンでの課題解決が求められるのは要望として当然だと思います。多様なサービスそれぞれで多くの施策が実行される中で、同じようなシステムが必要とされることは多いです。一方で秋葉原ラボは、短期スパンの課題の裏には同時に手を打つべき中長期的なスパンで取り組む必要のある課題も多く存在するのではと考えています。

例えば「データを活用しやすいようなデータ設計やデータマネジメントへの転換」であったり「機械学習モデルを継続的に更新し配置する仕組みの構築と導入」のようなものはそれに当たると思います。

秋葉原ラボが開発している大規模データ処理基盤、機械学習システム基盤や言語処理基盤、分析フレームワークなどは、サービスの課題解決を通して見えてきた中長期の課題を解決するのに不可欠なソリューションだと考えています。弊社における事業やサービスの特性を加味しながら、再利用可能なシステムやフレームワークをサービスへ継続的かつ効率的に提供するための基盤となると思っています。

秋葉原ラボ紹介ページ

ー サービスからのニーズやスピード感と、研究開発組織がその時点で取り組むべきと考える課題の間に、ズレが生じることも少なくないかと思いますが、どのように解消しようとしていますか?


事業のフェーズによって何に優先度高く取り組むかは、コミュニケーションを取りながら事前にサービスと十分にすり合わせるべきです。そのために両者を取り持ち、お互いの意思疎通を円滑にし、情報を整理し、注力すべき開発に専念できるような関係を築いていく役割を置くことは一つの解決策だと思います。その役割をコーディネーターである私が担うことができればと考えています。

対話力が求められますし、正直まだまだ出来ていないと感じているので、日々精進しています(笑)。
 

コーディネーターというキャリアパス

― アカデミックな側面での、秋葉原ラボの役割についてはどう考えていますか

秋葉原ラボにいるエンジニアメンバーは、それぞれがアカデミックな知見や取り組みを常に追っています。各技術領域における最新の技術動向やスタンダード、世界のトップカンファレンスの論文等を追いながら、それを開発に取り入れることも多いです。

組織の誕生から9年を通してサービスを横断しソリューションを提供してきた秋葉原ラボならではの経験と、メンバーのアカデミックな知見に裏打ちされた専門性を最大限に活かし、その時必要な課題解決と同時に「この先、サービス運営や事業戦略上必要になってくるソリューション」を見据えて開発を進められる部分は、大きな価値だと考えています。

企業で働きながらアカデミックな知見を追い、ソリューションに活かし、サービスへ提供する。その結果から得た知見を、再びアカデミックな世界に還元する。

秋葉原ラボのメンバーの中には論文を積極的に書くメンバーもいますし、関連する技術領域のカンファレンスへの協賛も積極的に実施しています。コーディネーターの業務として、こういったカンファレンスへの協賛部分の実務を担ったり、実際に企業としてカンファレンスへ参加することもあります。

企業内の研究開発組織は、アカデミアとビジネスの世界を繋ぎ、知識・知見の循環のような役割を担うべき組織なのではないかと考えています。秋葉原ラボのメンバーと仕事をしていると、みんな自然とそういう視点で業務に取り組んでいるんだな、と近くで見ていて感じます。このような意識・視点のメンバーがいる組織を持っていることは、会社にとっても意義があることだと思います。

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― コーディネーター職につくまでのキャリアパスについて教えてもらえますか。

実は私は文学部卒で、入社時は総合職として採用されました。当時はブログが社会的にとても流行していて、学部時代は「ブログにおける自己表現」といったテーマについて大学で研究したりしていました(笑)なので、漠然とインターネットサービスを仕事にしたいと考えていましたね。入社後は、ど文系にも関わらず、2年半ほどインフラエンジニアとして働きました。当時はAWSができたばかり、GCPは誕生前という時代だったので、データセンターでサーバーのラッキングからOSインストール、ネットワーク設定、ミドルウェア設定・・・そんな感じの業務をしていましたね。物理作業も当時は多かったので、力には自身があります(笑)

その後カスタマーサポートの部門で、先程話にもでた統合監視基盤「Orion」のPMを経験しました。Orionのプロジェクトで秋葉原ラボと一緒に仕事をし助けられた経験が印象に残り、2回の産休・育休を経て秋葉原ラボでコーディネーターの仕事につきました。

― コーディネーターという職種に必要なスキルはなんでしょうか?

短い期間ではありましたがインフラエンジニアとして仕事をした過去の経験や、統合監視基盤システムOrionのPMという経験もあり、システムがどのようにして作られているのかなどについて基礎的で抽象的な理解はあるとおもっています。その点は今の仕事でも活かされています。

とはいえ恥ずかしながら私も、機械学習における様々な手法や分散データベースの詳細な技術仕様のような専門的知識を深く理解できているわけではないです。「Webサービスはどうやって動いているのか」といったシステム開発における基礎知識があり、「このソリューションは何をどうインプットすることで何をどういう形でアウトプットしてくれるのか」を掴み、わかり易い言葉で伝えることができできれば、ある程度コーディネーターの仕事はできると思っています。

なにより重要なのは「聞いて理解する力」と「解釈して伝える力」かもしれません。

私の役割は、メンバーが教えてくれるソリューションの技術的な説明を聞いて把握し、サービスや他事業部など専門外の人たちにも分かるような言葉で伝えられるようにすることだと思っています。もちろん本来であれば技術の詳細まできちんと把握できているほうが圧倒的に良いわけですから、コーディネーター職もエンジニアであれば最高だとは思いますね、興味のあるエンジニアの方はお声がけいただきたい気持ちです(笑)

―コーディネーターとして今後の目標などがあれば教えてください。

社内外問わず「秋葉原ラボ」という名前が「ああ、サイバーエージェントの研究開発組織だよね」と浸透することですかね。私がコーディネーターとして社内でのソリューション導入や、社外への情報発信で最高のサポートができれば、そういう状態が少し実現に近づくのかな、と思っています。
 

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