技術・デザイン

東京藝術大学との「原点回帰プロジェクト」で学生が得たものとは
~ ダイジェスト動画で振り返る ~

今秋、東京藝大とサイバーエージェントは学生クリエイターの「原点回帰」をテーマに、初めての産学連携に取り組みました。それぞれの「『心地よさ』を探求しながら、自分だけの『NEST(巣)』を考える」という課題のもと、事前にアイディアのブレストを行い、半島の無人エリアにて、合宿形式のワークショップ「ZERO POINT CAMP」を実施。そこでの体験をもとに後日大学にて講評会を行いました。
本企画の目的としては「大勢の人に評価される作品ではなく、いかに自らの殻を破り、『普段の発想法から離れる』ことができるか」「なにもないところから新しいコンテンツを探すという不便な体験の場をつくりたい」ことです。周囲の反応ではなく、自分が感じるものをありのままに制作へ反映させることを試みた本プロジェクト。

まずは以下のダイジェスト動画をご覧ください。

ダイジェスト動画

Interview
今回、本プロジェクトの参加学生で、制作物の発表を終えたばかりの藝大生2名にお話を聞きました。

左:後藤 由芽さん(東京藝術大学美術学部デザイン科 3年) 
右:五十嵐 亮太さん(東京藝術大学美術学部デザイン科 修士1年)
左:後藤 由芽さん(東京藝術大学美術学部デザイン科 3年)
右:五十嵐 亮太さん(東京藝術大学美術学部デザイン科 修士1年)

自分の心地よさを追求するために、「思いついたことは全部やってみよう!」

─このプロジェクトに参加したきっかけはなんですか?

後藤さん(以下、敬称略):実は初めはあまりこのワークショップの内容を把握していなくて。無人島ってなかなか行けないので、そこが気になったことがきっかけでした。

五十嵐さん(以下、敬称略):僕はサイバーエージェント社員の庄司さん(QualiArts所属。クリエイティブ責任者)の講義がきっかけです。デザインの授業は大きく2パターンあって、プロダクト系講義は0を1にし、広告系講義は1から10にする話がほとんどです。でも、庄司さんの講義は、0からつくったものをどう広げ、さらに使ってもらった先にどうするかという戦略の話まで、0から10の話が聞けました。今修士1年ですがそんな体験は藝大では初めてで。とても印象に残っていたんです。

「ZERO POINT CAMP」当日はどのように過ごしましたか。
 
後藤:まず島に着いてからは、テントを張ったあとすぐに裸足になって遊んでみました。テーマである「自分の心地よさの探求」をした結果、すぐに靴を履いたんですけどね(笑)。

五十嵐:そのあとに海に行って、水着を持っていなかったけど、5分も悩まずに「飛び込んじゃえ!」と服のまま海に入りましたね。1泊2日しかなかったので思いついたことは全部やってみよう、という感じで思いきりがよかった。その時は迷いがなかったです。今振り返ると、そこまで開放的になれるとは自分でも思っていなかったので驚いています。

後藤:やらないともったいない、と思っていましたね。着替えもないのに後先考えずにズボンのまま海に入っちゃいました。今思えばなんであんなことしたんだろうと思うけれど、そういうことが大切なんだろうなぁ。

五十嵐:海に入った2時間後にはもう近くの山に登っていましたね。そこで鹿の親子を目撃したり、歩き回ったり、絵を描いたり、話をしたり……ハードスケジュールだったけどいろんなことをしたので、一日が長く感じました。そういう時間の使い方は勉強になりましたね。思いきりがついたかな。

後藤:みんな黙々とスケッチしたり、落ち葉や木を拾ったりしていましたよね。遊びでキャンプに来ているのではないので、ひたすら「自分の心地よさ」についてアンテナをたて、思い付くままに何でもやってみました。

五十嵐:その日の夜に発表する予定でしたが、みんなで遊んで、飲んで、火を囲んでいろいろ話をしているうちに「今心地よいと感じているこの時間を優先しよう」と発表はなくなって一日が終わりました。その場の空気や、素直に感じた感情のままにプログラムが進行していました。

一日の中でいろんな体験をしたんですね。なかでも一番印象的だったことはなんですか?
 
後藤:夜に、寝袋を頭からかぶって外で寝たんです。テントの中で寝てもいいんですが、火の横が心地よかったから。「なんかいいね」と言いながらそのまま気づいたら寝てしまいました。

五十嵐:その時見えた星が、人生でいちばん綺麗でしたね。10分おきくらいに流れ星が見えるんです。あれは良かったな。翌朝、みんなでスケッチを見せながら『心地よいと思う場所』を発表したんですが、僕は迷わずそこで見た「景色」をみんなに伝えました。

後藤:私は前夜に焚火のそばで感じた「風が不規則に吹く感じ」について発表しました。

「自由」を楽しむ。学生の今しかできないことをしたい

社員とのかかわりの中でサイバーエージェントにはどのようなイメージを持ちましたか?

後藤:「ZERO POINT CAMP」当日も感じましたが、遊び心があるなと。私たち大学生と同じ目線で、みなさん少年みたいに純粋に目の前のことを楽しもうとしてる姿が印象的でした。

五十嵐:そうですね。最初のきっかけとなった庄司さんの講義もそうですが、他の企業からいらっしゃる方々と比べても若いですね。30代で藝大で講義をするなんて他にないですよ。
あとは、今回初めて社員の方とちゃんと話したんですが、思っていたより自由な印象を受けて驚きました。社会人ってもっと堅くて、黒髪で、というイメージがあったので(笑)。
個人での制作活動を頑張っている方もいて、感覚や振る舞いが自由で、それが「いいな」と思いましたし、「それでいいんだ」となんだか背中を押されました。

今回のプロジェクトをはじめ、さまざまな産学連携や講座を経て、今、どういう制作をしていきたいですか。
 
五十嵐:僕は修士1年ですが、美大生がやることと会社に入ってからやることは違うだろう、というのは正直感じています。なのであえて今は、学生だからできることを制作したいですね。

後藤:そうですね。学生のうちしかできないような、突拍子もないことでもいいから真面目に取り組むのも必要だなと思います。私は今まさに就活中で、制作をしていても「これが仕事になった時にゴーサインが出るだろうか」とか「どういう効果があるのか」ばかり考えてしまって、色んな制約の中で作品がつまらなくなってくる。でも、企業にどう見られるかを気にするのをやめて、自分の感覚を大切にしないと。自分の価値が下がる気がしています。それは今回の「ZERO POINT CAMP」の戒めですね。もうちょっと楽しく生きていきたいなと思っています。

「もっと自由な発想を」この産学連携で目指したもの

松下 計(マツシタ ケイ)  
東京藝術大学美術学部教授
松下 計(マツシタ ケイ)
東京藝術大学美術学部教授

今回のプロジェクトでの目的はどのようなものだったのでしょうか?

普段の美大の課題だと、プロがプロを目指している人に教えるという構図なので、必然的に作品のクオリティばかり求めてしまいます。答えが横並びに並んで、ただただクオリティとの照合によって評価する。このことに以前から危機感をもっていました。もっと入り口の部分で自由な発想や、それができる環境を我々が作らなくてはいけない。そこに今回は照準を当てました。その意味では成果があったと思っています。
正直、まだ学生のなかでは変化の実感はないかもしれません。そのために今後の我々の責務として、この取組みが一体なんだったのか、フォローして振り返る必要があると思っています。

今後この産学連携プロジェクトでの成果をもって、何を期待しますか?

今回の産学連携の社会的価値としては、社会がどんどんコモディディに向かっていることに対して、この取り組みがひとつの仕掛け、社会提案になっていることだと思っています。このフレームを流布させることで、新しいことを仕掛けなくてはいけない、と気付きを与える。
今後日本も、教育と就労を繰り返していく、リカレント教育を進めていかなければならないなか、個人的思考とマーケティング思考を行き来出来る、自由さと身軽さを身につけないと本当のイノベーションは起こせない。
今回のこの取り組みが、ひとつの「きっかけ」になれたのではないでしょうか。

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