技術・デザイン

多摩美術大学とサイバーエージェントで
「次世代インターネットテレビ」について考え続けた120日間

当社のクリエイター職では初の試みとなる多摩美術大学との産学連携。多くのデザイナーを輩出している多摩美術大学の永原ゼミと連携し「次世代インターネットテレビの研究」 をテーマに約4か月間で制作に臨みました。OBOG社員による複数回の講評を経て、最終日には代表取締役 藤田による講評会を行いました。

今回の企画立案者で、多摩美術大学の卒業生でもある山幡、湖中に企画意図や、学生に伝えたかった想いを聞きました。

Profile

  • 山幡 大祐(やまはた だいすけ)
    2012年多摩美術大学情報デザイン学科を卒業し、サイバーエージェントに新卒入社。
    入社以来、7年間メディアサービスの開発に従事し、「Ameba」アプリや「755」のプロダクトリニューアルを担当。現在は競輪投票サービス「WinTicket」のUIデザインを担当し、新規事業開発チームにて複数プロダクトのデザイン監修も務める。

  • 湖中美緒(こなか みお)
    2017年多摩美術大学情報デザイン学科を卒業し、サイバーエージェントに新卒入社。
    入社後より女性系メディアのデザインを担当し、現在はコスメのクチコミサービス「Lulucos by.S」にて従事。

多摩美OBOG社員に共通すること?

ー サイバーエージェントには毎年、何人も多摩美術大学の卒業生が入社しています。仕事をしていて「多摩美術大学の卒業生っぽいなぁ」と感じる事はありますか?

山幡:どの大学の卒業生もそれぞれ特徴があるものですが、例えば私達が所属していた「永原ゼミ」の卒業生だと「ずっと喋っている」かもですね(笑)。

湖中:それは感じます(笑)。

山幡:永原ゼミは、制作過程であらゆる方向性から考えることを重視していました。なので学生はおのずと周囲に自分の思考をアウトプットする習慣が身に付きますし、自分で考えて結論を出すので納得感をもっていました。

制作課題を前に「これってこうなんじゃないかなぁ・・・」「あーっ!あれってもしかしてこうなんじゃないか?」とずっと喋っているんですね。そのアウトプット習慣はサイバーエージェントに入社してからもずっと続いているみたいなんですよね。

トレーナーとして湖中を見ていた時もそうでしたし、湖中の上の世代も下の世代もそうでした。もちろん自分もですが(笑)。

湖中:私は入社1年目の時に、デザイナーの先輩に制作したデザインの相談をしていた際、無意識のうちに自分の考えをずっと喋っていたみたいで「湖中さん、そこまで話さなくていいよ。」って笑顔で言われました(笑)。

山幡:今回、多摩美術大学と産学連携プロジェクトを組み、約4ヶ月にわたって学生の課題をメンターとしてフォローしてきました。学生時代の経験を踏まえ、ここで意識していたのは、学生のそばにずっと一緒に寄り添って話を聞く、ということです。学生にアドバイスしながらデザインを教えるというよりも、傾聴することに徹して、道に迷ったらそっと別の可能性を示しながら、学生に考える余白を与えることにしました。

実はサイバーエージェントに入社した時も、会社の雰囲気や先輩の姿勢の中に似たようなカルチャーを感じました。

ー カルチャーが似ているとは具体的にどんな点ですか?

湖中:例えば「否定しない」「まずは自由にやらせる」「なぜ?を問い続ける」「課題に対してゼロからアプローチする」など。サイバーエージェントではあたりまえのカルチャーですが、永原ゼミで大事にしていたコンセプトとすごく似ています。

山幡:似てますよね。永原先生は学生の「これをやりたい」という気持ちを否定しない。サイバーエージェントも若手の「これにチャレンジしたい」を否定しない。

やりたいことを言葉に出して主張しないと、アドバイスが得られないしチャンスも訪れない。制作過程の思考プロセスをさらけ出しながら、具体的なアウトプットとして出していく必要がある。永原ゼミの場合は作品、サイバーエージェントの場合はプロダクトの課題にデザインでどう解決するかを自ら提案するなど。どちらも自分で考え決断しているので、責任を持つことができます。

湖中:多摩美の卒業生は、サービスの上流から入ってデザインで課題解決するのに向いているかもしれないですね。

学生だからこそ、自由に考えさせることに徹した。

ー 今回、多摩美術大学との産学連携でどんなことを実現したいと思っていましたか?

山幡:ひとつは自分の原体験です。多摩美術大学の学生だった頃、ゼミに卒業生の社員がきて、Web企業でのデザイナーの働き方などを教えてくれる機会がありました。学生の時は社会人との接点があまりないので、わざわざ母校に足を運んで後輩に話をしてくれたことが嬉しかったです。自分も、卒業した大学に恩返ししたいという気持ちがあったことは確かです。

それに母校と産学連携するからには、多摩美が大切にしていることを踏襲しつつ、サイバーエージェントで学んだ実務経験やノウハウをのせて、大学生時代に得難い体験を感じてもらえたらと思いました。
社会人が学生にいくつかアドバイスして「最終発表観に来るから、あとはがんばって」とかではなく、とことん寄り添って課題に一緒に向き合いたいと思いましたね。

母校とサイバーエージェントの文化が似ている部分があるので、卒業生である私自身が「学生の時に企業の課題に取り組む」とどういうものが作れたんだろう、という純粋な好奇心もありました。

湖中:それをやるために課題もすごく悩みましたね。
企業が出した課題に対して、学生のアウトプットが出てきた時、どうしても「実現可能性」ばかりに目がいきがちですが、そうならないようにするためには、どんな課題が良いのかはみなで議論しましたね。

山幡:そう。従来の型にハマらずに自由に発想できるような、課題としての幅広さを考えていました。自由にやることが大事なので。

ー なぜ自由にやることが大事なんですか?

湖中:サイバーエージェントは若手に裁量権を与えて自由闊達に挑戦できる環境を用意しています。ただ、仕事でプロダクト制作に関わっている限り「実現可能性」は常に視野にいれておく必要はあると思います。

山幡:「仕事だと自由にできない」というよりも、より「実現可能性」や「分かりやすさ」といった軸が重視されると言えるかもしれないですね。プロダクト開発では経営者, プロデューサー, エンジニア, デザイナー, 法務や経営管理など様々な職種やステークホルダーが関わっていますし、なによりユーザーがいる。ユーザーの環境や端末ごとにデザインの表示も変わるし、そういった様々な要因や制約を調整しながら最適なデザインをするのが、デザイナーの仕事です。学生時代の作品が「自由な表現」だとしたら、仕事は「課題解決」という点が大きな違いかもしれません。

ただ、課題に対して自分のアイデアだけで自由に作れるのは学生ならではの特権なんです。それを大事にしながら、最大限創意工夫できる課題を探した結果、今回の「次世代インターネットテレビの研究」になりました。

湖中:確かに。プロダクトの課題はデザインで解決することもできますが、解決するためのアイデアの源泉は自由な発想から始まりますよね。

山幡:プロダクトに対してデザインで解決策を模索するとして、そのソリューションを見つけるためにもアイデアの風呂敷を広げられることは大切です。

仕事で大きな未来を語るためには、どうしても今実現できることも必要となる。そこで実現可能性やコストなど、制約を考えちゃうんですよね。「このデザインを実装するためにはこんな技術が必要だけど、それはまだ実現性は低い。だからこっちのデザインにしよう」みたいな、妙な落とし所を探ってしまう。

しかし未来を描き続けるためには、アイディアを枯渇させないことが大事。もっともっと先の未来を見据えたアイデアを出せる力が必要なんです。

学生なら制約や要因にとらわれていないぶん、自由な発想で風呂敷をひろげられる。もちろん、実現可能性やリアリティを考えているに越したことはないですよ。でも、そもそもアイデアを広げるための面積がないと、風呂敷を広げることすらできない。

そういうアイデアを広げるための面積のとりかたは、大学で学んだ気がします。私の同級生とかは、とんでもないものをつくっていましたし(笑)。

デザイナーの成長にとって大事な視点

湖中:そういう点だと、最終成果発表はどれも見物でしたよね。放送された番組の最終アウトプットが冊子となって手元に届くサービスや、提示された紙のポスターとインターネット番組をシームレスにつなげたり、視聴者の熱気をリアルタイムで撮影スタジオと共有できるプロトタイプなど。みなそれぞれ特徴がでていました。
あとは「見るだけで病気が治るテレビ」とかおもしろかったですね。

山幡:おもしろかったです。実現可能性で言うと現時点ではゼロに近いものもあった。でも学生ならではの発想は本質をついてますよね。

ー 最終日の講評会に社長の藤田を呼んだ意図はなんですか?

山幡:学生に経営目線でデザインを見た時、こういう見え方になるんだという事を知ってほしかったからです。藤田は「AbemaTV」の総合プロデューサーも兼任しています。普段どんなフィードバックをデザイナーにするのか、自分の作品で聴けるのは学生にとって、とても貴重な経験だと思いました。

藤田のデザイン講評って、社内でも直接見られる人はごく限られていますし、すごいところは、常にユーザー目線なところです。

今回の講評でどんなフィードバックをするのか、藤田に事前に相談することはしませんでしたが、藤田なら絶対に「これはビジネス的に実現しないよ」とは言わないと分かっていました。

湖中:そうですね。
学生も「最終日に藤田社長にプレゼンできる」という目的ができたのでテンションが上がっていましたよね。

山幡:デザインを経営者が見た時の視点を知ることは、デザイナーの成長とって大事になってくるんですよね。今回の経験が後輩学生の皆さんにとって、何かしらの形で役立っていければ嬉しいです。

産学の枠組みを超えた、今後の期待

  • 永原康史
    多摩美術大学情報デザイン学科教授

    永原ゼミについて
    メディアデザインを専門領域とし、「伝え方の発明」をテーマにメディア横断的なデザインを推進。そこから新たに生まれるコミュニケーションを開拓し、デザインをそのための実験と捉えていることが特徴。


ー 今回の産学連携の取組みを行なって、前後での学生の変化はどうでしたか?

専門課程に入って最初の(3年生前期の)課題としては難しく、戸惑いがあったようです。また、テレビ離れの世代にとってインターネットテレビというテーマそのものに懐疑的な学生が多かったのも事実です。共同研究なので否定しちゃだめなんですよね?と聞いてくる学生もいました。

しかし、中間講評会でサイバーエージェントのみなさんからの忌憚のないご意見をいただいて、自由にやってもいいんだと気づき、かなりアプローチが変ってきたと思います。テーマを変える学生はあまりいなかったと思いますが、掘り下げ方が変わった感じでしょうか。中間講評後も、メールなどで学生のサポートを続けていただいたことはありがたかったですね。

オープンキャンパスの公開講評会のプレゼンでは、いろんな人から意見をいただくことができて(そして、ほかの人のプレゼンも聞いて)また一つ階段を上った感じでした。作品は一旦そこで仕上がっているのですが、2週間後のAbema Towersでの最終発表会では、ほとんど全員がブラッシュアップしてきたことが印象的でした。最後の懇親会はみんな楽しそうでした。

ー 今後の産学連携を通じて、ゼミでどんなことが実現できそうでしょうか?

私はこれまで、産学共同研究にはあまり力を入れてきませんでした。それは、企業でやるべきことと大学でやるべきことは違っていて、大学は企業に先行するさまざまな研究事例をつくって行くべきだと考えていたからです。
しかし、企業にとっても未来が不透明な状況が続いているせいか、私たちが標榜している実験的なデザインを評価していただけるところが増えてきました。
これからは、産学の枠組みを超えて、実験を社会実装できる仕組みを一緒につくっていけるような共同研究ができればと考えています。

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