起業家藤田晋に聞きたい
3つのテーマ
~学生版STARTUP CHALLENGEイベントレポート~

2019年6月22日、新規事業プランコンテスト「学生版STARTUP CHALLENGE」の冒頭にて、当社代表の藤田と子会社の社長を務める3名による特別トークセッションを行いました。
「起業について」「経営者という仕事について」「サイバーエージェントの未来について」という3つのテーマに沿って子会社社長が藤田に対して切り込んだパネルディスカッション。その内容をレポートします。
Profile
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藤田晋
1997年4月 (株)インテリジェンス(現パーソルキャリア(株))入社
1998年3月 当社設立、代表取締役社長就任(現任)
2015年4月 (株)AbemaTV代表取締役就任(現任)
2015年4月 (株)AbemaNews代表取締役就任(現任) -
小野 哲太郎
AWA株式会社 代表取締役社長
2007年、新卒でサイバーエージェントに入社。
社長アシスタント、サービスプロデューサー、藤田ファンド運営、定額制音楽配信サービス「AWA」のサービス立ち上げを経験。 現在は、AWA株式会社の代表取締役社長を務めている。 -
中田 大樹
株式会社CyberBull 代表取締役社長
2011年、新卒でサイバーエージェントに入社。インターネット広告事業部門のアカウントプランナーとして、おもに関西のWeb広告市場を開拓。営業局長を経て、2015年4月に株式会社CyberBullを設立、代表取締役社長に就任。2016年、執行役員に就任。
「起業して成功率を上げるためには使える資産を全て使うべき」
~起業について~
中田:みなさんこんにちは。今日はいつも藤田から切り込まれている私たちが、逆に藤田に切り込み、社長の頭の中を丸裸にしていこうというコンセプトでお送りします。
藤田:いつもそんなに切り込んでないでしょう(笑)。基本的には現場に全て任せる方針でやっています。
中田:たしかにそうですね(笑)。今回は3つのテーマをご用意しています。まずは1つ目「起業について」です。社長はいつから起業を考え始めたんですか?
藤田:高校時代はミュージシャンになりたいと思っていたんですけど、歌が上手くなかったんですよ。そこで、「将来レコード会社をつくりそこで友人をデビューさせてあげたい」と思ったことが”起業"という想いが芽生えた瞬間でした。大学時代は広告代理店でインターンシップをしていたのですが、そこで若い経営者を目の当たりにして、自分でも出来るのではないかと思ったことがより具体化したきっかけです。
インターンシップをしていた会社は当時の自分よりも10歳ほど年上の方が起業した会社で、規模も4~5人くらいのベンチャー企業でした。起業をしたい人ってリアリティを感じている人が多いですよね。よく親が経営者なので自分もなりたいという人がいるけれど、それは”起業”ということが身近なことで、リアルに感じているから。大企業で社長を肉眼で見たことがないという会社だと、”社長"というものが恐れ多いものになってしまいリアリティがなくなってしまう。そのため、大学時代にリアリティを感じることができたインターンシップは一番価値があったと思っています。

小野:今日来ている学生は起業に対して興味があったり、既にしている学生も多いとのことなのですが、起業をする際のドメインはどのように決めたんですか?
藤田:24歳で起業をしたので非常に短い期間なんですが、20歳から社会人のように毎日出社をして働いていました。インターンシップで広告営業をしていて、新卒で入社をしたインテリジェンスでインターネット広告の営業を経験しました。そうしたちょっとした経験の延長戦でインターネットや広告という分野を選びました。新しく事業をする際は、多少精通しているとか経験した分野じゃないと難しいと思います。
小野:最初はレコード会社を作るという目標があったとのことですが、やりたいことよりもできることから始めた方がいいと思ったんですか?

藤田:その頃には忘れていたんですよね。会社を設立してしばらくして思い出したんです。「そうだ、レコード会社を創るんだった」と(笑)。
(会場笑)
中田:現在、学生でも起業がしやすい時代なので、”サイバーエージェントで子会社社長になる”ということが昔ほどの価値を感じないと考えている学生もいると思うんですけど、そこに対してはどう思いますか?
藤田:起業は当たる確率が低く、難易度が非常に高いです。起業をして成功する確率を聞かれたら1%未満と答えるかもしれない。そのため少しでも成功確率を上げるためには使える資産を全て使うべきだと考えています。コネでもいいし、就職した会社の資産でもいいと思うんですけど、そうしてでも当たる確率を上げないと成功しない世界です。そういった意味ではサイバーエージェントのグループで始めるという選択は、確率を上げると同時に手早くキャリアを積むことができるのがメリットです。キャリアというのはとても大切で、20代で社長や事業を立ち上げる経験をしてしまえば、その後のキャリアで困ることはないと思います。経験値を得るという観点からも、その価値を提供できると思います。
「80%勝てる案件があるのであれば大きく勝負するべき」
~経営者という仕事について~

中田:私たちから見ても社長は勝負に強いイメージがあります。勝負強いのは昔からなんですか?
藤田:勝つ確率が高いところで勝負しているということなんですよね。勝てるか勝てないかわからない五分五分なものは単なる賭けなので、そういう勝負はしていません。今ちょうど社内で各グループ会社の戦略を聞く「決算戦略説明会」というものを行っているのですが、その中でも「これは勝てそうだ」と思えるような戦略があります。そういったものには多額の投資をして伸ばすべきなんです。
例えば成功する確率が80%あり、失敗する確率が20%だとするじゃないですか。20%の失敗を考えると悲惨なことになるので、みんな怖くて賭けられないんです。ただ、80%勝てる案件があるのであれば、当然大きく勝負するべきです。それを当たり前のようにやっていたら「勝負強いですね」と言われるようになりました。一見大きく賭けているように見えるのは、勝つ確率が高いもので勝負をしているということです。
小野:そういう意味では経営のセンスや才能というのは”思い切り”ということなんですか?
藤田:期待値は勉強したり冷静に計算したらできるものなんですけど、それだけで会社がうまくいくわけではありません。元々の勘が良かったり、センスがいい人がそういうものを身に着けるとさらに成功する確率が上がるよ、ということです。
中田:「決算戦略説明会」で実際に子会社の戦略を聞いていかがでしたか?

藤田:現場主義なので今まで本当に子会社の経営に口を出してきていないので、今回初めての取り組みです。私はサイバーエージェントの代表として3ヶ月に1度決算の説明をしていますが、グループ会社だとそういう機会がないので、それぞれの会社がどのような戦略やビジョンを描いているのかを説明してもらおうと思い、始めました。そうすると話すのが上手い人、そうじゃない人といるのですが、戦略を語るのが上手い人が経営が上手いかと言うとそうとは限らないですよね。難しいですけど。これ大丈夫ですか?観客を差し置いて自分が聞きたいことでしょ(笑)
(会場笑)
小野:代表や事業責任者をしていると、しんどいと思う人も多いと思います。社長からそのような雰囲気を感じたことがないのですが、そのような感情になることはあるんですか?
藤田:社長が何かに影響されて、いきなり「今日はばりばり働くぞ!」というテンションで会社に来ると社員はみんな迷惑じゃないですか(笑)。逆もまた然りで、困難や苦悩な顔で会社にいるとそれはそれで迷惑で。経営というのは必ず長期戦になるので、ここぞという勝負所でしっかりと勝負できるように、過度に楽観や悲観をせずに、(テンションの)アップダウンをさせないようにしています。
小野:アップダウンしないようにするコツはあるんですか?
藤田:そんなものないよ(笑)
“すごい会社を創る”
~サイバーエージェントの未来について~
中田:サイバーエージェントを今後どのようにしていきたいと考えていますか?
藤田:会社のビジョンは「21世紀を代表する会社を創る」で、最優先事項に置いているのが”すごい会社を創る”ということです。すごい会社をみんなで創っていくために、プロダクトを開発したり、そこにふさわしい優秀な人材を採用したりしている。ただ、具体的に「どういう会社にしたい」ということは言わないようにしているんです。というのも、私は社長というポジションにキャスティングされているだけであって、その社長の考えで決めつけてしまうと、事業内容に制約をつけすぎてしまうので、あまり具体的に言い過ぎないようにしています。20世紀にHONDAのような世界的に知られて影響力のある会社ができたように、サイバーエージェントもそういう会社を目指したいと思っています。

中田:なるほど。20年間でフェーズによって欲しい人材像が変わってきていると思うのですが、この先も変わっていくんですか?
藤田:事業内容が多岐にわたるので、いろんなタイプの人が入社してきてくれていますよね。ここ数年の傾向で言うと、「クリエイティブで勝負する。」というMission Statementを掲げていることもあり、優秀なクリエイターが増え、クリエイティブでも勝負できることが増えてきました。しっかりと世界にも通用するプロダクトを創り、その土台が整ったらグローバル志向の人材が増えてくるフェーズに入ってくるのかなとは思っています。
中田:「AbemaTV」でも海外からの視聴ができるようなったりと、グローバル展開してきていますしね。別事業でもグローバル化は考えているんですか?
藤田:グローバルのことはよく聞かれますが、もちろん考えています。ただ簡単ではないと常々思っていますね。
ー ここからは、会場からの質問を抜粋してお伝えします。
- 事業をこれから始める人は、まずは成果が一番出せるところから始める方がいいのでしょうか?
藤田:事業もキャリアも「わらしべ長者」のように、持っている藁から一つひとつ交換をして価値を上げていかなければいけないと思います。それは一気にできるものではないですよね。私は24歳で起業をして、26歳で上場をしているため藁から一気に金塊に変化できたと思われることが多いですが、ものすごい高速でわらしべ交換していました(笑)。
- 新規事業を考える際に大切なことは何ですか?
藤田:市場が伸びるか伸びないかを見極めるのは大切ですよね。実際の市場性はリアリストとしてしっかり見ておかなければならないのですが、一方でテーマ性のようなものは新規事業の世界や投資の世界では必ずあるんですよね。分かりやすく言うと今の時代は「AI」です。まだ事業として小さくても、”AI”事業として伸びそうであれば、現在は多額の投資を受けられます。それによってメディアに注目され、人が集まり、会社を伸ばすチャンスになります。事業を選ぶ時に、ものすごいチャンスがある事業と誰も手掛けていない事業があった時に、後者を選ぶと話題にはなりますが普及するのに時間がかかります。そのような見極めは大切ですよね。
- この人は伸びるなと感じる人の特徴はありますか?
藤田:よく言うのは「言うことは大きく、やることは手堅い人」。理想を目指すためには現実の厳しさを直視して一つひとつ乗り越えていかなければならないと思います。理想だけを掲げて目を瞑っているのは良くないです。
- 参考にしている会社はありますか?
藤田:会社によって、大切にしている価値観はそれぞれ異なると思いますが、サイバーエージェントは優秀な人材を採用してその人の能力を引き出すことで全体の業績を伸ばすという会社なので、そういった意味ではリクルートさんの社風は近いですよね。我々の先輩格として見習うところがたくさんあるなと感じています。
当日は、新規事業プランコンテストや新規事業セミナー、キャリアセミナーを開催し、延べ400名近い学生にご来場いただきました。今後も大型イベントを開催いたしますので、奮ってご参加ください。
時代に流されないエンジニアでいるための
「本質的な課題解決と実用主義的な視点」

サイバーエージェントには「ABEMA」や「Ameba」など自社メディアから得たデータを活用し、大規模データ解析基盤「Patriot」の構築・運用や、自然言語処理、情報推薦、マルチメディア解析、データ分析などを担当する専門組織「秋葉原ラボ」が存在します。今回はこの「秋葉原ラボ」の設立者であり室長を務める福田一郎に本組織の取り組みや、これからのAI/ML人材に求められることを聞いてみました。
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