技術・デザイン

「AbemaTV」のログから視聴者の熱狂が伝わってくる

データサイエンティストが目指す新しい視聴体験

インターネットテレビ局「AbemaTV」は、今年の4月に3周年を迎え4000万ダウンロードを突破しました。スマートテレビの普及率も上昇し、この先より多くの世代の人に利用いただけるサービスを目指すべくこの度「AbemaTV データテクノロジーズ」を設立しました。データ分析を通じて「AbemaTV」を変えるくらいのチャレンジをしたい、と語る室長の阿部に、3年間蓄積されたログデータから見えること、組織としてチャレンジしたいことについて語ってもらいました。

Profile

  • 阿部 昌利 (アベ マサトシ)
    AbemaTV データテクノロジーズ 室長。
    大学院で心理統計学を学んだ後、金融サービス会社やソーシャルゲーム会社でデータ分析に従事。2018年1月サイバーエージェント入社後、「AbemaTV」に異動し、広告本部データサイエンスグループのマネージャーを経て現職。
    「AbemaTV」の番組は分析を通して気になった番組を観るスタイル。最近は「名車再生!クラシックカー・ディーラーズ」の、登場人物の車への愛が溢れているポイントがお気に入り。

経営陣がデータ分析で「AbemaTV」をドラスティックに変えようとしている。

ー 「AbemaTV」が開局して4年。蓄積されたログデータから何が見えてきますか?

阿部:3年分のログデータが蓄積されているので、なかなか面白いですよ。視聴データで特徴的なのは、視聴者の熱狂がデータとして伝わってくる点です。例えば瞬間的にコメントが盛り上がるシーンだったり、ある番組で視聴数が跳ね上がった際、どんな層が長時間視聴していたのかなど。

また、チャンネルの切替(ザッピング)が発生する際にどのように番組を遷移するか、最後まで見続けてもらえているCMにはどんな傾向があるのかなども、ログデータを通じて伝わってきます。

「AbemaTV」内では「色のついた番組」と呼んだりしますが、200億円を投資して尖ったコンテンツを制作, 調達しているからこそ生まれる特定の視聴者層の動きや熱は確実にあります。広告で言えば、2018年7月にCMのターゲティング配信を導入して以降、データ分析を活用した次の一手が、更に打てるようになってきました。

ー いまデータサイエンティスト組織に何が求められていますか?

データを活用して「AbemaTV」を変えるチャレンジをしていくことが求められています。先日この組織新設にあたって常務取締役でメディア管轄の小池に具体的な進め方を相談しに行きました。その際、私はデータサイエンティスト目線の手堅い施策の提案をしたのですが、小池からは「ちっさっ!」と一蹴されました(笑)。

ー どんな提案だったんですか?

阿部:「こういうテーマにとりくみ、具体的にこんな分析をして、目標達成のためにクリティカルなポイントを特定して、改善していこうと思います」みたいな、言わば手段の提案ですね。一般的なアプローチではあるのですが、それに対して小池は「小さい」と(笑)。

その後、小池が私に話してくれたのは

「自由にやっていいよ。だから、細かい改善とかじゃなくて、もっと大きい事業課題に対して仮説と検証を繰り返していけるような、そういう組織を作ってほしいんだ」

といった言葉でした。

「自由にやっていい、それくらい大きな裁量権を渡すから、データで「AbemaTV」を変えるくらいのチャレンジをしてほしい」というメッセージに、経営陣がデータ分析で「AbemaTV」をドラスティックに変えようとしている熱意を感じました。

データサイエンスがもたらす「AbemaTV」の未来像

ー 事業課題やチャレンジというのは具体的に何ですか?

阿部:例えばオンデマンドエンタテイメント「Abemaビデオ」の視聴数を増やしたいというテーマがあるとします。

「AbemaTV」では恋愛リアリティーショーが人気コンテンツの1つですが、データ分析を進めていくと、リニア放送が終わった瞬間に「Abemaビデオ」で視聴し直す視聴者が一定数いることがわかります。

また「Abemaビデオ」で追っかけ再生(※放送中の番組を初めから視聴することができる機能)する視聴者が、どんなタイミングで早送りをするのか、倍速再生する割合は1話の中でどのくらいの割合なのか。そして倍速から等速にもどすのはどんなシーンなのかが見えてきます。

つまり視聴者がどんな時間帯にどんな再生スタイルで視聴し、どんな時に熱狂するのかが見えてくる。そこから導き出せる仮説は、これまで地上波テレビでは常識だったやりかたと、全く別のアプローチになるかもしれない。

例えば、地上波では21時~23時がドラマの放送時間としては主流ですが、スマホ視聴の割合が多い「AbemaTV」では、何曜日の何時がリニアで放映するには最も効果が高いとか。「Abemaビデオ」で番組宣伝動画を作るとしたら、どんなシーンをピックアップすれば、会員数が増えるのかなど。

蓄積された視聴ログは、事業課題に対するたくさんの仮説がうまれる源泉にもなり得ます。

ー しかし、動画配信の視聴分析やレコメンドは、他社動画サービスでもやっています。「AbemaTV」ならではの特徴はなんですか?

阿部:例えば、海外のビデオ・オン・デマンドサービスで主流なのは、視聴者の行動を分析し、いかに視聴者に寄り添った視聴体験を提供できるかという点です。

レコメンドがどこまでも強化され、視聴者ひとりひとりのトップ画像に並んでいるコンテンツが細分化されていくような流れです。

もちろん「AbemaTV」にもそういったレコメンド要素はあるのですが、やっぱり「AbemaTV」はインターネットテレビ局と謳っています。

テレビって視聴者の観たい番組を提供する面もありますが、それ以上に共通の記憶をつくる、思い出をつくる部分が強いメディアでもあると思います。

レコメンドを強化し続け、視聴者ひとりひとりにパーソナライズされた番組を提供することもそうですが、、例えばこの時間帯に10代の視聴者に観に来てもらうとか、毎週この時間の恋愛リアリティショーでドキドキして盛り上がってもらおうとか、そういったみんなで共感する仕組みを作るのが「AbemaTV」の目指している独自路線で、そのためにデータ分析で見えてくるファクトと、そこから導き出せる新しい仮説と提案があるはずなんです。

ー ではこれからデータサイエンス組織ができ、人が増えたとして、どんなことが実現可能になってくるのですか?

阿部:動画解析技術を用いて、視聴体験を高めるような番組素材を提供していきたいです。

例えば、サッカーなどのスポーツ番組は、視聴し続けないと勝敗の情勢ってわかりづらかったりします。0 対 0の勝負でも、シュートを10本打っているチームの0点と、シュートを1本も打てていないチームの0点では、勝負の文脈も違ってきます。

ただ、シュートの数もチームによって文脈が異なり、カウンター重視のチームのシュート数0本は、逆に視聴者をドキドキさせるかもしれません。

これまでテレビのスポーツ観戦では、長時間視聴していないと把握できなかった試合の流れや、ファンとして試合を観続けてこないとわからなかったチームの癖などが、「AbemaTV」ではデータに基づいた視聴体験を提供することができるかもしれません。

人の手による運用では膨大なコストがかかりますが、データ分析基盤を保有する「AbemaTV」であれば、データに基づいた客観的な分析を、自動で毎試合提供することもいずれ可能になります。

それこそ「このチームは後半何分で強烈なカウンターを狙いに来る傾向があるので、あと何分が見どころ」みたいな新しいアプローチを視聴者に見せることもできます。そうしたコンテンツの競争力を高めるところに、データ分析を活用できるようにしていきたいです。

こんなデータサイエンティストと一緒に働きたい

ー 「AbemaTV」の分析チームはどんな人が楽しく働けますか?

「AbemaTV」は独自路線をたどりながらマスメディアを目指しています。良い意味で正解がないんです。前例がなく、世界的な先行者もないので、これをやったら勝てるというセオリーがわからない。

だからこそ、課題を探り、議論し、仮説をたてて、検証するのが好きな人にとっては、とても刺激的な仕事になると思います。

一般的なデータサイエンティスト組織の立ち上げの場合、成功確率の高いプロジェクトをスモールスタートで始めて、少しずつ社内の信頼を勝ち得て、扱うテーマを段々大きくしていくというプロセスを歩むことが多いのですが、前述の小池に「ちっさっ!」と言われたように、大きな事業成果、ホームランを狙いに行きたいと思っています。

「AbemaTV」が名実ともにマスメディアとなったとき、その立役者と認められるような組織を目指します。

今のフェーズでは「こういうログデータからこういった仮説を導きだせるので、ちょっとチャレンジングだけどこんな施策をうってみて、その結果を基に更に分析して事業目標を達成していきたい」といった人が向いています。

あと、我々のチームは共有を大事にします。

例えば、毎日30分から1時間、全員で共有会をしていますが2つの目的があります。

1つ目は他の人の分析を追体験できるようにすること。分析って自分が結構手を動かさなくても、ほかの人がどういうアプローチでやっていったか、どういう結果を見てどうしていったかというのを見ていると、自分でやらなくても分析の力ってつくんですね。そうすると、やっぱりチームでやることで何倍にもその人の引き出しって広がっていくんです。

もう1点は、そういう議論をしたとき、より良い仮説が生れやすくなります。一見、毎日1時間とかやるって非効率に思われるかもしれないんですけれども、分析はアイディア勝負の側面も大きいので、そこはこだわってやりますね。

「AbemaTV」だと新し過ぎて何が正解かわからないから、仮説とかもみんなで話さないと不安になるんですよね。そういう議論をもっといろんな人たちでやりたいです。

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