Interview

予定調和を壊せ!
君たちがすべきこと

今年、創立20周年を迎えたサイバーエージェント。この20年間、たくさんの方々のお力を借りて、試行錯誤しながら事業拡大をしてきました。今回のコンテンツでは、日頃よりお付き合いのある社外の方々に、創業当時の秘話や今後のサイバーエージェントに期待することまで余すことなく語っていただきます。第六弾は、作詞家  秋元 康氏です。
※「CyberAgent20周年誌」より転載

Profile

  • 秋元 康 (あきもと・やすし)
    作詞家

    高校時代から放送作家として頭角を現す。1983年以降、作詞家として美空ひばり『川の流れのように』をはじめ、AKB48『恋するフォーチュンクッキー』などヒット曲多数。AKB48グループ、乃木坂46、欅坂46の総合プロデューサーも務め、TV、映画、CM、ゲーム、マンガなど活動ジャンルは多岐にわたる。東京藝術大学客員教授。

「武器」を手に差別化を図る

サイバーエージェントという組織や社員に対する印象は、やはり「自由さ」です。社員それぞれに責任や権限を与え、それを受けて社員も自発的に行動しているという印象があります。
ケネディ元米大統領の就任演説に、「国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何ができるかを考えようではありませんか」というくだりがあります。サイバーエージェント社員の一人一人も、サイバーエージェントをこうしたいんだとか、あるいは自分がこの会社を使ってこうやりたいんだということを具現化しようとしていると感じます。
その中で大事なのは、自分にとっての「武器」は何かをきちんと認識して、フォーカスする、つまり差別化を図ることではないでしょうか。

振り返ると、子ども時代から「ほかの人とは違うこと」を考えていたような気がします。例えば休み時間、校庭でみんながドッジボールを楽しんでいるとします。そんなとき、僕は校庭の片隅にある鉄棒で、乗り遅れた連中を集めていかに面白い遊びができるかを考え、ドッジボールで盛り上がっている連中が振り向くくらいのアイデアをひねり出すわけです。決して鉄棒が好きで遊ぶわけではないので、そのときは主流じゃない面白さを見つけることに夢中になっていましたね。
また、80年代はアイドルがたくさん生まれました。けれどもその反動でバンドブームが来た。アイドルという大人たちがつくったものに乗っかるのではなく、自分たちの言葉で伝えるんだ、という時代だったんだと思います。それまでアイドルを多数手掛けていた僕が、そのときどうしていたかと言えば、無理に作詞をしていたわけではなく、テレビドラマをつくったり、映画の原作を書いたりしていました。
しばらくすると、ネットに興味を持って会社をつくったり、いろいろやってみたのですが、自分には経営という才能はない、勝負するのはここではない、勝てないなと自覚しました。 結局、僕の中で自然に、これは得意、これは苦手というものを判断していたのですね。それが2005年「AKB48」の誕生につながるわけです。

苦手なことを認める

そう考えると、武器=得意分野を探すというより、「苦手なことを認める」と考えたほうがわかりやすいかもしれません。さらに言えば、その苦手ではない場所で、どれだけ自分が興味を持って、面白いと思えることを追求できるかが大事だと思います。結果がすぐに出なくても、そこは気にしなくていいので。
例えば、2005年にAKB48を立ち上げたとき、自分自身はもう楽しくて仕方がなかったんです。それからしばらく経って、2010~11年くらいに売れた頃、みんなに「秋元さん、よく頑張りましたね」と言われました。そのとき、「え、そうなの? みんな売れないと思って見ていたんだ」と思いましたけれど、僕は、企画してつくっていること自体に高揚していたわけです。落とし穴づくりもそうでしょう? 本当に落ちてくれるのかどうか、ワクワクしながら一生懸命つくっているときが、一番面白い。
ですから、サイバーエージェントの社員のみなさんも、それぞれ〝自分にとっての鉄棒〟、つまりは遊べる場所やものは何なのかということを考えたほうがいい。藤田社長は、そういうことをみんなに望んでいると思います。これだけ大勢の社員たちがみんなでドッジボールをやっていてもしょうがないだろうと。

テレビをつくったら負ける

それは、「AbemaTV(アベマティーヴィー)」の企画でも同じです。藤田社長にも「テレビをつくったら負けるよ」と伝えています。最近AbemaTVの人たちが、テレビ局の編成っぽくなってきているのではないかという、危険な香りを感じています。
これまでのネットでよくみかけたのは、テレビ番組と同じようなものを、ネットで配信しているもの。でも、テレビ局はどこもみんな、それこそ命懸けでつくっているわけです。テレビとネット、つまり放送と通信のぎりぎりのところをせめぎ合っていても、勝てない。ネットでしかできないことをどこまでやれるかだと思います。それがもしかしたら『亀田興毅に勝ったら1000万円』のような、思い切った企画なのかもしれないし、将棋のチャンネルもそうかもしれない。

ドッジボールの話と同じで、ほかで楽しく遊んでいる人たちを、どうやってこちら側に連れてくるかを考えるべきであって、「いやいや、僕たちは素人なんで、テレビのみなさんにはとても敵わないです」と思っているくらいのほうがむしろ勝てるのではないでしょうか。 言い換えれば、いかに予定調和を壊すことができるか、がAbemaTVに問われているのだと思います。僕らが若い頃は、歌詞をつくるにもコンペティションが主流で、何人もの作詞家に発注して、その中で一番いいものが選ばれました。そのとき僕は、まずみんなはこうやって書くだろうな、というのを予測した。その予測したものを全部排除して書いていきました。そうすれば、ブルーオーシャンで誰もいないところで独り勝ちになる確率も高くなるので。

最近でいうと、「吉本坂46」を発表しました。みんなが「乃木坂46、欅坂46に次ぐグループをつくってくださいよ」と言ってきていたのですが、同じことをやっても面白くないと思ったんです。たまたま吉本興業の大崎洋社長と話したところから始まったのですが、吉本のタレントでアイドルユニットを組むというのは一番ハードルが高くて売れにくいし、何より予定調和を壊せるというのが面白いと思ったんですよね。
そしてもうひとつ、何かが起きたときに反射神経で考える、ということも大事なんじゃないかなと思います。

流れを読みつつ、反射神経で動く

いま、『ラストアイドル』というアイドルの勝ち抜き戦のテレビ番組をプロデュースしています。あるとき、ひとつのグループのミュージックビデオを撮ろうとしたら、センターの子が足を捻挫して踊れません、その子抜きで撮ります、とスタッフから連絡がありました。でも、その対応は予定調和。
そうではなく、その子が真ん中で椅子に座って、ほかの子が周りで踊って、最後にみんなが抱きかかえて立たせて、みたいな逆転の発想が必要なんじゃないかと話しました。なぜなら、センターのその子が踊れないという「いま」は、そのときにしか撮れない。その事実をもっと素敵にできるんじゃないかと。
そんなふうに日々いろいろなことが起きるわけで、「流れ」というのは単純な数字やマーケティングのようなことでは読めません。何がブルーオーシャンかレッドオーシャンかを見極めたところで、次の手を講じることができるんですよね。

そして、僕が思う藤田社長のいいところは、どんなときもずっと変わらないスタンス。彼はどんなことに対してもフェアな人間で、それはどんな大物に対しても媚びないですし、社員に対してもお客様に対しても株主に対してもフェア。すごいなと思いますね。また、藤田社長が信頼されているのは、ずるくないからなんですよ。身の丈に合っていないことをやろうという気は藤田社長にはない。着実に地に足が着いたことをやっているように感じます。
そんな藤田社長が好きな麻雀もそうですが、配牌があって、ツモがあって、何をみんなが出してくるかわからない流れの中で、ここであがることはできないから人にふりこまないようにしようとか、あるいはここで勝負をかけようとか、最善の方法を考えるわけです。様々な要素が絡み合う中で、すべての流れを読みながら、いまの自分に何ができるかを探っていく必要があるんですよね。

サイバーエージェントの経営で言えば、そのときそのときで利益が出る事業は変わる。来年、再来年、これから先も、同じ事業内容でずっと当て続けることはたぶん厳しい。だったらいまこのタイミングで、一気にネットTVというインフラで勝負したいという思いがある。流れをちゃんと読んでいるんです。
サイバーエージェントの流れを読む目が正しいなと思うのは、こんなに藤井聡太七段がクローズアップされる前から「将棋だ、将棋だ」と藤田社長が言い張っていましたから。これからも流れを読みつつ、反射神経で予定調和を壊していけば、勝てるんじゃないかなと思います。


取材・執筆 井上理

Page Top