技術・デザイン

もしメガベンチャー4社が同じ方向を向いたら何が実現できるか?

~BIT VALLEY構想が目指す渋谷の未来~

サイバーエージェント、DeNA、GMOインターネット、ミクシィによる、渋谷をIT分野における世界的技術拠点にすることを目指したプロジェクト「SHIBUYA BIT VALLEY(シブヤ・ビットバレー)」が始まりました。

その取り組みとして、2018年9月10日に開催されたのが、テックカンファレンス「BIT VALLEY 2018」。 “渋谷でエンジニアとして働くことは楽しい” をテーマに、最新技術や各社のAI分野における取組みの紹介、各分野のトップエンジニアによるトークセッション、渋谷に拠点を構えるスタートアップが集結したパネルトークなどを実施しました。会場には約1000人の若手エンジニアやエンジニアを目指す学生が集まり、大きな盛り上がりをみせました。

当日の様子はこちらをご覧ください。
動画で見るテックカンファレンス「 BIT VALLEY 2018」

これから「SHIBUYA BIT VALLEY」はどんな広がりをし、渋谷の街を変えていくのでしょうか。今回のFEATUReSでは、テックカンファレンス「BIT VALLEY 2018」を振り返りつつ、4社の運営責任者に今後の展望を聞きました。    

Profile

  • 株式会社サイバーエージェント執行役員技術政策室室長 長瀬 慶重
    2005年に入社後、アメーバブログやコミュニティサービスなどのサービス開発を担当し、2014年に執行役員に就任。「AbemaTV」開発本部長を務めるほか、エンジニアの採用や、技術力をさらに向上するための評価制度などの環境づくりにも注力している。

  • GMOインターネット株式会社次世代システム研究室シニアクリエイター 稲守 貴久
    2006年に入社し、クリエイティブディレクターを担当。 その後、GMOクリック証券でウェブマスターとして従事。2010年からはGMOインターネットの現部門でグループ会社や新規事業の技術支援を行いながら、技術PRや新卒エンジニア採用、育成に取り組んでいる。

  • 株式会社ミクシィ執行役員(技術領域) 村瀬 龍馬
    2009年ミクシィ退社後、ゲーム会社の役員や京都のゲーム会社でエンジニアなどを経験。2013年にミクシィに戻った後『モンスターストライク』などの開発に携わり、現在はXFLAGのエンジニア全体を統括。2018年4月、執行役員(技術領域)に就任。

  • 株式会社ディー・エヌ・エー執行役員システム本部本部長 小林 篤
    法学部法律学科からエンジニアへ転身し、2011年にDeNAに入社。Mobageおよび協業プラットフォームの大規模システム開発、オートモーティブ事業本部の開発責任者を歴任。2018年より執行役員としてDeNAのエンジニアリングの統括を務める。

東京と地方の「情報や機会の格差」をなくし、
エンジニアの魅力を広めたい

ー 「BIT VALLEY 2018」はどういったコンセプトで始まり、どのように渋谷区との連携へと広がっていったのですか?

長瀬:私は採用活動などで地方の大学を訪れることが多く、地方の技術コミュニティに所属する学生と会話する機会があります。学生の声に耳を傾けてみると、IT業界に関しては企業の情報やインターンの機会など、東京と地方で「情報や機会の格差」があると気づきます。

折しも経済産業省が「将来的にエンジニアが不足する」と発表している通り(※1)、地方学生の「情報や機会の格差」は社会的な課題につながっていると私は考えています。

こういった背景を踏まえて2018年5月初旬に「BIT VALLEY構想(※2)」を渋谷区に提案しに行きました。

長谷部区長には、渋谷区と渋谷の企業が一丸になることで、IT業界やエンジニアの仕事の魅力を若い世代、特に学生に知ってもらいたいという想いをお伝えしました。

※1 IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果を取りまとめました(経済産業省)
※2 2018年5月の時点では「渋谷テックバレー構想」


ー なぜ最初に渋谷区に声をかけたのですか?

長瀬:情報格差や学ぶ機会の格差といった社会的な課題に対して各企業が一丸となって取り組む際に、それぞれの企業が自社のメリット等を考えなくても賛同できるような「社会的な大義」が必要だからです。そのためにも渋谷区の力が必要でした。

ー 各企業との連携はどのように進みましたか?

稲守:サイバーエージェントさんから「一緒にやりません?」とお誘いがきまして、ほぼ即答しました。

長瀬: 早かったですよね。1週間とかで社内の承諾をとりつけていただきました。

稲守:はい(笑)。というのも、弊社でも地方でインターンを開催していて私もよく出張するのですが、大阪と東京ですら情報の粒度などで格差を感じます。そこの課題感は私達も共感していたので、すぐに賛同しました。

小林:うちもほぼ即答でした。

村瀬:そうですね。採用をしていると地方の格差は感じていましたし、サポートできる範囲で何かしてあげようというのは以前から会社で話をしたので共感できました。

最速で最高のクオリティを目指した
「BIT VALLEY 2018」

ー 結果的に学生の参加実績や手応えはいかがでしたか?

長瀬:約200人の学生が参加してくれました。また、我々の想いに共感してくれた渋谷区のIT企業が協賛として入ってくれたおかげで、首都圏以外に住む102名の学生の交通費を負担することができたことは(※3)大きな成果でした。直接会場で話した学生は「今までは夜行バスに乗って眠気を堪えながら講演を聞いていたけれど、(交通費支援のおかげで)初めて新幹線で来られたのですっきりとした頭で聞けました!」と語ってくれました。

※3 “ビットバレー”復活で、渋谷を技術者フェスの聖地に――地方の学生には渋谷までの交通費・最大5万円を支援

長瀬:参加者を1000人集めたいという目標があったのと、外に出して恥ずかしいものをやりたくないというプライドが各社にありました。当日は約80名のスタッフが各社から集まって運営に力を貸してくれました。あらためてすごい会社の人たちと、良いプロジェクトを進められたんだと実感しています。

小林:準備期間としては3ヶ月です。これだけのイベント規模なら1年はかかるのが普通です。だいたい1年前に会場をおさえ、登壇者のアサインから制作物や配布物の準備などに数ヶ月かかります。もちろんやりたかったけどできないことはたくさんありましたが、3ヶ月という短い期間で、あのクオリティで#0を提供できたのは良かったです。

ー 各社の分担はどうしていましたか?

稲守:わりと各社その場のノリで分担していったのですが(笑)。発起人のサイバーエージェントさんは全体のプロジェクトマネジメントを担当し、プログラムのとりまとめはDeNAさん。当日の会場とファシリテーション周りはミクシィさん。うち(GMO)は懇親会や諸々のトラブルシューティングや空いているところを率先して埋めていった感じです。

小林:稲守さんは懇親会の司会までやっていましたね。

長瀬:懇親会は盛り上がりましたね。

稲守:80名近くのスタッフで1000名の来場者を受けとめ、かつ大きな事故もトラブルもなく終わらせることができたのでホッとしました。スタッフも笑顔で楽しそうにやっていたので、僕自身も楽しまなくちゃという気持ちでやれましたし。

小林:各社がそれぞれ登壇者のアサインするだけでなく、それぞれの会社がもつコネクションを利用してキーパーソンを呼べたのも大きかったです。

例えば、Keynoteの「DeNA南場会長・GMO熊谷社長・CA藤田社長」。この3人の会話をまわせるモデレーターはなかなか見つからず、開催2週間前になっても人選が決まっていませんでした。BIT VALLEYの定例会議で技術評論社の馮富久さんが話題にあがり、その場で連絡してお誘いしたところ、快諾していただけたというエピソードもありました。

稲守:時間もリソースも余裕がないなか、各社の企業カルチャーが似ていたり、普段からコミュニケーションツール(Slack)を利用していたりもあって、比較的コミュニケーションコストも少なく進められたとは思います。
 

”共通の想い”が、各社の連携を加速

ー 各社それぞれの考えや立場がある中、連携がうまくいったのはなぜですか?

長瀬:初期の頃のミーティングに渋谷区長が来てくださって、各社が揃う中でマインドセットが形成できたことが大きかったです。「やることは決めたから、あとはやるしかない」という状態を最初に作れたのは良かったです。

また、それぞれ利害関係がある中で1つのことをやる場合、様々なことが合致しないとうまくいかないのが現実です。BIT VALLEYのケースでいうと渋谷区の都市開発のタイミングがまずあり、各社が地方の社会的な課題感をお互い共感し、都内をはじめとして全国各地域にスタートアップが集まり始める中、各社どうブランディングしていくのかそれぞれ悩みを抱えていて、それらが時流・社流の中でカチッと合ったので同じ方向を向けたと言えます。

その結果、プレスリリースからイベント後まで、今でも様々な問い合わせがきています。

逆に、この方向性がブレているとややこしくなります。それは例えば各社からの協賛金など、社内に決済が必要なことに関して動きが遅くなるなど。

稲守:そこらへんは各社ほんとうに速かったですね。

長瀬:それぞれに裁量権がある企業カルチャーもあったとはいえ、悩むことなく「これはやったほうがいい」という共通認識があったからこそだと思っています。

これらの点が冒頭カチッと握れたのが大きな要因ではないでしょうか。

ー 当日、印象に残ったシーンはなんですか?

小林:個人的には、南場・熊谷会長・藤田社長の3名が控室で繰り広げていた雑談風景です(笑)そしてその隣で居づらそうにしている村瀬さん(笑)

村瀬:緊張感しかなかったですね(笑)。

小林:控室のシーンが印象的だったのは、あの3人が渋谷で起業し、お互いが競い合う時代の中で会社をこうして大きくしていった。とはいえ、お互いコミュニケーションをとり続けていたので、ああいう場で会った時も「久しぶりー」と話せる仲にあったことです。事前に全くすりあわせをしていないにも関わらず、壇上に3人が立つとパネルディスカッションが違和感なく成立する。

私は控室の3人の雑談を見ていたのもあって「この3人はこういう関係値にあるんだ。こうやって20年以上続けてきたんだな。」と感じたのが印象的でした。

長瀬:プラネタリウムで何かやってみたいというアイデアがあったので、真っ暗な中に夜空を見上げながらエンジニアの話を聞くというのは斬新でした。

稲守:来た人みんな言ってましたね。

長瀬:セッションプログラムも、DeNAさんがいろいろ企画してくれたのですが、1つの企業では実現できない内容が出てきたのもおもしろかったです。例えば「Abema TV x SHOWROOM ライブ配信サービスの裏側」など。トータル22社が登壇し、多くの企業のみなさんが快く登壇を引き受けて下さったことも非常に有り難かったですね。

稲守:私はインカムつけながら汗だくで運営を回していたので、メインセッションしか見れていないのですが、ダイバーシティが感じられるイベントだったと思いました。

というのも渋谷区が「ちがいを ちからに 変える街」と提唱していることと似ていて、各社それぞれ色が出ていましたよね。インターネットのテクノロジーをやっていることに違いはないのですが、やっていることはそれぞれ異なる。メインセッションはそれが特に感じられておもしろかったです。村瀬さんはどうですか?

村瀬:もともとミクシィにいた人がその後ベンチャーを立ち上げ活躍している人や、今は別の環境で活躍するかつての同僚が、長い時を経てあの場に集まって登壇しているのを見て「昔の仲間が再集結しているな」と個人的には感動しました。それから若手もがんばっていて、中には初めての登壇という方も何人かいました。

聞きに来てくれた人たちも学生とエンジニアが混ざっていて、不思議な反応の雰囲気をむしろ楽しみながら「ああ言ったらウケた。こういったらこんな反響だった」と控室で登壇者たちで情報交換しているのも印象的でした。

「もっと出たい」「来年もまた登壇したい」という声が聞けて嬉しかったです。

次回は渋谷の街全体を盛り上げられるような
1万人規模のテックイベントを

ー 次回の展望を聞かせてください

長瀬:来年は1万人ぐらい呼びたいですね。

小林:AWSの「re:Invent」みたいに渋谷の街全体が、お祭りみたいにカンファレンスで盛り上がっていると良いですね。例えばWebサービス、動画サービス、FinTechなど渋谷の各所で各技術のカンファレンスが開催されていて、街中にSHIBUYA BIT VALLEYののぼりがあがっているような。

長瀬:いいですね。技術によって特色があるのが大事で、例えば街コンみたいに夜はいろんな分野のエンジニアが渋谷のいろんな店で飲んでいて、学生はそこでリアルな話が聞けたりするとか。

1万人となると来年すごいことやらないといけないプレッシャーはありますが、みんなで頑張れば盛り上がりそうですね。

稲守:今回のビットバレーがきっかけに、渋谷という街が少しづつ変わっていったらいいなと思いました。というのも、長谷部区長が登壇で紹介していた「エストニアの電子政府」みたいなことを、例えば渋谷区がブロックチェーンの台帳技術で実証実験できたらいいなと思いました。そういうことをやってもいいんじゃないかという予感はあのスピーチから感じられました。

村瀬:長谷部区長からは、渋谷という街をテクノロジーで変えようという想いが伝わってきますよね。

稲守:テクノロジーと社会的なルールって、コンセンサスを得られずにぶつかることが多いですよね。そういった中、長谷部区長のああいう意見は嬉しいです。

ー 「ビットバレー構想」を踏まえて、渋谷を今後どんな街にしていきたいと思いますか?

長瀬:いま渋谷の再開発が進んでいて、あと数年で大きいビルが駅周辺にどんどん建っていきます。そのビルにIT企業が入ってくると、渋谷駅にエンジニアが1万人集まることになるでしょう。今回Keynoteで「集積効果」という言葉が出ていましたが。駅周辺にドッと集まり一緒にいるからこそできることが生まれてくるはずです。そのきっかけとしてSHIBUYA BIT VALLEYが後押しができるような枠組みを作れたらと考えています。

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