Interview

ふたりの“青学の晋”が語るリーダー論
原 晋 × 藤田 晋(前編)

【創立20周年記念 特別対談】

サイバーエージェント設立20周年を記念して、青山学院大学陸上競技部長距離ブロック 原晋監督と、青学出身 藤田晋のダブル“青学の晋”対談を行いました。

Profile

  • 原 晋 (ハラ ススム)

    1967年 広島県生まれ。1989年に中国電力へ入社。
    2004年 青山学院大学陸上競技部監督に就任し、
    2015年の箱根駅伝で青山学院大学として史上初の往復路・総合優勝を果たす。
    以降、箱根駅伝でチームを四連覇に導いている。

  • 藤田 晋 (フジタ ススム)

    1998年、24歳でサイバーエージェントを設立し、
    2000年に当時史上最年少社長として26歳で東証マザーズ上場、2014年9月に東証一部へ市場変更した。
    創業から一貫して、インターネット産業において高い成長を遂げる会社づくりを目指し、
    「21世紀を代表する会社を創る」を会社のビジョンに掲げる。

スローガンを駆使するふたり。言葉選びとタイミングのセンスはリーダーには欠かせない能力

― おふたりの共通点として、定期的にスローガンを発信されていますよね。そこにはどんな狙いがあるのでしょう?

:ここ最近は、「大作戦」シリーズを箱根駅伝の記者会見で発表していますが、これは“駅伝直前のチーム状態”をひと言で表すスローガンなんです。この会見は大学駅伝の中で最も注目を浴びる場なので、メディアでの取り上げられ方も大きい。青山学院大学(以下「青学」)に対する視線を集めるための私なりの戦術です。

― メディアにどう掲載されるかもイメージしながら発信しているんですね。

:初優勝した時の「ワクワク大作戦」は、選手たちをリラックスさせる効果も狙っていました。本番直前でみんな力が入っていたので、「え、監督そんなこと言っちゃうんだ」と驚いたみたいですね(笑)。

―藤田社長も社員総会で半期ごとにスローガンを発表していますが、スローガンの効用は大きいと感じますか?
 
藤田:「今期100億やるぞ!」みたいなキリのいい数値目標があるときはいいけど、「230億必達」とかだとイマイチ社員の心を掴みづらい(笑)。そういう時に一つの方向に向かせるには、スローガンが効果的ですね。

たとえば「AbemaTV」も、「1000万WAUいったらマスメディア」と、ひと言発すると社員もそこを目指して頑張るし、投資家や記者たちは「1000万到達するのかどうか」と注目します。

―社内外を動かす言葉を意識的に発信しているんですね。

藤田:そうやって関係者の目線をピンポイントに合わせるのがリーダーの重要な仕事です。言葉選びとタイミングのセンス、これがあるかないかではリーダーの能力は全然変わってくると思いますね。 

―おふたりはスローガンを考えるとき、結構悩みますか?
 
:悩みますよね。続けることでカラーになってくるので。周りからは「原監督・作戦シリーズ」を期待されてるんですけど、持ちネタもなくなりますよ(笑)。
 
藤田:「サンキュー大作戦」って、「打倒!青学」って頑張ってきた他大学からすると拍子抜けしますよね(笑)。特に箱根駅伝は、“ど根性”みたいな雰囲気が大会全体にあったので、大作戦シリーズでだいぶイメージが変わったと思います。
 
―青学はスマートなのに勝ってしまうから、他大学は悔しいんじゃないですか。

:私は青学の指導者なので、大学のカラーに合わせないといけないという責任も感じているんですよ。旧態依然の体育会系の部活を青学でやっても意味がないし、校友からも愛されない。

―駅伝を見て感じる陸上部のカラーが、青学のカラーを体現しているということですね。
 
:そうなるように意識していますね。私は青学の一職員として監督をやっているわけですから、青学のカラー・教育方針に整合性が出るように気をつけています。

馬車馬のように走らせる時代は終わった。スカウティングで見ているのは「表現力豊かな選手」かどうか

―続いては“人”についておうかがいします。監督が選手のスカウティングで見ているポイントはどこでしょうか?
 
:ある一定の身体能力は当然必要ですが、部の育成方針にマッチした学生にきてもらうのが基本スタイルですね。具体的には「表現力豊かな子」。私の指導方針は、従来の指導にありがちな“首根っこつかんで馬車馬のように走らせる”というものではない。だから自分で考える能力がない子は伸びないんですよね。
 
―「表現力豊か」だと、監督と選手がぶつかることもあると思うんですけど、そこはどうでしょうか?
 
:組織を立ち上げる段階では、ある程度リーダーの思想の中でルールを作ることが大事です。ただ、そこからチームが発展する過程では、より組織を良くするやり方、意見をどんどん出してほしいと選手に伝えます。最近は少し角が立った意見が飛び交うくらいが理想ですね。
 
藤田:私も「AbemaTV」の立ち上げは、ある意味独裁的にやってきました。成功するかどうかは誰にも分からない中で、「上手くいかないんじゃないか」と懸念点をあげたらキリがない。大規模な先行投資をしているのに社内での反対意見に付き合っている時間はないんです。それとは対照的に、既存事業の広告やゲームに関しては、割とほったらかして自由にやらせてますね(笑)。
 
―組織が成長してきたら、メンバーの自主性に任せる部分が大きいんですね。そんな中でも組織として守っている部分はどこでしょう?

:組織を愛していることが大前提です。愛しているからこそ、より良くしたいという意識がはたらく。それで色々な意見が飛び交うことは大歓迎です。

電源が入っていない冷蔵庫はただの粗大ごみ。そのコンセントを入れるのは自分自身

―原監督は青学をどういうチームにしたいと考えていますか??

:常に夢を追いかけるチーム、ですかね。明日のことは誰もわからないけど、何もない明日にむかって挑戦できるチームにしたいと思っています。
 
藤田:箱根駅伝でこれだけ連覇すると、チームのモチベーションを保つのが難しくなることはありませんか? 会社でも、上場した瞬間に気が抜けるということがあるんですけど。
 
:「茹でガエルになるな」とよく言ってますね。ぬるま湯につかって、いつの間にか現状に甘んじてしまう学生がたくさんいる。‛青学に入れば自然と強くなる’と思う人が増えたので、今はそこに対する指導をしているところです。
 
―具体的にはどんなことを伝えているんでしょうか??
 
:「全てのノウハウは青学に揃っている。あとはお前がやるかどうかだよ」と。電源が入ってない冷蔵庫はただの粗大ごみですよね。そのコンセントを入れるかは自分次第だ、と言ってます。
 
―原監督はハードマネジメントをするようなタイプではないように見えますが、「締めどき」はあるんでしょうか?こういう場面では厳しく言うとか。
 
:嘘をついたり、ごまかしたときは怒りますね。やってもいないのにできない理屈を言ってきたときとか。失敗は誰でもするので、一生懸命やって失敗した分には怒りません。

権威を保ちながらも、選手や社員とフラットな関係性を築くために意識していることは?

―おふたりとも、「リーダーとしての権威を保ちながらも自然体」というバランス感が絶妙だと思っています。それをどう戦略的に作っているのか聞かせてほしいです(笑)。
  
藤田:サイバーエージェントは社員数も5000人近くなってきて、エスタブリッシュな会社だと思われることもあるけど、この間社員が出た「パリピ選手権」※とかを見ると、そんな立派な会社じゃないな、と思ってもらえたかなと(笑)。私自身も、麻雀の試合に出たりして「変な社長だな」と思われてるくらいがちょうど良いと思ってます。
 
※「AbemaTV」で今年5月に放送された番組『全日本女子パリピ選手権』。“飲み会をいかに盛り上げるか”をテーマに、“女子パリピ”全11組が集結し、トーナメント形式で戦いを繰り広げた。サイバーエージェントの女性社員もチームで出演。

―原監督も、メディアでは穏やかな雰囲気だと感じます。

:私も、基本的には選手に無理やり言うことを聞かせることはしないですね。強い組織を作るための確固たる信念に基づいて選手が動いているだけで、自分が牛耳っているわけではない。私は少年の心を持ったおじさんなんですよ(笑)。常に一生懸命動いてる自分を見て、学生たちも「監督、頑張ってんなー」と思ってくれれば良いと思ってます。
 
藤田:経営者もそうですけど、結局は監督として実績が伴うと選手も自然とついてくるし、楽になるところはありますよね。
 
―実績が権威をつくるから、そうなればあとは親しみやすい雰囲気を意識すればいいと。
 
:そうですね。あと、選手と監督が互いに部を作り上げているという関係性じゃないと、私がいなくなった途端にガタガタとダメになってしまう。そういう組織は発展しないです。

藤田:他の会社を見ていると、権威がある社長を前に社員がピシッと緊張していたり、「社長、お座りください!」みたいに即座に椅子を差し出したりするシーンがあるけど、ああいう対応も寂しいもんです。「自分なんてそんな大したもんじゃないんだけどな」と思ってます。だから、社員にそう思わせないようにしたいですね。
 
―社長が麻雀部のFacebookグループに「今日麻雀打ちに行ける人?」と投稿することもあるとか(笑)。
 
:え、藤田社長が社員と麻雀打つこともあるんですか?
 
藤田:はい。150人くらいいる結構大きい麻雀部に私も所属してるんですが、「今日行かない?」とグループに投稿すると、割とすぐにつかまりますね。麻雀のあとは居酒屋で飲むのが定番コースです(笑)。
 

後編では、スポーツ発展のメカニズムや、既得権益・しがらみとの向き合い方についてあますことなく語っていただきます。

インタビュアー:渡辺将基(新R25編集長)
 

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