Interview

圧倒的おもしろカンパニー CTOが考える
エンジニア組織の成長戦略

インターネット産業の変化にあわせて様々な事業を提供している当社では、多様な技術領域において若手エンジニアが日々活躍しています。FEATUReSでは彼らの活躍を連載形式でご紹介します。

第2回目は当社連結子会社で、スマートフォン向けアプリの開発を行う株式会社GOODROID CTOの永石です。

入社3年目でCTOに抜擢された永石。カジュアルゲーム業界のトップディベロッパーの1つとなったGOODROIDを技術で支えた立役者の1人です

永石は、CTOとしてどのように事業の成長に携わってきたのか、その核心に迫ります。

Profile

  • 永石 裕樹 (ナガイシ ユウキ)

    2012年 サイバーエージェント入社。
    CyberAgentAmerica,Inc、Ameba事業本部ゲーム部門でブラウザゲームのサーバーサイドを経験。エンジニアリーダーとして数々のゲームの立ち上げ・運用に携わる。
    2014年株式会社GOODROID設立とともに取締役CTOに就任。技術面を担う新卒取締役。

経営理念は「圧倒的に面白いサービス」。
だから何でもつくる。

ー 現在のGOODROIDはどういった事業を行っていますか?

永石:2014年の会社設立以降「もやしびと (iOS/Android)」や「私のヒモ男~イケメン拾いました~(iOS/Android)」など50本以上のカジュアルゲームをリリースしてきました。

2016年の「おそ松さんのニートスゴロクぶらり旅 (iOS/Android)」提供開始以降、「青鬼2 (iOS/ Android)」や「けものフレンズFESTIVAL」のような開発規模の大きいIPタイトルも手がけるようになり、現在は広告事業も始めていて、You Tuberとのタイアップ動画に特化した広告商品「AddTube」の提供を行っています。

他にも「美意識高いモアイ」というカプセルトイを作ったり、Unreal Engineを使ってPlayStation®VR専用ソフト「チャリ走VR」を作ったり。以前よりも提供サービスの幅が広がっています。


ー 経営戦略がカジュアルゲーム開発から変わったということでしょうか?

永石:むしろGOODROIDの経営理念が「圧倒的に面白いサービス」なので、カジュアルゲームに限らず、世の中にある面白そうなことにチャレンジするということを軸にしています。そういう意味では会社設立時から軸はブレていないですね。

皆、面白いことが大好きで、いつも誰かが「めっちゃ面白そう」というものを見つけてきます。

GOODROIDには誰でも好きなことをどんどん書き込んで良いというスプレッドシートがあって、そこに企画のアイデアを自由に書いていきます。その中から面白そうなことを探したり、新しいビジネスのプロトタイプを開発したりします。アイデアをどうやってビジネスに育てられるのか、社長やCTOなど役職関係なく、皆で考えます。

過去には「冷凍食品の通販」を事業化しようとするほど幅広くアンテナをたてています。この冷凍食品の通販事業をサイバーエージェント副社長の日高に相談したところ、日高からは「あー、渋いね(笑)。わかんないわ」と苦笑いされたのを覚えています。今後も枠に捉われずに周囲が「おっ!」と思うような、意外な事業展開で会社を成長させていきたいです。

ホームランを狙いつつ、
最低でも犠牲フライになるビジネスをする

ー チャレンジには失敗がつきものですが、失敗を会社としてどう受け止めていますか?

永石:GOODROIDに浸透しているミッション・ステートメントの1つに「少なくとも犠牲フライ」という考えがあります。ホームランを狙いつつ、最低でも犠牲フライにはなりそうなところを事業化していこうという考えです。

売上度外視でイチかバチかを狙うスタイルでは、もしかしたら特大ホームランを打てるかもしれませんがリスクが高すぎますよね。ホームランか三振か、という極端なビジネスを続けていたらいずれ会社が立ち行かなくなります。

そのため「話題性はともかく売上はある程度達成できた」、もしくは「売上はそこまでじゃなかったけどネットでバズった」というようなケースを犠牲フライと考えています。売上はもちろん大切ですが、認知度も重要な財産と言えると思うので。


ー 犠牲フライを打ち続けた結果、会社として技術的な体力はどうついていきましたか?

永石:会社の成長とともにエンジニアが増えただけでなく、チャレンジと失敗を繰り返した結果、技術的な資産が蓄積されました。

GOODROIDを立ち上げた当初はカジュアルゲームがメインで、ゲームエンジンにCocos2d-xを導入しましたが、サイバーエージェントグループ全体を見てもノウハウが多い技術ではなく手探りの開発でした。GOODROIDでは1ゲームの開発スパンが1.5ヶ月~2ヶ月程と短く、トライアンドエラーできる頻度が高い。そのため1年後には様々なノウハウがたまり、カジュアルゲームの開発でわからないことはないといったレベルにまでなりました(笑)。

1年に30本のペースでカジュアルゲームを作り続けることで、ノウハウもたまっていくし人も育っていく。ゲーム作りの基盤ができて、それをベースに次のサービスを作ることでどんどん昇華されていく。その地道な積み重ねで、他のプロジェクトにも使えるような技術的な資産ができたと思います。

例えばクライアントサイドではCocos2d-xを使った共通基盤「GOODROIDエンジン」というものがあり、GOODROIDのゲームは基本全てこのエンジンのリポジトリをforkして使い、どんなゲームであってもスピード感を持って開発できるようになっています。

独自のO/Rマッパーはじめ、DAOやAPIクライアント、暗号化・難読化などがパッケージ化されたシステムです。1つのゲームがリリースされたらそのゲームで改修されたり追加された機能などで良かったものを「GOODROIDエンジン」にPull Requestを出すといった運用をしています。

それによって昇華され続け、唯一無二のカジュアルゲームエンジンになっています。

また数をこなすことで勘どころが掴めるようになって、裏側の技術が変わったとしてもすぐに対応できるようになりました。例えば今まではCocos2d-xでゲームを作ってきましたが、最近はUnityのプロジェクトも作り始めています。そういう時にも皆スムーズに乗り換えることができましたね。

先ほど挙げた「GOODROIDエンジン」はCocos2d-x向けでしたが、この仕組みを真似て作っていったらUnityで作ったとしても失敗はしないでしょ、みたいな(笑)。

また、ゲームデータを保存するタイミングは通信や書き込みのI/Oが発生するので、高頻度でその処理が実行されるとCPUの処理であってもGPUの描画に影響を与え、ゲーム全体のパフォーマンス劣化につながる、といったことはみんな経験していたので、Unityで同様の処理を実装する時には予めタイミングを気をつけた設計をする、など経験に基づいたノウハウが溜まっています。

開発が同時に進行する中で重要なのは情報の共有。
イメージは「あみだくじ」。

ー 打率を上げるために特に意識しているようなことはありますか?

永石:5つの開発ラインが同時に走ることもよくあります。そのため同時に進めていく上でノウハウの共有が重要で、好事例も失敗も情報共有して、並行して高め合っていくことを意識しています。あみだくじみたいな感じですね。


あみだくじ?

永石:5本あるラインが横につながることでしっかりと混ざり合っていくというようなイメージです。その結果、全ての品質を同じように高水準にすることができる。

1つのプロジェクト内で起きたトラブルの解決までのアクションを”ノウハウ”として全プロジェクトに展開します。そして、あみだくじの5本のうちの1本の”ノウハウ”を他にも活かしつつ、次の5本ではそれを取り入れていく。これがゴーストレッグ(あみだくじ)型開発です(笑)。

そうすることで少しでも打率を上げる、最低でも犠牲フライになる確率を上げるということができているのかなと思います。

技術で組織の未来を切り開いていくのがCTO

ー 永石さんは、CTOという立場についてどうとらえていますか?

永石:CTOとは、技術的な面で会社の未来を切り開いていく存在だと考えています。目の前にある現場だけに身を置くのではなく、新規事業を技術的な目線で考えて形にしていく。1つの技術にとどまらず、常に新しいことにチャレンジして組織の未来を切り開いていくべき立場なのかなと思いますね。

例えば今は、ブロックチェーンの事業やさらにまた新しい事業をやろうとしているところですが、そいうった将来性の高い事業に重きを置いて、形にしていくことが私のCTOとしてのミッションです。様々な事業を展開するGOODROIDでは、新しいものが出てきたら、すぐに飛びついて形にして習得していくスキルがCTOには必要だと考えます。


ー エンジニアの技術的な評価の際に、CTOとして携わりますか?

永石:技術的な評価はしていますし、半年に1度の査定面談にも立ち会っています。ただ、実を言うと定期的な目標設定面談や1on1などはやっていません。

その代わり、日頃のメンバーの活躍を把握することを意識しています。例えばプロダクトのソースコードも見ていますし、プルリクやチャットで飛び交う情報も意識的に見るようにして、エンジニアとしてのコンディションを常にウォッチしています。

GOODROIDを立ち上げた当初は、しっかり目標設定と定期面談を実施していたのですが、代表の松田やエンジニアと話していて「これ、やる意味があるのかな」と立ち止まるきっかけがあったのでやめました。

というのも、エンジニアの場合は定量的な目標を立てるのは難しいと思うんですよね。半年で予定していたプロジェクトが予定から変わってきたり、最初に作った目標が崩れ去るということも多かった。それよりむしろ、日々メンバーのソースコードやチャットで共有する情報を見ていたほうが効果的でした。

半期に一度、技術的な評価をするのではなく、日々のコンディションを見ることで、継続的な技術評価をするのがCTOの役割だと思っています。


ー 今後、人数が増えた場合は永石さんが把握しきれなくなると思いますが、どう考えていますか?

永石:今考えているのはVP of Engineeringを育てることです。今、GOODROIDにはエンジニア10数名がいます。この人数はベンチャーでは多い方かと思いますが、最先端の技術を追いかけながら、エンジニアのコンディションも私が見ていくのも限界があります。

そこで、組織全体を見るのはVP of Engineeringに任せて、CTOである自分はもっと新しい技術や事業を切り開いていくところに専念していきたいと考えています。

ただこの考えはまだメンバーには伝えていないんです。言った方がいいのか悩んでいるところなんですが、自発的に出てきて欲しいという思いもあります。一皮むけるじゃないですけど、自分から頭一つ抜け出していく人が素質を持っているのかなとも思っています。

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