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Interview

- サイバーエージェント社員が聞く -
狙うは「読モ編集者」。
ヒットメーカー箕輪厚介氏が見据える、
次世代の編集者のあり方

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  • 箕輪厚介
    1985年東京都生まれ。2010年に双葉社に入社。広告営業などを経て2014年より編集部に異動し『たった一人の熱狂』見城徹、『逆転の仕事論』堀江貴文などを担当。2015年幻冬舎に入社した後、『空気を読んではいけない』青木真也、『多動力』堀江貴文、『人生の勝算』前田裕二などの話題作を手がける。

社員が日ごろ切磋琢磨する社外の友人を招いて対談するコンテンツ、第三弾。

手がけた本は次々に大ヒットを記録ー快進撃を続ける話題の編集者・箕輪厚介氏。いま、編集者に求められること。そして、次世代の編集者のあり方とは。メディア統括本部 渡辺将基が聞き手となって編集者同士の対談が実現しました。

異常な熱がのった瞬間から、ヒットコンテンツは生まれる

渡辺:箕輪さん、最近すっかりヒットメーカーですね。堀江さんの「多動力」、SHOWROOM 前田さんの「人生の勝算」と、担当した本が立て続けに売れていて。

※左「多動力」(堀江貴文 著)、右「人生の勝算」(前田 裕二 著)
※左「多動力」(堀江貴文 著)、右「人生の勝算」(前田 裕二 著)

箕輪:嬉しいですね。

渡辺:ただ、前に飲んだ時「前田さんの本はとてつもない急ごしらえで作っている」って言ってませんでしたっけ?

箕輪:それは言っちゃダメなやつですよ(笑)。『人生の勝算』は色んな人が色んな切り口を提案してくれたり、「こういう本にしたら?」と前田さんに直接アドバイスをしてくれるものだから、構成がぐちゃぐちゃになっちゃって。前田さんの話はどれも唸るような内容で、生き様も凄まじく、だからこそ料理の仕方に悩んでいたんですよね。渡辺さんと飲んだのは、どうしたら良いか分からず、その原稿を放置していた時ですね(笑)。
渡辺:それで箕輪さん、出版ナシにしようとしてましたよね。


箕輪:いや、それはないです(笑)。どうしようか、いつ出そうか考えながらも時間だけが過ぎていってたんです。そんな中、「NewsPicks Book」というビジネス書のレーベルを僕が立ち上げまして、月1回そのレーベルからビジネス本を出版しなくちゃいけなくなったんです。で、その中に前田さんの本を入れようと思い立って、いきなり前田さんに、「一週間後に出します」と言ったんです。1年くらい音沙汰なかったのに(笑)。

※NewsPicks Book:幻冬舎が「NewsPicks」と協業で立ち上げた書籍レーベル。

箕輪:ただ、出版すると決まってからの前田さんはすごかった。ベースとなっていた原稿を4日くらいでゼロから書き直していったんです。会食を終えて0時から原稿に着手して朝まで鬼のような勢いで書き進めていきました。当初僕は、文才もあるようだし任せてしまおうと思って、ほぼ何もしなかったんだけど、前田さんも抜け目ないから「箕輪さん、構成案いただけますか?」と言ってくれて(笑)。当たり前ですが、僕もそんな本気な前田さんと心中するようなつもりで構成案を作って、原稿のやり取りを何度と無くやりましたね。でも『人生の勝算』に関しては、もう前田さんの力が99%です。本当にすごかった。

渡辺:「青春時代のように2人で缶詰めで徹夜した」とか言ってましたが、裏事情はこういうことですからね(笑)。

箕輪:僕がいい加減な性格だというのもありますが、意外とヒットってそういうところから生まれると思います。前もって余裕のある締め切りが設定されていて、段取りどおりスムーズに進行した本って、だいたい売れない。やっぱり沸騰したような、生き物のような本にしないと読者を巻き込めない。そのためには予定調和でやったらダメなんです。1年間音沙汰が無かったのに、「締め切りは一週間後」って言われる理不尽があったほうが「まじかよ」と思いながらも、異常な熱量と頑張りが湧き出てきたりする。

渡辺:なるほど。

箕輪:もちろん、むちゃくちゃなことを言った手前、僕も寄り添って3~4日徹夜して、始発で会社に行ったりしていました。自分の適当さを正当化してるだけの気もしますが(笑)、予定調和から脱した異常な熱量の掛け合わせが、異常なコンテンツを生むんです。

渡辺:演出的に予定調和を壊すこともあるんですか?

箕輪:いや、まだそれはないかな(笑)。ちなみに、これは会社の人にも言ってないんだけど、前田さんの本は、印刷にかけた後にとあるシリアスな事情から出版できなくなるかもしれないトラブルがあったんです。でも、そのトラブルが起こった瞬間、これを乗り越えたら絶対売れるって、むしろワクワクしましたね。前田さんも何度も修羅場を経験している人なので、淡々としていて。普通だったら冷や汗が止まらなくなるような状況を二人で楽しんでました。二転三転めちゃくちゃなことが起こる本って、大体売れるんです。

編集者として一番ダサいのは「便利屋さん」になること

渡辺:編集者として、惹かれる人の特徴ってあるんですか?

箕輪:異物感、ですね。水と油みたいに、どんなにかき混ぜても世の中と混ざらない部分がある人。

渡辺:なるほど。そういう目線で見ると、堀江さんとか青木(真也)さんとかは納得感ありますね。ちなみに、堀江さんの「多動力」は極端だけど刺さるメッセージが話題になりましたが、この本の出版のきっかけは?

箕輪:幻冬舎への入社以来、見城さんからの「お前堀江と仲良いんだったら、堀江の決定的な本を出せよ」という圧は感じていたんです。でも、編集者として一番ダサいのって、「著者と仲は良いけど、作った本が売れない」ということ。それでは著者の便利屋です。堀江さんとはいい関係を築いていたからこそ、幻冬舎に入った一発目で滑るのは避けたいと思ってました。

売れる本をつくるために大事なのは「何の串で刺すか」

渡辺:そこからどうやって「多動力」にいきついたんですか?

箕輪:高城剛さんが「イーロン・マスクは多動症で服を着られないらしい。着ている間に次のことをやりたくなっちゃうから」とTwitterで言っていて。それを見た瞬間、“このタイトルで堀江さんが出したら売れる”とピンときました。

渡辺:本の内容は堀江さんの過去の取材や発言をまとめたものが中心だと公言していますが、それ自体が新しいですよね。でも、冷静に考えてみたらまさにWebメディアのキュレーションと近い発想だなぁと思って。

箕輪:そう、結局本でも「無数の情報を何の串で刺すか」が重要なんですよ。

渡辺:山のようにある堀江さんの発言の中で、どれをピックアップしてどういう軸でパッケージングするか。

箕輪:まさに。それが編集です。料理と同じで、完成図を明確にイメージして、その料理に必要な素材を集め、調理法を考える。超うまいフォアグラがあっても、料理に必要なかったら入れちゃいけない。そうやって素材を集めて、捨てて、並べる順番を決めていくんです。

渡辺:これ、編集者の手の内を明かしているようで、誰でもできるものじゃないんですよね。

箕輪:そうですね。作りながら、最初の予想とは違う方向に行く場合が多いです。たとえば今回の本でも、最初は「多動力=大量の案件をこなす仕事術」という「足し算」の発想だと思っていたんだけど、堀江さんの話を聞くうちに、大量の仕事をするためには、自分がやらなければならない仕事以外は全部丸投げするという「引き算」の発想が大切なんだと気付きました。でも、センスがない人はそこに気付かない。だから、鮮烈に刺せない。振り切っていない寄せ鍋みたいな本にしてもやっぱり売れないですよね。納豆鍋でも何でもいいから、意外性と明確なコンセプトがないと。

藤田の印象は「青い炎」

渡辺:藤田とは「755」で取材を申し込んだのが最初の接点だったとか?

箕輪:そうです。最初にお会いした時は、独特のペースに驚きましたね。“あれ?起きてます?”みたいな(笑)。その場にいる全員が笑っていても、藤田さんは無表情だったり。なのに、ボソっと呟いた言葉が本質的だったりする。編集者になって初めてのインタビューが藤田さんだったので、相当ひどかったはずですが、柔らかく包み込んでいただきましたね。

渡辺:場の支配の仕方がニューパターンですよね。「こっち向けよ!」じゃない。

箕輪:平成の人が惹かれるのはああいう人ですよね。赤い炎じゃなくて、静かな青い炎のようなオーラを持っている。僕も憧れて、何度かあの雰囲気を真似しようとしました(笑)。眠そうな顔して重要な会議に出てみたり、偉い人との挨拶でもボソボソ話してみたり。

渡辺:わかります(笑)。ただ、あれが効力発揮するまでには相当な実績の積み重ねが必要なんですよね…。

一緒に仕込んだインタビューで見城さんを怒らせてしまった思い出

渡辺:それにしても、「755」で取材依頼なんて当時から新しい場所への嗅覚があったんですね。

箕輪:僕、「755」を草刈り場にしていたんですよ(笑)。TwitterやFacebookじゃ繋がれない人でも初期の「755」ではすぐに返信がきた。『たった一人の熱狂』は、見城さんの「755」での言葉をベースに作った本です。

渡辺:自分が箕輪さんと初めて会ったきっかけも、『たった一人の熱狂』のプロモーションでしたね。

箕輪:「Spotlight」で本を宣伝してもらえたらサイバーエージェントの人に売れるかも、と思って編集長の渡辺さんを紹介してもらいました(笑)。

渡辺:そういう持ち込み話って、こちらにメリットもないからなかなか実現に至らない。でもこの飄々とした雰囲気で、以前掲載した藤田のインタビューの見城さん版※をやりたいと言われて。僕の中でも面白い掛け算ができるイメージが湧いたから、これはやってみようと思えた。

あの見城徹に普段聞かないようなことを聞いてみた(怖いので覆面で)

箕輪:渡辺さんのこと、最初の打ち合わせで「分かってる人だな」と思いました。宇宙人を相手に見城さんが真面目に話すとか、普通は断りそうなもんだけど(笑)。笑いの感性、話題の生み出し方の感覚が自分と似てるなって。

渡辺:原稿チェックでも、箕輪さんは自分が「ここを面白くしたい」っていうところを褒めてくれてやりやすかったです。あー、やっぱりそういうところも上手なんだと思って。すごい気持ちよくさせられましたもん(笑)。

渡辺:実はそのインタビューの裏では見城さんを怒らせてしまっていたという…。見城さんに原稿チェックをしてもらったら、奇跡的にほとんど修正が入らなくて。ただ、そのなかで少しだけあった赤字を、自分の考えで1つか2つマイナーチェンジして公開したら、公開後にすぐに気付かれて怒りを買ってしまった(笑)。

箕輪:僕から渡辺さんに「見城さん、めっちゃキレてます」って電話しましたね(笑)。ただ、僕はその電話の反応で「デキる人だな」と思った。見城さんが怒っていると伝えても意外と冷静で「すぐに手紙を書いて謝りにいきます」みたいな感じで、トラブル解決能力が高かった。

渡辺:いやいや、動揺してましたよ(笑)。そのときは、気持ちを込めて書いた謝罪の手紙を幻冬舎に持っていって秘書の方に渡しました。その少しあとに見城さんにイベントでお会いする機会があったんですが、そこで笑って許してくれて心底ホッとしましたよ…。

箕輪:見城さんが怒った時は、むしろチャンスですからね。そこで逆に距離を詰めるか、一生干されるか(笑)。干されるは冗談だけど、どんな怒られても、正直に人間丸出してぶつかれば人間関係が始まります。

渡辺:それって著者と対峙する編集者としても同じことが言えますよね。

箕輪:きわどいことを聞いたり、書きたくないことを書かせたりしても「こいつは本当に本を面白くしたいんだな」という熱が伝われば多少の衝突は問題ないですね。編集者というのは相手がどんなに偉かろうが、人間対人間で関われる特殊な仕事で、本を作るうえでは対等な立場だと思っています。

狙うポジションは「読モ編集者」

渡辺:箕輪さんはSNSでの影響力も大きいけど、どのポジションが空いていて自分がはまったなと思いますか?

箕輪:「読モ編集者」ですね。本格的な編集者には眉をひそめられそうな、騒がしくて胡散臭い存在というか(笑)。

渡辺:読モ編集者、なるほど。たしかに今そのポジションにいる人ほとんどいないかも。

箕輪:これから本の電子化が進むにしたがって、インフルエンス能力のある編集者が最強の時代になると思います。「TSUTAYA」に行くと映画監督の名前で作品がまとめられているように、本屋さんで、編集者ごとの棚が出来てもおかしくない。でも、そこってほとんど誰も目指していないんです。編集者って傾向的にみんな性格がよくて縁の下の力持ちタイプが多いですからね。SNSでフォロワーの多い編集者はいても、エッジがたっている人はあまりいない。著者や会社ありきの存在だから、黒子の編集者が無茶苦茶なこと言って炎上したりしたら、大問題だっていう考えもあるでしょうね。

渡辺:荒々しさもあるような読モ編集者のポジションが空いていたと。

箕輪:おいしいなと思って。まあ誰もなりたくないんでしょうね(笑)。

「箕輪編集室」は出版業界の黒船的存在になる

渡辺:最近ではオンラインサロン「箕輪編集室」も注目されていますよね。

箕輪:実務はやらずに、教祖的な立場でやっています(笑)。運営してみてわかったオンラインサロンの強みは、参加者のモチベーションが100%だということ。たとえば、表紙のデザインを募集したら、1時間で10案集まるんですよ。これからコンテンツをつくるのはそういう熱量の高い人の方が向いていますよね。この編集室は、まったく新しい出版社として機能すると思います。

渡辺:サラリーマン的ではない編集組織になってるんですね。

箕輪:この場所で、幻冬舎を含めた旧来の出版社が嫌がる新しいことをどんどんやろうと思っています。会社ではできないゲリラ戦を勝手にやっていこうと。僕は幻冬舎の社員という立場でもあるんですけど、見城さんには「出版界を襲う黒船が来たときに、その黒船を操ってるのが僕だったら良くないですか?」って伝えています。そしたら、「確かにそれいいね」って言ってくださいました(笑)。見城さんほど新しいことをしてきた人はいないから、誰よりも新しくて無謀な挑戦を応援してくれます。

渡辺:箕輪さん、見城さんを納得させるのも上手いんだよなぁ(笑)。

箕輪:いやいや、本音のぶつかり合いです(笑)。出版社の役割って要素分解すると「流通」「宣伝」「編集」がありますが、今後、SNSネイティブの時代になれば残っていくのは「流通」だけじゃないかと思うんです。宣伝は、例えば堀江さんの1ツイートの方が新聞広告なんかより影響力が出てくるでしょう。編集も、たとえばアマゾンと著者が直で契約して、そこにポイントで関わるようになったりするかもしれない。だから、将来的に出版社は紙の本を流通させる機能だけ受け持つ可能性はある。 コミックがあるところはまた違うし、出版社が生き残る方法もいくつかあるので、こう単純にいくとも思いませんが。

渡辺:なるほど。

箕輪:まあでも、このままいけば用ナシになる贅肉はたくさんついているからこそ、キングコングの西野さんみたいにやれることは無限にある。このまま出版社が変わらずにいけば、価値を生み出してない出版社の社員の給料を読者に負担させてるだけになってしまう。それなら、僕は誰よりも読者目線の編集者でいようと思っています。世の中は明らかに変わっているので、その変化に直面したとき、「僕、前からやってましたよ」と言いたいなと(笑)。

日高のコラム本の魅力は、組織で働く人に寄り添って書かれていること

渡辺:最近は、当社副社長の日高の本も担当されているとか?

箕輪:絶賛、準備中ですね。「組織の毒薬ーーサイバーエージェント副社長の社員にあてたコラム」というタイトルで、8月30日に発売します。

渡辺:社内限定で配布していた「ESSENCE OF SGE」を出版したいと持ち掛けたんですよね。日高の本はどこが魅力的だったんですか?

箕輪:売ることを前提に作った本ではなくて、自社で働く人に本気で読んでもらいたいと思って書いたメッセージであるという点ですね。そもそも売ろうと思っていないので、会社をよくするため、社員を伸ばすために伝えたい内容が、徹底的に考えて書かれています。

渡辺:それをのぞき見しているような感覚、ということですね。

箕輪:そうですね。社員に対して本当に「気付いて欲しい」と思っていることが伝わってくる。だから、読む方も心を打たれると思います。社員じゃなくても刺さる人は確実にいる、そう思って出版を打診しました。日高さんは、「本を出すつもりで書いてないんです」と困っていましたが(笑)。

渡辺:文章も絶妙なんですよね。極論でもないし、凡庸でもない。

箕輪:ピュアで真っ直ぐな文章ですね。極論じゃないけど本質をついているところは、藤田さんの書く文章とも似ている気がします。率直に言うという、サイバーさんの文化も表れていますよね。誤魔化さずに考えを伝えるけど、誰も傷つけない。

渡辺:本の発売、楽しみですね。箕輪さんが担当してくれたらまた売れそう。

箕輪:社員の皆さんも、ぜひ買ってください。まず、それで8000部は見えています(笑)。

 組織の毒薬 サイバーエージェント副社長の社員にあてたコラム (NewsPicks Book)
組織の毒薬 サイバーエージェント副社長の社員にあてたコラム (NewsPicks Book)
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