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Interview

【アメブロ×はてな対談】
「いま、ブログ伸びてます」
―オワコン扱いだったブログ再成長の理由

ブログが一般に普及してから10年以上が経過した。以後、様々なSNSが登場し、人々のネット上での情報発信形態はより多様化している。そんな中、「老舗」ツールともいえる「ブログ」はこれからどうなるのか。昨今、小林麻央や市川海老蔵のブログが大きな注目を浴び、情報発信ツールとして再評価されている機運がある。 そんな中、一部からは「対極」とも評される『はてなブログ』と『アメーバブログ』の責任者が、ブログの役割やブログの未来について語り合った。(聞き手:日経BP総研 マーケティング戦略研究所 上席研究員)

品田英雄(以下、品田):今日はよろしくお願いします。まずは、お二人の自己紹介をお願いします。
 

若村菜摘(以下、若村):私はサイバーエージェントに2010年度の新卒として入社し、今年で30歳になります。アメブロを担当し始めたのが1年半前で、今はブログのプロダクト全体を担当しています。アメブロは10年以上の歴史があるサービスですが、この1年事業として大きく数字を伸ばせたことを評価してもらい、今年度の社員総会でも賞をいただきました。改めて、社内でもブログが注目されているように感じています。

松本尚哉(以下、松本):私は、はてなに2013年に入社し、今は5年目の41歳です。はてなブログにジョインしたのは2014年の初めです。サービス開始から3年目を迎えて軌道に乗り始めた時期であり、かつ企業向けのオウンドメディアCMS『はてなブログMedia』を立ち上げた頃でした。以来、現在まで個人ユーザー向けの『はてなブログ』と企業向けCMSの『はてなブログMedia』、そしてCMS導入企業に提供しているコンテンツ(記事)制作支援サービスの全体を見ています。

品田:僕は2006年頃、はてなの取材をしていました。確か、はてなってあの頃立って会議とかしていましたよね?

松本:そうです。今も短い会議などは立ったままやっていますよ。当時は、創業者の近藤淳也が『「へんな会社」のつくり方』(翔泳社・2006年)という本を出した頃ですよね。10年以上経って、近藤が社長から会長になったり、人数が増えたりというなかでいろいろな変化はあったと思いますが、いまだにユニークで、はてならしいカルチャーは残しながらスケールしてきているという感じです。

品田:さて、お互いの社風はどう見えていますか?

若村:はてなさんは、面白いものを作ることに集中していて、世の中の半歩先を見ていらっしゃる印象です。お互いのブログサービスとしてのユーザーターゲットが対照的なので、開発陣もそういうユーザーを理解し、シンクロしている人、と考えると社風も対照的なのかなと。

品田:世間的にサイバーさんは華やかな会社に見えていると思いますが、松本さんの目にはどう見えていましたか?

松本:事業を展開していくうえで、マスに出ていくパワーと、忍耐力がある会社というイメージです。藤田(晋)さんがインタビューなどで「アメブロは黒字化するまで時間がかかった」お話しされているのを拝見しましたが、黒字化に向けて忍耐強く投資を続けるというのはすごいと思います。いまですと、AbemaTVなどもすごく大きく展開されていますよね。そうやって打って出るパワーの強さがすごいと思っています。

はてながユニークなユーザーに支持されるワケ

品田:最近はてなさんは業績伸びていますよね。何をやって伸びているのですか?

松本:はてな全体では、法人向けサービスが拡大してきています。はてなブログやはてなブックマークといった個人ユーザー向けのサービスも順調ですが、ここ数年は企業向けのコンテンツマーケティング支援や、サーバー監視サービス、あとは企業様と一緒に取り組む共同開発の事例が増えています。

品田:企業のコンテンツマーケティング、というと?

松本:私が担当している企業向けのオウンドメディアCMS「はてなブログMedia」と、オウンドメディアのコンテンツ制作支援、そしてコンテンツを掲載するネイティブ広告枠の販売です。はてなの編集チームによるコンテンツ制作支援では、編集部やライターさんによる記事のほか、はてなブロガーさんに寄稿をお願いして記事を書いていただくなどしています。

若村:すごくいいシステムですね。ブロガーさんって非常に良い記事の書き手でもありますし。

品田:一方で、アメブロの伸び方は分かりやすいんですよね。「メジャー感」があります。アクセス数が圧倒的に多いから、収益化するイメージがある。はてなはコアなブログが多いけれど、どうビジネスにするか? 人をどう集めるか? というのが、外部の私たちからするとちょっと分かりにくいところがありますが。

松本:はてなのサービスに集まるユーザーさんはユニークな方が多い。ユニークな方々が集まる世界は純粋に面白いと思います。「はてなブックマークやはてなブログには面白いコンテンツある」と思っていただけているのかなと。インターネットが大好きなメンバーが集まって、はてならしいサービスを提供し続けることで、ユニークなユーザーさんが使い続けてくださる。それを真面目にやり続けてきた価値が、どんどん花開いてきたのだと考えています。
 

ブログは“オワコン”なのか

品田:インターネットの表現ツールの状況が次々変わる中、ブログはオワコンでは?といった意見もありますが、実際はどうなんでしょうか?

若村:アメブロはブラウザ・スマホアプリともに現在再成長しています。特に最近はアプリが好調です。DAUは昨年から30%以上増えていますし、毎月伸び続けています。また、スマホが普及したことにより、アプリを通じて家でも外出先でもブログを見たり、投稿したりする人が増えました。

松本:はてなブログもリリース以降ずっと成長を続けています。アメブロさんはアプリが伸びているとのことですが、はてなブログはいまだにPCから投稿する方の比率が高かったりします。2011年にはてなブログを立ち上げた際は2003年に立ち上げた『はてなダイアリー』から移行してきたユーザーさんが多かったのですが、今は完全にはてなブログ独自の成長を果たしています。

品田:ダイアリーからブログに変わって、ウケるコンテンツは変わりましたか??

松本:エンジニアや男性が多かったダイアリーに比べて、ユーザー層が広がった分、盛り上がるコンテンツも裾野が広がってきた印象はあります。

品田:裾野が広がったことによって人気になったブログはどんな特徴があるのでしょうか?

松本:やはり昔から読み応えのあるブログが人気ですが、その点は変わっていないと思います。たとえば料理ブログでも、こだわって撮影された写真とともに、レシピが詳細に書かれていたりします。育児ブログであっても、お子さんとの日常というよりは、失敗から学んだことや解決策、日々の子育ての工夫を整理して書いている方などが目立ちます。テーマはさまざまでも、伝えたいこだわりとか専門性のレベルが高いブログが多いですし、そういった読み応えのあるものは人気になる傾向があります。
加えて、はてなは元々社会的というか、オピニオン的な記事が発信される流れがあります。はてなブログではありませんが、匿名で記事を投稿できる「はてな匿名ダイアリー」で保育園の待機児童のことが書かれたり、最近ではPTA関連の記事も話題になったりしていました。匿名ダイアリーやはてなブログの記事を起点に、ひとつの話題がどんどん広がっていくというのがはてならしい世界観で、それがはてなを飛び越えてより広く発信されていくというのは特徴的だなと思います。

若村:アメブロは同じ育児ブログでも日常のエピソードをつづった読者の共感度の高いブログが人気となる傾向にあります。ブロガーさんが体験したことを読者も自分のエピソードと重ね合わせて読むような感じでしょうか。同じような体験をしたり悩みを抱えたりしているので、自分の想いや体験をそのブログにコメントして共有することによって、一種のコミュニティのようなものが形成されています。

ユーザーにいかに「お膳立て」するか

品田:読んでいた人が発信する側に移るハードルを低くする工夫はしていますか?

若村:デザインやUI面で投稿しやすいプロダクトにするのはもちろん、ブログのネタふりなどを含めた投稿アシストは積極的にやっています。手軽に発信できるSNSの広がりもあり、文字を書かなくてはいけないブログを書くハードルは高くなっていることは理解できます。ですので、ユーザーさんが楽しみながらブログを書くに至る「あと一歩」の後押しをしようと心がけていますね。その一歩を踏み出せば他のSNSにはない世界が広がると思っています。

品田:はてなさんもそのようなことはやっていますか?

松本:はてなでは気軽さというよりは、読み応えのある記事の投稿を集めるような目的でキャンペーンを行っています。はてなブログのユーザーさんって、運営側がけっこう高いハードルを設定してもついてきてくださるんですよ。ある企業様とのタイアップでマナーキャンペーンをやった時、電車のマナーに関する投稿を集めたことがありました。電車のマナーに関するブログの投稿なんて、難しいし、デリケートなものですよね。

品田:そうですよね。主観的であり過ぎてもまずいし、かといって、マナー向上には多少の批判精神もなくてはならない、ブログの書き手としては腕が試されます。

松本:難しいお題かなと思いつつ始めたところ、予想に反してとても良い投稿が集まりました。あとは、はてなブログのチームには編集者が数人いるので、実際に記事に目を通していいブログを見つけ出し、その方にインタビューして記事にすることもあります。盛り上がっているトピックやブログのピックアップは工数をかけて、目視でも行っています。はてなは技術の会社ですし、日々テクノロジーを追及していますが、本当にいいものはテクノロジーだけでは抽出できないものです。きちんと人の目で見ることも大事にしています。

品田:一方、アメブロはイメージからすると、本能を直撃するものがドーンと上位に上がるような気がします。そこから人気ランキングが代わったりしてトレンドを感じますが、いいブログを集めるためにどんな工夫をしていますか?

若村:弊社には「ブログコンサルタント」がいます。著名人の皆さんはキャラクターによって読者に興味を持たれやすい内容や伝わる記事の書き方も変わってくるので、お一人お一人にオリジナルの提案をしています。テクノロジーだけではないというのはアメブロも同じですね。
また、アメブロは著名人ブログのイメージが強いと思うのですが、現在は一般ブログの盛り上げにも力を入れています。価値のある情報を発信している一般ブログは数多くあるのですが、見られる機会が少なく埋もれてしまっているという課題がありました。これを解決するために、ブログジャンルを一新して公式ジャンルを作り、ブログと出会いやすい場を作りました。結婚準備レポや妊娠記録などのライフステージに関するもの、犬との生活やインテリア・DIYといった生活や趣味に関するものなど60近いジャンルを用意しており、今後も追加予定です。
公式ジャンルに所属するにはそのジャンルにマッチした記事をきちんと書いていることが条件になっています。リリースしてから1か月ほどで10万を超えるブログがジャンルに参加していて、公式ジャンルで取り上げるため、毎日1万件以上の記事を運営スタッフが見ています。
他にも、一般のブロガーの中でも特に魅力的なコンテンツを発信している方を『Ameba公式トップブロガー』として認定する取組も行っています。トップブロガーの方々だけで昨年1年で60冊もブログが書籍化されているんですよ。

品田:著名人の皆さんは日常ネタや生活ネタを中心に発信されていますが、一般のブロガーも同様ですか? 

若村:人気の一般ブログの傾向としては、「多くの方に共感されるブログ」と「何かの情報に特化したブログ」が挙げられます。
たとえば「Ameba公式トップブロガー」には多くの育児ブロガーさんがいらっしゃるのですが、日常の些細でほっこりとするエピソードを4コマ漫画で綴っている人気ブログも多く、読者からの共感を得ています。一方で、何かに特化した専門ブログの例としては、ディズニーランド好きの方にはすごく有名な吉田さんファミリーのブログがあります。日々ディズニーランドに通われていて、アトラクションの混雑からグッズの情報まで詳しく書かれているので、ディズニーファンにはすごく有益な情報が紹介されています。

品田:最近特に注目している書き手とかはいらっしゃいますか?

松本:はてなブログには様々なこだわりや専門性を持ったブロガーさんが多いですが、その中でも最近で際立っていたのは、昭和基地でブログを書いている方です。日常をつづった記事ではありますが、なにせ場所が南極の昭和基地なので、日常自体がすごいんです。南極でもインターネットできて、ブログ書けるんだということが実感できて、なんだか新鮮な感じがします。

ブログの良さは「愛おしさ」だと再認識

品田:最近だとInstagramをはじめとしたSNSが大ブームですが、ブログへの影響ってどんな感じでしょうか。

松本:SNSの影響でブログを書かなくなったという方もいらっしゃるとは思いますが、はてなブログは長い文章を書かれる方が多いので、マイナスの影響は受けていません。むしろ、記事がソーシャルに波及していくことで、より多くの方に読まれるといったプラスの影響のほうが圧倒的だと思います。SNSの拡大が、はてなのプラットフォームをより成長させていると感じています。
 
品田:書くってのいうのが大切だ、っていうはてなからすると相乗効果なんでしょうかね。 写真一発で説明できるようなコンテンツについてはどう思っていますか?
 
松本:写真やコミックエッセイは面白いですし、私自身も大好きです。ただ、それらとはまた違う力がテキストの表現にはあると思います。短文や写真1枚のSNSの投稿では伝えられないものがブログにはあると考えているので、SNSが広がれば広がるほどブログの存在価値は残り続けると思っています。
 
若村:正直、アメブロは一時期、TwitterやInstagramの影響を受けた時期もありました。アメブロには「短文+写真」といった形式のエントリーが多かったので。ただ、今はまた新たなフェーズに来ていると思います。ユーザーを食い合うというよりは、「使い分け」されている印象です。SNSにハマればハマるほど、伝えたいことが伝えきれないと感じる方が多いのでしゃないでしょうか。最近アメブロを始めてくださったインスタグラマーの方の中には、Instagramを更新する際に「ブログで別ショットを載せています」とか「書ききれない思いはブログで」などと投稿して、ブログをうまく使い分けている方がたくさんいらっしゃいます。
 
品田:伝えたい思いを分けているということですね。
 
松本:ブログはユーザーさんにとって一つの作品のようなもので、書き手はもちろん、読者も愛着を持っています。SNSとはまた違う、自分のホームみたいなものなんじゃないかなと思います。
 
若村:ブログの良さはなんだろう?とチームで改めて話した時に「愛おしさだよね」と再認識しました。ブログには自分が心を動かされたエピソードを書くことが多いので、積み重ねていくと人生のターニングポイントや大切な思いが詰まった自分オリジナルの作品のようになります。伝えたかった思いが残っていくことには価値があり、その一つ一つの記事の重みには自信があります。
 
品田:最後に、これからの両サービスの展望について教えてください。
 
松本:個人ユーザーさん向けの「はてなブログ」と企業向けCMS「はてなブログMedia」の両方を提供している強みを活かしていきたいです。CMS向けのプロ仕様の機能を個人ユーザーさん向けに積極的に提供し、こだわりのある書き手のみなさんに快適にお使いいただけるブログサービスを目指します。一方で、初めてブログを書く方にとっても、簡単で使いやすいサービスにしていくことで裾野を広げ、インターネットに良い記事が生まれる仕組みを作っていきたいと考えています。企業から個人まで様々なレイヤーで書き手が活躍し、インターネット上が優良なコンテンツで溢れるために尽力することは、はてなのミッションに通じるものです。これからもはてならしさを失わず、良いコンテンツが生まれるお手伝いができればと考えています。
 
若村:アメブロは「運命のブログとの出会い」をテーマとして掲げています。結婚や妊娠など、ライフステージが大きく変わるときにブログがとても参考になった、という声はよく聞きますので、より多くの方が自分を重ねあわせられるようなブログに出会える仕組みを提供したいなと考えています。
 
もちろん、もっと多くの方に見ていただきたいですし、SNSとの共存も図っていきたいですね。ブログだからといって必ずしも長文テキストを書く必要はないと考えているので、これからのアメブロが新しいライフログの残し方をこれから切り拓いていきたいと思っています。
 

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