Interview

サイバーエージェントを
次のステージに押し上げる事業を
つくれるかが問われている

Profile

  • 卜部宏樹
    株式会社サイバーエージェント取締役
    株式会社AbemaTV取締役副社長


    2010年入社。同年7月に株式会社アプリボット設立、取締役就任。2011年2月に代表取締役社長就任。2014年4月にサイバーエージェント執行役員、2014年12月にサイバーエージェント取締役就任。2015年4月には株式会社AbemaTV取締役副社長就任。

新卒取締役が生まれた理由

「スマートフォンの会社をつくるから、そこでやらない?」 新卒で入社して1ヶ月半ほど経ったころに、当社社長の藤田から呼び出されて言われたこの言葉。これがきっかけで、アプリボットの設立に携わることになりました。2010年当時、国内スマートフォン出荷台数は総出荷台数の22.7%。翌年の2011年には過半数に達するなど、急激なスマートフォン市場の伸びが予想されていました(※1)。それまで、PC・フィーチャーフォン向けにサービスを提供したサイバーエージェントでしたが、スマートフォンが普及する前に関連サービスに着手しなければ、と設立されたのがアプリボット。内定者時代から新規事業プランコンテストに応募したり、入社当時から「新規事業がやりたい」と藤田に直談判し続けていたこともあり、それならばと声をかけてもらったようです。とはいえ、一社員としての参画だと思っていたので、設立の手続きをしているときに「取締役は卜部ね」と、当社副社長であり、アプリボット社長に決まっていた日高から言われたときは面食らいました。今でこそ入社1年目で子会社の経営を任される例はサイバーエージェントでは当たり前になりましたが、そのときは前例が無かったですから。 ※1 出典:MM総研

華々しくメディアに取り上げられた裏に隠された葛藤

会社設立してから、まずはスマートフォンアプリの受託でつないでいる状態が数ヶ月続きました。その後、スマートフォンアプリをいくつか立ち上げたものの、まったくヒットに結びつかなくて。「新卒入社3ヶ月で子会社取締役に」なんてメディアにも取り上げられたこともあり、成果が出せていないことが本当に恥ずかしくて。悔しさとプレッシャーでいっぱいでした。そんな中、アメリカで伸びているアプリにヒントを得て開発したアプリがヒット。2011年2月のアプリのリリースと時期を同じくして、社長に昇格しました。ただ、それまでもアプリボットにコミットしている取締役は自分だけで、肩書きこそ違えど、社長と同じくらい会社に対して責任を負っているという気持ちでいたので、自分の中では何も変わらなかったですね。

黒字事業を捨ててまで、ゲーム事業で勝負

そんな中、「ギャング」をテーマにしたゲームを開発したいというメンバーがアプリボットに異動してきたことで、スマートフォンゲームに参入することに。それまでにリリースしていたアプリは順調に収益を上げていていましたが、とはいえ、収益の限界は見えていました。ゲーム市場は桁違いに大きいと感じていたのと、スマートフォンゲームはこれからという時期だったので、思い切ってそれまでの事業を他の子会社に譲渡し、スマートフォンゲーム事業1本で勝負することを決断。しかし、開発を進めるものの、なかなか自信を持って世に出せるレベルのものが出来上がらない。もう、プライドも何もないと思い、同じゲーム事業子会社で当時ヒットゲームを出していたCygamesに教えを請いて、ヒットゲームを生み出すノウハウを学んだんです。

ヒット創出と、1年で撤退した海外事業

「とにかく大きなことをしたい」「1年ごとに売上高の桁が変わるような成長をさせたい」僕をはじめ、アプリボットの役員陣全員そう考えていたから、必死でした。そして、Cygamesで学んだことをもとに開発した「不良道~ギャングロード~」がAppStoreの売上ランキングで1位を獲得する大ヒット。世界共通のプラットフォームがあるスマートフォンだからこそ、世界でもヒットアプリを生み出せるはずとリリースした「Legend of the Cryptids」は世界各国のApp Storeの売上ランキングトップにランクイン。海外展開1発目のゲームがヒットしたことで、「世界でもイケる」と思ってしまったんですよね。今考えると、完全に勘違いなのですが(笑)「Legend of the Cryptids」はカードバトルでイラストが綺麗という、それまで海外のスマートフォンゲームでは存在しなかったニッチな市場を獲得しましたが、その市場は考えていたほど大きなものではなくて。一時期、アメリカに拠点も構え海外展開にチャレンジしましたが、1年ほどで撤退することになってしまいました。

4年弱で、社長を交代

スマートフォンゲームで躍進したアプリボットですが、僕が新たなミッションを任されることになり、2014年4月、浮田(現アプリボット社長)にバトンを渡すことに。そんな中、グループ社員が一堂に会するグループ総会で、新たな経営強化制度「CA18」が発表され、10名の執行役員が発表されたのです。「CA18」の導入自体、このとき初めて明らかにされたもので、ここに入れるのかどうか、発表されている最中は気が気ではありませんでした。「CA8(取締役)になる」と公言していたので、そもそもここで名前を挙げられなかったらどうするんだと、名前を発表されたときは、ほっとしましたね。

「CA8になる」とブログで宣言

サイバーエージェントの取締役は、2年に1度、原則2名が入れ替わります。「CA8」と名づけられたその制度は2008年から導入され、2014年10月は4回目の入れ替えメンバーが発表されるタイミングでした。その半年前に執行役員になっていたから、狙ってもいたし、いつ取締役に指名されてもいいように心積もりもしていたので、選任されたときは特に驚きもありませんでした。しかし、取締役になって初めて参加した役員会は議論もハードだし、話されている内容も、わからないことの連続で。8人いる取締役の中で、自分がどういったポジションをとったら良いのかも迷いました。「わからないことばかりだと思うけど、自分の考えを発言したほうがいい」とアドバイスを受けたこともあり、持ち前の空気の読めなさをいかして、役員会では発言しています(笑)

子会社社長とサイバーエージェント取締役との違い

サイバーエージェントの経営に携わって感じたことは、自分が事業にコミットしている執行の役割と、会社全体の経営という役割を切り替えるのは本当に難しいということ。時には、自身の事業と全体最適とで、利益が相反することもある。ほかの取締役陣はここをうまく切り分けて議論ができていて、自分でもまだまだだなと実感しています。このほかに、子会社を任されていた頃とサイバーエージェントの取締役になって変わったことといえば、自分が関連する事業以外の社員との接点を増やすようにしたことですね。社長の藤田が、「サイバーエージェントは人が資産だから、社員を知らないのは会社を知らないのと同じで恥ずかしい」といった発言をしたんです。そのとおりだなと。それからは、担当事業に関わらず、幅広い部署の社員と接点を持つようにしています。

上には上がいるからこそ、どこまでも上を目指していきたい

「新規事業をやりたい」「CA8になる」 そう発言していたと聞くと、ものすごい出世願望の塊のように思われるかもしれませんが、決して肩書きや権限が目的だったわけではありません。自分が関わることで、世の中に大きな影響を与えるものを生み出したい、その手段として肩書きをわかりやすい目標としていたんです。ゲームでヒットを生み出したといっても、他を見てみたら上には上がいる。そこそこのヒットじゃ満足できないし、もっと多くの人に利用されるサービスを生み出したい、もっと業績的にもインパクトのあるものを生み出したい、その上でどこまでも上を目指していきたい。今はテレビ朝日との合弁会社の副社長として、今冬にリリース予定の多チャンネル動画プラットフォーム「AbemaTV」を準備中です。ゼロからの立ち上げは常に手探りで、時間もリソースも限られている中でクオリティの高いものを生み出さなければいけない。「AbemaTV」を社会的にインパクトのあるメディアにし、サイバーエージェントを新たなステージに押し上げるというのが、今の目標。そういう事業を生み出せるのか。自分にとって大きなチャレンジです。

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