こんにちは。本記事では弊社で行われている「テクニカルクリエイター研修」その中でもエンジニア向けに行われた研修の第一回についてレポートさせて頂きたいと思います。

テクニカルクリエイター研修とは?

弊社では「デザイン」と「エンジニアリング」を繋ぐ存在として「テクニカルクリエイター」を定義し、採用・育成を進めています。この育成活動の一環として「テクニカルクリエイター研修」が企画されました。

この研修は現在のところ大きくデザイナー向けとエンジニア向けのものがありますが、エンジニア向け研修の大目的は「デザインの基礎を学び モノの見方や、美意識を養う」こと。弊社デザイナーの皆さんに講師として協力して頂いて実現しています。

今回取り上げるのはエンジニア向けの研修の第1回として行われた「テクニカルクリエイターを目指すエンジニアのためのデッサン講座」です。

今回の研修に参加するエンジニアは主にフロントエンドの開発に携わっているメンバーとなりました。一口にフロントエンドと言ってもWebのフロントエンド、iOSアプリ、Androidアプリ、Unityのエンジニアと普段の業務も様々。デッサン経験についても、美大出身で経験のある人から全く経験のない人まで幅広く参加しています。
僕はというとデッサンの経験は無く、普段はゲームエンジンを使ってロジック部分を書くことの多いエンジニアです。

研修オリエンテーション

研修がはじまる前に、研修の趣旨や事前準備についてオリエンテーションが開かれ、ここで初めてカリキュラムが公開されました。今回、第1回の課題は

白い卓上に置かれたモチーフ「レモン」をデッサンしなさい
※できるだけリアルに、魅力的に描く事


会場にどよめきが。デッサンとかするんだ…!と思ったのもつかの間、説明を聞いていくと衝撃的な一文が。

デザイナーのためのデッサンに「センス」は要りません

おおお…。

僕の中で「デッサン」ってセンスの塊みたいなイメージの言葉だったのですが、違うんですね。デッサン自体は「技術」。練習すれば誰でも上手になる(練習時間は相応に必要でしょうけれども)とのことです。

想像以上にガチな印象の研修内容に気合が入りました。

鉛筆の削り方

オリエンの直後、事前準備として、デッサンに必要な道具一式が配布され、鉛筆の削り方の説明が始まりました。
僕はネリケシとか使ったことがなかったのですが、一式渡されてまたテンションが上ります。
「みなさん鉛筆を削ったことありますか?」

デッサンに使う鉛筆は、ナイフで手作業で削るとのこと。僕は小学生の頃ナイフで削るように指導された事があって、削った経験自体はあったのですが、久しぶり。カッターは動かさず、鉛筆を動かして削ります。
普段鉛筆を使う時よりも(普段使いませんが)細く長く削っていきます。こうすることでより鉛筆を寝かせて描くことができます。

デッサンの開始

いよいよ実際にデッサンを行っていきます。

事前のオリエン時に教わったポイントは大きく3点。
  • とにかく「観察」すること。デッサンとは「観察の痕跡」である。
  • アウトラインからの脱却=空間の意識
  • 元気よく描く&直す
「キレイに描くのは2の次、ガンガン手を動かして楽しみましょう!!!」

これらを踏まえた上で、よーいドンでデッサンの開始です。

 レモンの置き方、画用ボードの置き方、鉛筆の持ち方

入室時に袋に入ったレモンを手に取り、画用ボードを受け取り、席に着きます。
しかし、まずそもそも画用ボードやレモンをどう置いたり持ったりすればいいのか分かりません。

講師の方に説明してもらって落ち着いたのがこちら。
画用ボードは斜めに立てかけて…鉛筆はこう、握るようにして持つんですね…!

「アウトラインからの脱却」だけをまずは意識して見た感じ暗くなっているところから描いていってみます。ガリガリ…

デッサンと観察
何となく形が描けてきたかなと思った頃、その時の僕の絵は輪郭を描いてるわけではないものの、全く立体感は捉えていない絵だったと思います。うーん、ここからどうやって描き進めたら良いんだろう。そこで講師の方を捕まえてそのまま質問をしてみました。

すると、「僕があまり手を加えてしまうのは良くないのですが」と言いながら、ざっくりとレモンを3面くらいに塗り分けてくれました。「ここが一番暗くなっていて、ここは反射光があるので少し明るくなっていて、ここはハイライトになっていますよね。まず情報量の大きなところから描いていって、段々と細かな情報を描き足していくんです

そこでひとつピンと来ました。なるほど。僕は「観察してリアルに見えたままを描く」を、スキャナとインクジェットプリンタのような感じで再現しようとしていました。眼で見て、それを写す。そこに「観察」がありませんでした。確かに写真のように描くという意味では最終的にはそれでも良いのかもしれませんが、目に見える対象物を一点ずつ正確に転写していくことは僕にはできませんし、そこにわざわざ今回デッサンをする意味は無さそうです。

デッサンの過程の「観察」とは、みたものを咀嚼して自分の中で客観的に解釈することなのかなと感じました。その中でまずはそれをそれたらしめているものの中で一番大きな部分を描き、そこから徐々に細部を描くようにしていくと良い、と。

今回の課題である「できるだけリアルに、魅力的に描く事」に沿うと、それたらしめているもので一番大きな部分とはおおまかな形であり、なのでまずはそれをしっかり捉え描いていくのが良いのだろうと思いました。

実際、レモンの特徴として「ぶつぶつしている」というイメージがあったのですが、そこを細かく描き込まなくてもレモンであることは分かったりして、つまりぶつぶつしていることはかならずしもレモンをレモンたらしめている大きな要因ではないのかもしれないというのが発見でした。

ひとまずの完成
考え方の他、基本的なテクニックに関しても講師陣から沢山のアドバイスを頂きました。
  • 下が暗くなっているからそこだけに意識が行きがちだが、下が暗くなっているのはそのような立体構造があるため
  • 時々立って離れて見るとバランスの悪さが分かる
  • 大局と詳細を行ったり来たりしながら描き込んでいく
  • ティッシュのようなものでこすることで色が画用紙の目に入り込んで、濃さが変わる
  • 光や影だけの情報に異なるタッチの線で描いた情報を乗せると、種類が違うから、紛れてしまわない
などなど、細かなアドバイスひとつひとつが普段全く考えたことのないことについての内容で、とても刺激的でした。色々なツールを駆使して、どのように使うとどのような表現ができるのか考えて描く、使い方は無限大。なんだか夢中になってしまいました。

およそ2.5時間で時間切れとなりました。

講評
全員のデッサンの結果を並べて講評の時間です。みんなこんなに色々な形のレモンを描いていたんですね。

基礎的な知識としてモノの見た目を構成する色・光・形について、またどうすればそれを伝えることができるのか、表現のテクニックについて説明を受けました。
そして最後の話で印象に残っているのは、最終的に「何を表現したいのか」が重要だということ。デザイン なので、問題解決のために何を伝えたいのか、何を伝えれば問題が解決するのか、観察して客観的に捉え、表現していくということを学びました。

研修を終えて

デッサンの研修を終えたわけですが、今回のゴールは絵をうまく描けるようになることでは無いと思っています。
デッサンを通して、なぜそのように見えるのか?構成要素は何なのか?何故そのような構成になっているのか?と観察し、ブレークダウンして考えるきっかけになりましたし、どうすればリアルに描けるのか?伝わるのか?その表現方法を考えるきっかけにもなりました。
さらにそのような考え方はデザイナーの方と話すための共通言語になると思いますし、もっと広い範囲に適用できる考え方だと思いました。
今回の経験をサービスのクオリティ向上に活かすと共に、次の研修も気合を入れて臨みたいと思います。