プレスリリース

AI Lab、推薦システム分野の主要学術誌「ACM TORS」のHighlights of RecSys '24に論文採択

―マッチングプラットフォームにおける公平性とマッチ率のトレードオフを改善する新手法を提案―

AI

株式会社サイバーエージェント(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:山内隆裕、東証プライム市場:証券コード4751)は、人工知能技術の研究開発組織「AI Lab」の研究員である冨田燿志および、東京大学の横山智彦氏※1による論文が、推薦システム分野の主要学術誌「ACM Transactions on Recommender Systems (TORS)」の「Highlights of RecSys '24」に採択されたことをお知らせいたします。

「ACM TORS」は、推薦システムにおける最新の理論や技術を扱う、ACM(Association for Computing Machinery)が発行する権威ある専門誌です。このたびの「Highlights of RecSys '24」は、2024年10月にイタリアで開催された推薦システム分野のトップカンファレンス「RecSys 2024」において発表された論文から選出・招待された優れた研究を対象に、より発展的内容を加えた拡張論文が査読を経て採択・掲載されるセクションです。

背景:相互推薦システムの公平性の課題と、「RecSys 2024」における採択論文

求人紹介サービスやオンラインデーティングをはじめとするマッチングプラットフォームにおいて、ユーザーに他のユーザーを推薦する「相互推薦システム(Reciprocal Recommender Systems)」はサービスの根幹を支える技術です。従来の研究技術の多くはプラットフォーム全体のマッチ率の最大化を目的としていますが、その結果、一部のユーザーに推薦機会が集中し、他のユーザーに機会が回らないといった「不公平性」が実用上重要な課題となっていました。

このような課題に対し、「RecSys 2024」で発表した論文「Fair Reciprocal Recommendation in Matching Markets」では、公平分割における無羨望性の概念を用いてマッチングプラットフォームにおける推薦機会の公平性を定義しました。また、公平分割の分野で知られるナッシュ社会厚生関数を応用し、より公平な相互推薦手法を提案しました。

今回の採択論文の概要

Balancing Fairness and High Match Rates in Reciprocal Recommender Systems: A Nash Social Welfare Approach
 著者:冨田燿志(株式会社サイバーエージェント AI Lab)、横山智彦(東京大学)

本研究は、「RecSys 2024」で発表した手法を拡張し、大規模な実サービスへの導入可能性を高めた新手法を提案するものです。従来の公平性を重視する手法では、プラットフォーム全体のマッチ率と、全員に平等にチャンスを届けることの両立を緻密に制御することは困難でした。今回の新手法(α-SW法)は、マッチ率と公平性のトレードオフにおいてサービス全体の健全なバランスを保つための最適な制御を可能にしています。さらに、最適輸送の分野で知られるシンクホーンアルゴリズムを応用することで、計算速度を向上させた近似計算手法も開発しました。

今後
このたび採択された研究成果は、ユーザー一人ひとりに最適な機会を公平に提供することが求められる様々なマッチングサービスへの応用が期待されます。AI Labでは今後も、経済学と機械学習を融合させた高度な研究を通じ、当社の提供するサービスにおけるマッチング品質の向上や、より信頼性の高いプラットフォームの構築、ひいては社会課題の解決に貢献してまいります。


※1 所属は執筆当時