プレスリリース

AI Lab、自然言語処理分野のトップカンファレンス「NAACL-HLT 2022」にて主著論文採択 ― 効果の高い広告訴求を分析 ―

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株式会社サイバーエージェント(本社:東京都渋谷区、代表取締役:藤田晋、東証プライム市場:証券コード4751)は、人工知能技術の研究開発組織「AI Lab」に所属する研究員の村上聡一朗による主著論文が自然言語処理分野の国際会議「NAACL-HLT 2022」※1の「Industry Track」に採択されたことをお知らせいたします。なお、本論文は「AI Lab」の、張培楠、星野翔ならびに東京工業大学の上垣外英剛助教※2、高村大也特別研究員※3、奥村学教授による共同成果となります。


「NAACL-HLT」は世界中の研究者によって定期開催される国際会議で、「ACL」「EMNLP」※4と並び、自然言語処理分野(NLP)でもっとも権威ある国際会議のひとつです。
NAACL-HLT の「Industry Track」は、 NLP・AI 技術の産業応用の活発化に伴い、学術界と産業界を繋ぐために2018年に新設されたセッションです。本セッションでは、NLP・AI 分野をリードする世界中のトップ企業や大学に所属する研究員や開発者が多数参加・発表を行い、昨年の採択率はおよそ29%程度と、本会議と同様に難易度が非常に高いことで知られています。また、AI Labからは昨年のNAACL-HLT 2021に続いて2年連続の採択となります。このたび採択された本論文は、2022年7月にアメリカのシアトルで開催される「NAACL-HLT 2022」での発表を予定しています。


■研究背景
近年、インターネット広告市場の急速な成長に伴い、広告効果※5を最大化することを目的とした、AI技術を活用したクリエイティブ制作や運用の効率化が注目されています。「AI Lab」では、クリエイティブ領域における様々な技術課題に対して、大学・学術機関との産学連携を強化しながら幅広いAI技術の研究・開発に注力しています。

なかでも、自然言語処理分野の研究チームでは、より効果の高い広告テキストの制作に向けて、東京工業大学の上垣外英剛助教、高村大也特別研究員、奥村学教授とともに、広告テキストの自動生成技術や分析手法に関する共同研究に取り組んでいます。

論文の概要

Aspect-based Analysis of Advertising Appeals for Search Engine Advertising
Soichiro Murakami, Peinan Zhang, Sho Hoshino, Hidetaka Kamigaito, Hiroya Takamura, Manabu Okumura
著者:村上聡一朗(サイバーエージェント)・ 張培楠(サイバーエージェント)・星野翔(サイバーエージェント)・上垣外英剛(東京工業大学)・高村大也(東京工業大学)・奥村学(東京工業大学)


本研究は、さまざまな業種において効果の高い広告訴求を分析することを目的としています。
広告テキストは、ユーザに対しクリックや購買などの行動を促すために、1人1人にとって最適な商品情報・サービス価格・特徴および限定キャンペーンなどの広告訴求を提示することが重要です。さらに、ECサイトの広告では「限定キャンペーンに関する訴求」、自動車の広告では「品質や性能に関する訴求」を行うなど、業種を考慮した訴求を行うことでより一層の効果が期待できます。一方、これまで、どのような業種毎の広告訴求がユーザに好まれるかを推定するのは容易ではないという課題がありました。

▼業種毎の広告訴求のイメージ
このような背景のもと、本研究では「各業種の広告テキストにおいて効果の高い広告訴求の分析」を行いました。まず、広告テキストにおける広告訴求のタイプを体系的に整理し、それらを人手によりアノテーションした「広告訴求データセット」を構築しました。本データセットを用いることで、広告訴求のタイプを判定するモデルの構築が可能となり、各広告訴求のタイプと広告効果の関係性を分析できるようになりました。

本論文では、相関分析により各業種で効果の高い広告訴求のタイプを明らかにするとともに、広告効果の推定タスクにおいても、広告訴求を考慮することで推定性能が向上することを確認しました。

これらの実験結果から、今後の広告制作の現場において効果の高い広告訴求をあらかじめ提示することで、より効果的かつ効率的な広告テキストの制作に繋がることが期待できます。


■今後
本研究の成果は、人手による広告テキストの制作に加えて、当社で取り組む「広告テキストの自動生成技術」や「広告表現の理解」への活用等が期待されます。今後も「AI Lab」ではより効果の高い広告制作と運用を目指し、研究・開発に努めてまいります。



※1 「NAACL」The Annual Conference of the North American Chapter of the Association for Computational Linguistics
※2 現在は東京工業大学を離れ、奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科の准教授に着任
※3 本務:国立研究開発法人産業技術総合研究所 人工知能研究センター 知識情報研究チーム長
※4 「ACL」The Annual Meeting of the Association for Computational Linguistics
  「EMNLP」The Conference on Empirical Methods in Natural Language Processing
※5 広告効果とは、配信結果から得られるその広告の良さを測る指標の総称で、一般的には表示回数やクリック率、コンバージョン率、消化予算などを指すことが多い