プレスリリース

住民と自治体との ”心理的近さ” が、行政サービスのデジタル化ニーズにプラスの影響

~デジタルガバメントへの住民ニーズの鍵を探る サイバーエージェントと国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの 共同調査、第1弾~

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株式会社サイバーエージェント(本社:東京都渋谷区、代表取締役:藤田晋、東証一部上場:証券コード4751)は官公庁・自治体のDX推進支援を行うデジタルガバメント推進室において、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター、レジリエントシティ研究ラボと共に、デジタルガバメントに関する住民ニーズについて、様々な統計分析および機械学習を用いた共同調査研究を実施いたしました。

本調査研究は全3回の発表を予定しており、このたび第1弾の研究発表では、どのような人がデジタルガバメントへのニーズを抱えており、またどのようなことがニーズの高さに影響を与えるのかに関する全体の傾向についてレポートいたします。
第2弾以降では、住民がオンライン経由でどのような行政サービスの利用意向があるかなど、より詳細な内容をレポート予定です。

本調査研究の目的と概要
本調査研究は、デジタル技術を用いた暮らしのサービスや、暮らしの理想像に関する住民のニーズの把握を目的として、インターネット調査による結果をもとに様々な統計分析および機械学習を用いて回答傾向の分析を行いました。(分析手法の詳細は後述の注釈※にて説明いたします)
デジタルガバメント(以下、デジガバ)へのニーズは、12の質問(※1)に対する回答項目数の量によって計測し、「自治体との近さ(エンゲージメント)」と「住民が求める暮らしの豊かさ(ウェルビーング)」がデジガバへのニーズに影響を与えるという仮説のもと、今後の日本におけるデジガバが目指すべき姿を描き、サービス利用者である住民のニーズを明らかにします。


今回の調査結果から見えたトピックス

・住民が自治体との近さを感じるときは、地域の活動に参加したとき、選挙や住民投票のとき、災害が発生したときである。
・住民は地域イベント(お祭りや、屋外での催し)に参加することで、自治体との近さを感じるとともに、デジガバへのニーズが高まる。
・デジガバへのニーズが高い人は、安心・安全でお金の心配がなく、穏やかな暮らしを求める傾向にある。
・デジガバに消極的な層は存在するものの、年代が決め手にはならなかった。
・自治体とのコミュニケーションにおいて、住民に最も望まれている手段は“公式ホームページ”である。

本調査研究の主なFINDINGS

FINDINGS①:デジガバ推進の鍵は住民と自治体との心理的近さ

自分が住む自治体との”近さ”を感じるのは、「地域のイベントに参加したとき」「選挙や住民投票のとき」「災害が発生したとき」との結果が出た。
さらに、「自治体との“近さ”をどんなときに感じるか」という本調査結果に、デジガバニーズの高低の因果関係を明らかにするため、独自の線形回帰モデルを用いた統計的因果推論(※2)を用いたところ、デジガバニーズの高さにプラスの影響を与えるのは、「地域のイベント(お祭りや、屋外での催し)に参加したとき」に自治体との近さを感じるという回答項目であることがわかった(図)。

FINDINGS②:デジガバニーズが高い人は安心・安全な暮らしを求める傾向


住民が求める暮らしの理想は、安心・安全でお金の心配がなく、穏やかで充実した老後を送ることという結果が出た。
さらに、「暮らしの理想」に関する本調査結果に、デジガバニーズの高低の因果関係を明らかにするため独自の線形回帰モデルを用いた統計的因果推論(※2)を用いたところ、デジガバニーズの高さにプラスの影響を与える項目は「災害や犯罪から守られた安心できる毎日」「お金の心配の少ない暮らし」「静かで煩わされない暮らし」であることがわかった(図)。

上記FINDINGS①②より、住民のデジガバニーズをより一層高めるには、地域のイベントを積極的に開催する、あるいは安心・安全をテーマに住民との接点を設けることがポイントになると考察する。



FINDINGS③:デジガバに消極的な層は存在するものの、年代が決め手にはならなかった

本調査の全ての質問(※3)と回答の組み合わせ243通りに対する回答者の回答パターンから、潜在意味(トピック)を分析したところ、デジガバニーズに関する12の質問(※1)に対する回答の傾向が明らかとなった。回答の傾向分析には、トピックモデルの一種である潜在ディリクレ配分法(LDA)を用い、回答項目のトピックに対する関連性を表す確率を使用した。
回答項目と確率の行列に対して主成分分析を行い、第一主成分を横軸、第二主成分を縦軸に取ったバブルチャートを作成し、デジガバへのニーズが高い積極層とニーズが低い消極層の傾向を把握したところ、デジガバニーズに関する12の質問に対する回答数が少ない人たちは、居住形態について「配偶者や子供と同居している」、または性別について「女性」と回答する確率が高く、本調査におけるすべての質問(※3)に対して「どちらでもない」と答える傾向が強いことがわかった。
またこれらの人々は、「行政手続きのために直接役所に出向きたい」「マイナンバーカードは使いたくない」「特別定額給付金は郵送で申請した」と回答する一方で、リアルタイム情報や、自分の関心にあった情報を提供してほしいと回答する確率が高いこともわかった。
以上の結果をワードクラウドで表すと以下の図の結果となった。

図:デジガバニーズに関する12の質問(※1)に対して回答項目数が少ない人たちの傾向を表すワードクラウド

これまで、デジタルデバイドの議論で主な対象となっていたのは高齢層であったが、今後のデジガバ推進においては、より対象を精緻化した上でのアプローチや課題の把握が鍵となる。



FINDINGS④: 自治体の情報発信の基本は、見やすいホームページづくり


自治体とのやりとりの手段として、約6割(59.4%)が公式ホームページ、スマートフォンアプリが最も望ましいと回答。自治体の公式SNS(LINE、Twitter、Facebook、その他)は合計して7.7%にとどまった(図)。マルチチャネル化を進めるだけではなく、公式ホームページのUI・UX(ユーザー体験)を工夫する必要がある。




※1
デジガバへのニーズを尋ねた12の質問
Q1:オンライン市議さんに相談サービスの利用意向について
Q2:自治体から受け取りたい情報の形態について
Q3:暮らしの状況に応じたサービスの利用意向について
Q4:自治体ホームページの分かりやすさについて
Q5:自治体ホームページの分かりやすい箇所について
Q6:自治体ホームページの分かりにくい箇所について
Q7:自治体ホームページや情報誌で見たことのある情報について
Q8:SNSで行いたい行政サービスの種類について
Q9:LINEを起点としたサービス提供について
Q10:防災防犯のオンラインサービスへのニーズについて
Q11:新型コロナ対策のオンラインサービスへのニーズについて
Q12:マイナンバーカードを使った行政サービスへのニーズについて

※2
デジガバニーズの高低と「自治体との近さ」「暮らしの理想」に関する質問項目の因果関係を明らかにするため、線形回帰モデルを用いた統計的因果推論を実施。
被説明変数はデジガバニーズの高低(※1の12の質問項目に対する回答項目数から測定)、説明変数には「自治体との近さ」と「暮らしの理想」についての質問項目を用いた。また、被説明変数と説明変数の両方に関連する要因の影響を取り除く目的で、回答者の基本属性と現状の行政サービスのデジタル化への態度を尋ねた質問項目のうち、潜在ディリクレ配分法(LDA)で重要性が高かったものをモデルに追加した。

※3
本調査研究においてインターネットパネル調査時に利用した調査票。調査票の質問項目と回答項目は、ヒアリング調査の結果と関連する研究を参考に作成した。
 


■共同研究について

<共同研究主体>
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM) レジリエントシティ研究ラボ
GLOCOM1991は国際大学付属の研究所として1991年に設立され、学際的日本研究や情報通信技術の発展・普及に根ざした情報社会の研究と実践を活動の中心におき、産官学民の結節の場として、常に新しい社会動向に関する先端研究所であることを目指す研究所です。当ラボは、持続可能な社会や街づくりを目指し、地域課題の解決策の実践や、レジリエントでスマートな街づくりのデザインについて、デジタル活用の観点から研究しています。
研究代表者:櫻井美穂子
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授/レジリエントシティ研究ラボ代表
ノルウェーにあるUniversity of AgderのDepartment of Information Systems准教授を経て2018年より現職。専門は経営情報システム学。スマートシティ、DX、レジリエンス、サスティナビリティなどをキーワードに自治体や地域コミュニティにおけるデジタル活用について研究している。Hawaii International Conference on System Sciences (2016)およびITU Kaleidoscope academic conference (2013)にて最優秀論文賞受賞。実践研究活動として、ヨーロッパ7か国の大学や自治体が参加するEU Horizon2020「Smart Mature Resilience」プロジェクトに参画。日本では、自治体や企業との協働による「災害時コミュニケーションを促進するICT利活用に関する首長研究会」や「DX街づくり/ビジネスデザイン勉強会」を主宰。

株式会社サイバーエージェント デジタルガバメント推進室
官公庁・自治体向けに、行政の推進するデジタル化支援全般を行う専門組織です。


■調査概要

<ヒアリング調査>
アンケート調査票の設計にあたり、有意抽出の20代~50代の男女8名を対象としたヒアリング調査を2020年12月~2021年1月にかけて実施。

<インターネットパネル調査>
・調査主体:株式会社サイバーエージェント、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
・調査委託先:株式会社マクロミル
・調査時期:2020年2月22日~2月24日
・調査方法:インターネットリサーチ
・調査対象:全国15歳~89歳 4,129人(マクロミルのパネル29,027人を対象とした一次サンプリングで「自治体ホームページの閲覧経験がある」と答えた回答者から、全国15歳~89歳の4,129人を人口構成比に基づく割当法により抽出。)
※以下内訳
15-19才:230人 20代:474人 30代 :596人 40代 :703人 50代 :590人 60代 :692人 70代 :535人 80代 :309人


    

本リリースに関するお問い合わせ

株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部 広報
E-mail:honbu_pub@cyberagent.co.jp

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
E-mail : g-pub@glocom.ac.jp