• home.pngホーム    footpath_img.png    
  • FEATURES    footpath_img.png    
  • FEATURES一覧    footpath_img.png    
  • 「ユーザー体験とメディアマネタイズの重心を探す」CA Audienceの目指す世界(前編)
  • Interview
  • 2017.4. 4
  • facebook post

「ユーザー体験と
メディアマネタイズの重心を探す」
CA Audienceの目指す世界(前編)

 2016年7月にサービスを開始した「CA Audience」はインフィード広告SSP(Supply Side Platform)のCA ProFit-Xのサービスの一つとして開発されました。AIによる学習を通し、ユーザーごとに広告の表示回数、個数、位置などを最適化する機能は、AI Labとの連携による技術に支えられています。目的は「ユーザー体験とメディアマネタイズの両方を最大化するバランスが取れる重心を探す」こと。

今回は、AI Lab(エーアイラボ)所属の安井翔太さん、CA ProFit-X所属の松村郁生さんを迎え、「CA Audience」の思想や開発秘話、展望をお聞きします。

13561_ext_09_0_L.png?c3acce07cc115121627df4d836128ad7

(写真左)アドテク本部 CA ProFit-X 松村 郁生 (写真右)アドテク本部 AI Lab 安井 翔太

まず、自己紹介をお願いします。

安井:AI Labでデータサイエンティストをやっている安井です。因果推論モデルを使った効果検証から、機械学習を用いたプロダクトの予測モデルの導入・改善まで色々と楽しくやらせて頂いています。

松村:CA ProFit-Xでエンジニアをやっています。主にサーバサイドの設計・実装・運用を担当しています。

AI Labがどのような組織か教えて下さい。

安井:一言でいえば、アドテクスタジオ横断の分析及び研究組織です。様々な商品の開発チームと協力して、機械学習による予測モデルの開発を行ったり、それらを導入した事による効果の検証を行ったりしています。

 産学連携も行っており、データ分析に関連するアカデミックの世界にある最新の技術やアイデアをアドテクの世界に取り入れるという役割も担っています。僕自身は主にYale(イェール)大学の成田先生から計量経済学について色々教えていただきながら、広告の効果をネガティブな意味でもポジティブな意味でも検証するという事を行っています。「CA Audience」では広告業界では普段あまり注目されないユーザー体験への影響というネガティブな側面への対策を扱っています。

「CA Audience」について概要を教えて下さい。

松村:ユーザごとの文脈に応じて広告の数、位置、クリエイティブを出し分ける表示エンジンです。広告収益とユーザ体験の両方を任意のバランスで出し分けを最適化します。最適化のための変数には過去の来訪履歴、セッション内のタイミング、広告の閲覧履歴などのユーザ行動と、遷移率などそのページがもつ特徴を加味しています。

 

13561_ext_09_1_L.png?2147e253e9cf4bbcf445c8bec44f0c88

ユーザー体験を組み込んだ広告表示の最適化。当時、盛んでなかった「メディア側をデータで考える」という挑戦へ

開発をした背景はどういったものでしょうか。

松村:CA ProFit-Xが広告配信事業としては軌道に乗ってきた一方で、インフィード広告市場の過熱が意識されていました。この頃iOSの仕様変更に関連して広告ブロックの話題もしばしば挙がるようになっていました。そのような変化を受けて、業界でこれまで直接扱われることのなかったユーザ体験との両立を実現しようという話が持ち上がったのが出発点だったと思います。

開発にあたってのお話を聞かせて下さい。

松村:プロダクトの差別化のアイデアの1つとして 、ユーザー体験を組み込んだ広告表示の最適化をやろうという話が持ち上がりました。いちエンジニアとしては市場の評価軸が徐々に切り替わる流れを掴んで、最終的に大きなシェアを取れるような製品開発ができるかもしれない、と夢を感じました。記憶装置の性能が容量から徐々に消費電力・耐久性やアクセス速度でも評価されるようになったように、広告配信においても同じことが起こせるならこれは面白そうだと。

ベースの手法面では、文脈付きの多腕バンディットという技術でWebページの表示を最適化する事例が当時既にYahoo!やcookpadで取り組まれていて、この枠組みを取り入れることでユーザやページの特徴に応じた広告表示の最適化が実現できそうだと考えました。

多腕バンディットでは一般にアクションに対する報酬(例えば広告表示からクリックまで)データが得られるまでの時間差が小さいほど性能を上げやすいとされていますが、CA ProFit-Xの開発チームにはRTBを始めとしたリアルタイム処理の構築・運用経験が蓄積されていたのでこの点で有利に働くと考えました。

13561_ext_09_2_L.png?876d73c1f0071a34819aee79fab7a79b

安井:AI Lab側の発端としては、当時、メディア側をデータで考えるというケースはアドテクではまだ盛んでなかったため、僕はSSPで分析してみたいと考えていました。そんな中何が出来るだろうという事をCA ProFit-Xと議論した時に「CA Audience」のアイデアを聞き、これは面白いなと。

 僕は大学院でサーモンの養殖に関連する分析をしていて、明日収穫して得られる短期的な収益と、餌をあげ続けて太らせてから収穫する長期的な収益のバランスを考えて、いつ収穫するべきかを考える問題を解いた事があったのですが、これが「CA Audience」のアイデアとぴったりはまりました。(ちなみにサーモンに限らずこういったフレームワークの課題を抱えるビジネスは世の中に大量にあります。特に資源関係では。)

広告に関わる人々の“大きな課題”とは。「ユーザーが離脱する要因」の深い理解を目指す。

課題や展望はありますか。

松村:製品開発の点では、広告表示においてユーザ体験が評価されるような市場領域を見いだせるかが課題だと考えています。フラッシュメモリがまずノートPCではなく携帯電話や医療機器などの領域に受け入れられたように、ユーザ体験の評価軸が受け入れられるのも広告配信事業のメインの対象とは違った領域かも知れません。
一方でこのアプローチが広く受け入れられるためにも、ユーザ体験の向上と長期的な収益との関係を事実から明らかにしていく必要があると思います。

13561_ext_09_4_L.png?7545c2126a46eb93974cd91665445b87

なるほど。具体的には、どのような課題に取り組んでいるのでしょうか。

安井:「CA Audience」が取り組む大きな課題の一つは、広告にかかわる人達の短期的なインセンティブと長期的なインセンティブがマッチしていない事にあると考えています。ユーザーに影響を出さない程度に広告を減らせば必ず幾らかのインプレッションが損なわれることになり、つまり短期的には必ず収益は下がったように見えてしまうという課題があるわけです。

一方で、広告を減らすことでユーザーに影響が無くなった結果、本来は離脱するユーザーがメディアに再来訪するので、長期的には幾らかのインプレッションが増えるという事になります。「CA Audience」を導入するという事は、短期ではなく長期的な収益を見るという試みを一緒に行ってもらうという事になるかと思います。
一方でこのアプローチが広く受け入れられるためにも、ユーザ体験の向上と長期的な収益との関係を事実から明らかにしていく必要があると思います。

安井:この目線で考えると、何より足りていない事はユーザーが離脱する要因のより深い理解です。平均的には広告の数が離脱の要因に成り得ることは幾つかの事例で確認できていますが、本質的には出る広告の中身や観閲している記事の内容やユーザーのセッション時間などで異なってくるはずです。

ここが解ってくれば、より短期的な収益を犠牲にせずに長期的な収益を底上げさせることが出来る様になってきます。よって、細分化した状況での影響はまだまだ研究の余地がある課題だと考えています。

ありがとうございました。これまでメディアが広告を表示するにあたって、相反すると当然に考えられていた「ユーザーのメディア体験を阻害しない」ことと「メディアがマネタイズをする」ことがテクノロジーで結びつけられて両者を最大化するバランスを取ることが可能になってきているのですね。安井さん、松村さん、ありがとうございました。

13561_ext_09_6_L.jpg?4be61f1037dd73d6909fda0c4b5fb0e9

参考文献
Asche, Frank, and Trond Bjorndal. The economics of salmon aquaculture. Vol. 10. John Wiley & Sons, 2011.