#01 ユーザーに徹底的に向き合い、クリエイティブでストーリーを描く

鬼石 広海( おにいし ひろみ )
株式会社博報堂アイ・スタジオにてデザイナー/フラッシャーとしてweb制作に携わった後、2012年にサイバーエージェントへ中途入社。UIデザイナーとして新規サービスを複数立ち上げた後、2016年に「AbemaTV」の立ち上げに従事。現在は「AbemaTV」アートディレクション室のクリエイティブディレクターとして番組全体のブランディング・クオリティチェックを担う。

「ユーザーと対峙したい」「AbemaTV」立ち上げと、その先の飛躍のために発足したアートディレクション室

なぜ制作会社からサイバーエージェントへ転職したのでしょうか?

制作会社は対峙する相手がクライアントなので、制作物を納品することで仕事が完結していました。その先にもちろんユーザーはいますが、なかなかその反応が分かりづらいという点はあります。熱をもって制作をしているうちに、「もっとユーザーと対峙したい」「自分の作った制作物に対して、ユーザーからのダイレクトな反応を得たい」という想いが強くなりました。
ちょうどそのころ、スマートフォン市場が伸び始めていた頃で「スマホ向けサービスを100個作る」という目標を掲げて次々とユーザーに向けて事業を展開していたサイバーエージェントに興味をもち、入社を決意しました。

入社後のキャリアとアートディレクション室の立ち上げについて教えてください。

UIデザイナーやクリエイティブディレクターとして、複数新規サービスの立ち上げに関わり、自分の中である程度ユーザー向けサービスの知見と自信が蓄積された頃に、新規事業として「AbemaTV」が立ち上がるタイミングがありました。
コンペ形式でアプリデザインを募集していたので、「僕に提案させてください」と上司に直接かけよりました。そこからはもう、無我夢中で休み中に一気にモックを作りあげましたね。休み明けに社長にあてて、その時のデザイン案がそのまま採用となり、開発メンバーとしてジョインすることになったんです。当初の「AbemaTV」は全員で10人程でした。

1年後の2016年に「AbemaTV」は無事リリースされ、プロダクトとしてはグッドデザイン賞やGooglePlayアプリ大賞を頂くなど、世の中的にも一定の評価をいただけました。プロダクト自体は更にブラッシュアップされていくなか、今度は中身の番組コンテンツや番組宣伝のクオリティを上げていかなければいけない段階となりました。

サービスを次の段階に推し進めるために立ち上げたのが「VXスタジオ」という映像・グラフィック制作チームで、現在のアートディレクション室(※以降AD室)です。

AD室は「AbemaTV」課題解決の“プロ集団”

AD室ではどのような仕事をしているのですか?

メンバーのマネジメント等を行いつつ、番組のアートディレションやプロモーションなど、僕自身も手を動かして制作をしています。
今までには「亀田興毅を倒したら1000万」「72時間ホンネテレビ」「安室奈美恵 引退特番」などの特別番組から、恋愛ドラマ「1ページの恋」「御曹司ボーイズ」などを担当し、最近では「オオカミちゃんには騙されない」などの恋愛リアリティーショー番組や新規番組などのクリエイティブディレクションを担当しています。
キービジュアル制作・撮影はもちろん、番組のプロモーション広告や特設サイト制作、番組のセットや会場演出まで、外部の会社と協力しながらあらゆるクリエイティブの制作をしています。

フライヤー

フライヤー

プロモーション広告

プロモーション広告

スタジオセット

スタジオセット

「AbemaTV」のAD室の特徴的なところはどんなところですか?

大きく2つあります。
1つ目は、「AbemaTV」の成功のために職種や手法に縛られず「挑戦する」ところです。
AD室はCM業界やゲーム、広告など、様々な業界で活躍してきた人が集まっている「プロ集団」ですが、それぞれの得意領域はもちろん、未経験のことに対しても積極的に挑戦する文化があります。デザイナーが音楽家と協力して番組のテーマ曲を制作したり、CMのナレーションをやったりもします(笑)。
そもそも「AbemaTV」自体が全く新しいサービスモデルかつ、常に進化しているプロダクトなので、規定概念にとらわれていては本質的な解決ができません。常に柔軟に、挑戦や変化を恐れないマインドを大事にしています。

もう一つは必ず「成果を追う」ということです。
全ての制作物に対して、事前に定量目標を設定し、リリース後に振り返りをしています。主にオンライン施策でクリックやシェア数、記事媒体掲載数など。また定量目標とは別で、話題性や新規性があるチャレンジができているか、視認性は問題ないかといった定性面でも全ての施策で評価しています。

クリエイティブは属人的な評価になりがちですが、客観的な数字結果の評価により重きを置くことで、クリエイターのエゴを排除し、ユーザーに徹底的に向き合うことを大事にしています。

過去と未来のストーリを繋ぐクリエイティブ

印象に残った仕事はどのような仕事ですか?

大きな話題になった「72時間ホンネテレビ」ですね。
僕はこの番組のクリエイティブディレクションを担当し、キービジュアル・プロモーションから番組内の映像制作、オリジナル楽曲制作など多くのクリエイティブを担当しました。

稲垣さん、草彅さん、香取さんという圧倒的な知名度と時事的な話題性は凄まじく、制作したクリエイティブを公開する度に、恐ろしい程のスピードで日本中に拡散され、世の中にうねりを生んでいる状況に、スマホを持つ手が震えるほどでした。

クリエイティブ企画を考えている時は、彼らの楽曲を何度も聞きながら、どんな思いでこの番組に出演するのか、ファンはどんな思いでそれを見るのか、両者の気持ちやを必死に想像し、両者の思いを繋げられるような素晴らしい番組にしたいと考えていました。
番組の最後に、僕が演出したエンドロールを見た稲垣さんが涙されていた時は、会場のお客さんやスタッフも皆感動に包まれ、号泣していました。その時が僕の職業人生の中で最も達成感を感じた瞬間だと思います。

この仕事はウエディングプランニングに似ていると思っていて、「出演者」(新郎新婦)と「視聴者」(参列者)がいて、「素晴らしい番組」(結婚式)にするために「AbemaTV」(プランナー)が演出するという関係です。

僕たちクリエイターは、出演者とファンが作ってきた文脈やストーリーを深く理解し、大切に扱う。そして出演者の新しいストーリーの第一歩を描き、スマホを通じて日本中の視聴者がその証人となるための舞台を作っています。

もちろんビジネスとして成功させるということが大前提ではありますが、自分のクリエイティブが、誰かのために良い影響を及ぼすという経験は他に代えがたい、とても印象に残った仕事になりました。

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